第5章 風雨弱気
あしたの城
風雨弱気
誰も居ないキャンプ場 |
雨の中、ひたすら走った。松寿司がある常呂町からコムケキャンプ場までは意外に距離がある。時間も遅くなりキャンプ場へ入った。テントが張られているのが連泊の強みだ。 ランタンに灯を入れ、バーナーでお湯を沸かす。そして「珈琲酎」を取り出した。先日、セイコマで発見した逸品である。珈琲の香りが芳醇に漂う本当に美味しい焼酎だと思う。沸かした湯で割って飲んだ。冷えた体が温まる。つまみは松寿司でいただいた塩辛と唐揚げだ。 |
風雨が強まってきた。ふとあたりを見渡すと誰も居ない。キャンプ場でテント張ってるの僕だけか。それもそうかも。こんな雨の中、わざわざキャンプするのもどうかしている・・・僕は決して孤独が嫌いなわけではないが、シチュエーション的に弱気になっていた。 妻に電話をする。 「北海道の天気予報、どうなっている?」 『あのね、オホーツク海沿岸部に大雨洪水警報だって.。おまけに明日は全道的に激しい雨ですって』 「・・・・・・」 『あなた、どこにいるの?』 「もろ、オホーツクの沿岸部です」 聞かなきゃよかった・・・ |
セイコマ限定「珈琲酎」 |
ラジオもない。ひとりくら〜く酒を煽る。虚しい。明日、どうしよう。 明後日には、キタノをして「混浴ライダー@大阪」とまで言わしめた男、ミヤタさんと兜沼キャンプ場にて飲み会をする予定になっている。さらに永久ライダーHPの読者である札幌のAOさんという方からも参戦表明を頂戴した。とにかく宗谷方面へ引き返しておかんと。でも大雨。やだやだ、もう〜 そんな時、北海道旅仲間、高市さん@愛媛から陣中見舞いの電話が入った。 「今夜は、キャンプの宴ですか?」 『いや、週末です』 「アハハ、勘違いしてました、どうです?北海道は?」 『雨ばっかしで参りましたよ』 しばらく高市さん相手に愚痴モード。そして僕の掲示板に近況を書いてくれるようお願いする。すいませんねー。毎年。 ほどほどの時間にシュラフに入り寝た・・・ つもりが・・・ 豪雨で激しい雨漏りがしてきた。テント半分が屋根に入りきれず、そこから半端じゃない量の雨水が流れ込んできている。もうテントの中がグショグショだ。ひ、ひえ〜。 最早これまで。屋根の真下のテーブルに予備のコンパクトシュラフを敷き、蚊取り線香を焚いてやむを得ずそこで寝た。もう武士らしくなにも言うまい。 |
8月8日 大雨
雨の中の出発 |
朝、目覚めるとやはり激しい雨。今日は本当にキャンプは無理だ。サロベツ原野の中のとほ宿「あしたの城」へ予約を入れた。今回は野営にこだわりたかったのだが負けた。大自然の猛威には。 雨の中、テントをたたみカッパに着替えて出発する。興部から名寄に入りひたすらR40を北上した。 |
衝撃の温泉
水しぶきをあげながら、R40をひた走る。途中、道の駅で何度も休憩を取りながら走行した。もう何キロ走ったろう? 音威子府を過ぎると雨があがってきたぞ。こりゃ無理すればキャンプできたかも。でも恐ろしく寒い。温泉に入りたいなぁ。丁度、豊富温泉の標識があった。よし入ろう。 ところが・・・施設に入ると建物全体が石油臭い。湯船の底に真っ黒な原油が沈殿していた。それをかき集めて、体中にドロパック状態に塗りたくっている人がいる。豊富町は昔、石油が採掘されていた。なんでも北大の先生のお墨付きもあるほど効能があるらしい。まさに衝撃の温泉だ。興味のある方はお試しあれ!ちなみに気温13度。受付では石油ストーブが炊かれていた。 |
豊富温泉 |
あしたの城
サロベツ原生花園付近 |
体中、石油の匂いプンプンで豊富温泉を出発すると低温ながらも日が差してきた。そろそろ宿に入らないと。 途中、サロベツ原生花園付近の美しいのなんの。思わず画像を撮ってから、今夜の宿「あしたの城」に向かった。 ここからほんとにすぐ、道道444を日本海側にくだると標識がある。右折してダートを走ると、まるでペンション以上?綺麗な宿が眼前に現れる。とほ宿とは思えない。1泊2食付きで4900円。絶対にお薦めな宿である。内地で1人1万2千円も要求するペンション、見習い給え。料金・施設・料理共「あしたの城」の圧勝だ。 |
あしたの城の夕ご飯「牛乳鍋」には驚いたが美味しい。牛乳ベースに鶏肉・野菜・きのこ等。最後に残り汁でオジヤにした。本当に満足。 食後はカンパ制で飲み会。ヘルパーの面白いおねえさんに例の「珈琲酎」をガンガン飲ませたらヘロヘロにしてしまった。学生、フリーターのふたり組みのお嬢さん達は、僕へ北の大地についての質問の連発。旅人の資質大いにあり。何でも答えてあげた。 遅くに宿へ入った札幌市内の大学生男の子3人組は明日、礼文島へ渡るとか。日帰りで礼文?しかもクルマを持ち込んで。もったいない。3人で日帰りなら、向こうでレンタカーなりレンタバイクの方が絶対に安上がりだ。 彼らに礼文島について質問を受けた。 「礼文の見所って何ですか?」 『俺は、1日と考えず、連泊して高山植物を見ながら西海岸8時間歩くとかが醍醐味だと思うが』 と答えた。 3人のうち、一番怪しい挙動と顔のヤツが 「とりあえずカタチだけでも礼文に行ったことにして・・・」 と言いやがっていただきました。 『カタチだけでもだと・・・』 旅は、個人の自由なスタイルだ。人の勝手。でも真面目におまえらの質問に答えている人間にそんなことを言ってもらいたくないし、礼文を冒涜しているぞ、無礼者。 なんだか不快と疲れが一気に出たので、部屋に戻って寝てしまった。 |