北海道ツーリング2014















 8月前半の某日、必死にパッキング作業をしてそろそろ出発かと暖機していると、福島市某所の自宅前に思い切り雨が降ってきた。
「あなた、びしょ濡れじゃない。ちゃんと合羽を着て行きなさい。気をつけていってきてね」
『ああ、わかった。んじゃあなあ』

 15時20分・・・

 家人へ言葉少なに別れを済ませ、スロットルをあげる。結婚して20年も過ぎると、というより、毎夏、自由気ままに旅する旦那には呆れを通り越しているのかもしれない。

 東北道も強い雨だった。延々と雨に打たれながら、仙台港FTを目指す。

 10年前購入した、モンベル(ゴアテックス)の雨具も既にその機能を失い、筆者の体はずぶ濡れとなっていた。出足から心が折れる。
   今宵のフェリーは”きそ”であるか。確か、まあまあ新しいというか内装がよくなった船だったと思う。

 なんて考えていると天気が怪しくなってくる。そして蒸し暑い。
 仙台港フェリーターミナル到着。どうやら台風の影響での欠航は免れたみたい。

 いつものように船内で使用する必要不可欠なモノのみをサブザックに詰め込む。そしてパッキングをし直す。面倒なようだが、この方がなにかとフットワークが軽くなるのだ。

 なんてやっていると、どっかで見たお顔が?埼玉の小坊主さんがおられた。

「どうも、お久しぶり!」
 などと再会の挨拶を交わしていると、もうおひとり懐かしい顔が・・・

 2010年便利帳さん主宰の上小川オフキャンでお会いした野外料理の達人・仙台のユサさんではないですか。これは大変ご無沙汰しておりました。あの折は、美味しい中華料理をご馳走になりありがとうございました。彼は小坊主さんの見送りにいらしたそうだ。
「キャー、無理、絶対に無理」
 大型マシンに乗ったオバサンが、最後の壁に向かって停車する場面で絶叫していた。

 マシンが大き過ぎて扱いきれないようだ。女性に限らずいつも思うのだが、自分が操作できないようなオートバイに乗るのは間違いだと思う。
 
 自社(東電)でまったく制御できなくなった原発だって、最悪の結果になったのは周知のとおり。

 筆者がゼファーイレブンを乗りこなせなくなったら、残念だが小さいのに乗り換えるしかないと考えている。

 後刻、風呂で小坊主さんと再会し、いろいろ語りあう。

 離島、つまり天売島や焼尻島を愛車で目指すそうだ。あの2つの島に関して、本当に小さい島なので高いフェリー代をかけて渡るよりも、ぼくは羽幌のとほ宿にマシンを預けて、レンタルバイクでまわった方が効率的だと思っている。どちらの島の民宿も海の幸が美味しいところばかりだし。

 風呂からあがって、ビールを飲みながら、そんな話をすると彼もそうしてみるとのこと。

 それにしても、この大荒れの北海道、無事、小坊主さんは離島へ渡ったのであろうか?

 まあ、筆者も自分の心配もしないと・・・

 それなりにヨッパになり、遅い時間に夕食のカレーライスを食べながら、ふと思うなり。

 インターネット予約では、苦手の2等しかとれなかったのだけれども、キャンセル待ちで、どうにかB寝台をゲットできた。

 昔、落ちたことのある2階だったが、狭い2等の客室よりは、ずいぶんマシである。横になると、あっというまに熟睡してしまった。

 今宵、よく揺れる”きそ”であった。少し、はキソうになった。

 翌朝・・・

 意外にぐっすりと寝た。どうやら、フェリーは台風を引き離してくれて、お風呂の外の光景は晴れ間が見える。

 千円の朝食バイキングをしっかりと食べて・・・

 というより、筆者にとっては食べ過ぎて腹が苦しくなった。B寝台で、ぐったりしていると下船案内の放送が流れてきた。

”まもなく苫小牧港に接岸します。お車及びオートバイのお客様は各デッキの方へご移動願います”
   この放送、今まで何十回聴いたことだろう。

 荷物をサッとまとめ通路へ出るともの凄い人混みだった。

 流石にお盆前の太平洋フェリーである。
 階段で、どうにかEデッキにでる。すると待機しているライダー諸氏でいっぱいだ。

 しかし、相変わらず平均年齢が高い。近年、ライダーの平均年齢は50歳といわれているが、少なくてもこの場では60歳代を軽く越えていると思った。
 
   二輪の排気で、ムンムンするなか、スロットルをあげてスロープを駆け抜けた。

 一年ぶりの北の大地上陸だ。お天気はまあまあで湿度が高い。いつものように荷物を根本的にパッキングし直して、万全の固定を済ませる。

 さて、台風迫る苫小牧、これからどうしよう?
 どうせお盆までは天気が悪いのだから、去年とは逆に先にニセコのアンビに泊めてもらうか。しかし、まだなんにも打診していない。当日予約で大丈夫だろうか。

『もしもし、福島のゴロウですが、今日の今日で申しわけありませんが、泊めてもらってよろしいですか』
「まあ、ゴロウさん、お久しぶり。構わないんですけど、今夜は宿泊者全員で札幌のラフランス亭にディナーにでかけてしまうので私しかいないのですよ。それでもよろしければ」
 と、ユミさんが電話に出た。
『もちろん、よろしくお願いします』

 これからの針路はニセコと決まった。これでなんとか台風は凌げる。
 
 本日のやっておきたいこと・・・

 これからやや南下して虎杖浜の”カニ太郎”という店でカニ飯を食べること。

 よし、善は急げだ。この夏も北のサムライと愛機ゼファーの姿が、北の大地を颯爽と走る。

 今のところは・・・だけど。これから、どれだけの不運というかアクシデントの連続が大挙して襲いかかって来るかなんて知るよしもございませんでした。

 とりあえず、今のところは順調にR36を駆けて続け、虎杖浜に到着した。

 そして、周囲を物色しているとあった、あった。この廃墟のような建物。本物の廃墟だと長年固く信じていたが、実はカニメシが美味しいことで有名な”カニ太郎”というレストランなのだ。

 駐車場に入るとガラガラで誰もいない。もう昼時なのにおかしいし、凄まじい荒れっぷりだ。やはり、いつ見てもどう見ても廃墟だ。

「あの、もうやってないのですけど・・・」
 暫くするとオバサンがやってきて、そう告げられる。

 そうですかと、駐車場を退去したが、カニ太郎がもう永遠にやっないのか、それとも本日はもうやってないのか、未だに物議を醸し出している。

 少なくても建物自体だけは崩壊しているような気がしないでもない。




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