北海道ツーリング2005後編











 真夏の強烈な日差しが照りつけるなか、俺は走り続けた。やがて羅臼を抜け、標津へ突入していた。

 とにかく俺はなにをしたらいいんだ?あっ、そうそう、JA標津のオリジナルフラッグ。まず、これを手に入れよう。ちなみに俺はホクレンのフラッグを集める興味は数年前、既に尽きている。

 ただ、愛人(嘘)が欲しがっていたんだっけ。

 TMを確認すると標津町のホクレンは、海岸沿いではなく山間部に一軒のみ存在していた。結構、遠回りしながら、ひた走りようやく苦労の末、手に入れた。これで、なおさんの無謀な日帰りツーリングを阻止できるだろう。ホッと一息だ。

 そして広大な別海町の草原を延々と走り続けた。

 気がつくと弟子屈じゃん、屈斜路湖じゃん・・・

 そして和琴半島じゃねえか。

 帰巣本能というヤツか。知らず知らずのうちに和琴湖畔キャンプ場へ帰っていた。

「お〜自衛隊さん、帰って来たのかい」
 管理人のおっさんが、本当に嬉しそうな顔をしていた(何度も言うが俺は自衛官ではない)
『ずいぶん、混んできたね』
 俺も笑いながら言葉を返した。
「まあ、でも好きなところへテントを張ってね」
 と言い残して売店へ歩き出した。

 俺は適当なスペースにテントを張り、ランドリーへ洗濯しに向かった。そしてビールを飲んでいると日が暮れてくる。やはり和琴は混雑していても俺には一番落ち着くキャンプ場だ。エコ野郎も居ないし。

 もう、周囲は真っ暗だ。ランタンへ火を灯した。

 テント前で、粗末な夕食の準備をしていると・・・

「あ、あのう、肉を炭で焼いているんですが、よろしければ一緒にどうですか」
 若い?いや俺よりは確実に若い男だ。
『分かりました。夕食の準備の最中なんで、もう少ししたらお邪魔します』

 彼は、周囲のソロライダーを誘い、ささやかな焼肉パーティをしていた。

 なんか俺、スゲエ感激した。北海道ツーリングも年々こういう交流が減っているなか、よくぞ誘ってくれた。思えば、昔、ここ和琴で北海道ツーリングの盟友、大阪のミヤタともこんな感じで知り合ったんだっけ。

 俺自身もいつの間にか周囲を寄せつけない怖いイメージというか、負のオーラを発散させていたのかも知れない。久々に大事なことを取り戻した。

『お邪魔します』
 俺もキャンプ椅子と僅かばかりの差し入れを持参して輪に加わる。  
 皆で北海道ツーリングへの熱き思いを語り合う。

 一番最初に誘ってくれたCB乗りのライダーさんは埼玉から来られたそうで、もう北海道ツーリングは15回目だとか。

 その他、今年初めてとか、3回目とか皆さん、それぞれである。年齢も俺より上の方、下の方もいる。

 そんなことより、本当に楽しい和琴の夜だ。
「どちらを周っていたんですか?」
 誰かから訊かれた。
『ああ、つい先日まで知床岬へ行ってたんだ』
「あれ?岬まで道はないですよね」
『そこを2泊3日歩いて踏破してきた』
 俺は煙草の煙を吐きながら答える。
「ゲ!まじっスか?」
 男は驚愕していたが、少年のように目が輝きだした。
「今度、俺も連れてってください」
『いや勘弁してくれ。俺もあんなに辛いとは思わなかった。生涯に一度で充分だ』
 ちょっとがっかりした様子だが、あの踏破の軌跡を詳しく話すと
「わかりました。一朝一夕で行けるところじゃないんですね。来年まで、いろいろ調べてみます」
 爛々と光る瞳で大きく頷いた。

 その後、ホ○タップ伝説やそれぞれの珍道中の話題などで、楽しく盛り上がる。

 やっぱりキャンプツーリングって最高だ。

 ほどほどの時間にテントへ戻り、しみじみと思うなり。

 俺は根っからの旅系ライダー、旅人なんだと再認識しながら、爆睡モードへ。明日のことなど明日考えればいい。

 素晴らしい出会いに乾杯!




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