第2章 嗚呼!利尻富士
利尻富士
世界最高の道
オロロンライン |
8月5日 天候 晴れ 6時に頭痛とともに目覚めた。前夜の狂乱の宴会で、猛者ぞろいの鏡沼軍団も壊滅状態のようだ。僕は何とか起きだし無料のシャワーを浴びてダラダラと撤収作業を開始した。 |
7時ごろパッキングを済ませマシンを暖気していると、軍団のリーダー格のおじさんがようやく起きてきた。 眠そうな目をこすりながら 「連泊していかないのかい?」と話しかけてきた。まだ完全に目覚めていない様子だ。 『すっかり世話になっちゃってありがとうございました。利尻富士を目指しているもんで』 「そうか、無事踏破したらまたここに戻って来い、永久ライダー」と彼は屈託のない笑顔を見せた。 なんて気のいい人たちだろう。僕はもう一度礼を言って静かに出発した。 |
稚内に向けオロロンラインを快走した。残念ながら海上に浮かぶ利尻富士は雲に覆われていたが、いつ来ても飽きない広大なパノラマだ。 僕は昔サハラ砂漠へ旅してかなり感動した記憶もあるが、サロベツ原野はサハラとまた違った趣があった。砂漠と同じで人を寄せ付けない雰囲気は似ている。でもサロベツは荒々しくても大地が脈々と生きているぞ。胸が高鳴り絶叫してしまった。 |
サロベツ原野 |
ところが北緯45度通過点あたりで信じられないものを発見。原野に風力発電をいくつも差し込んでいたのだ。サロベツは3度目だが以前には存在しなかったはずだ。なにもこれだけの自然をそっとしておいてやればいいものを。せっかくの光景が本当にだいなしだと思う。 |
上サロベツ |
さすがに上サロベツに入ると電柱もなく原野の中に道が伸びる。それよりこのとんでもねぇ景色。もうダメだ。頭の中が真っ白になり臨界点に達してしまう。まさに僕が勝手に名づけた「世界最高の道」だ。早朝なので車もほとんど走ってない。これだけの光景を独り占めにしているような贅沢な錯覚にとらわれてしまった。 |
嗚呼!利尻富士
稚内に到着し、防波ドームの露店でカニ汁を平らげて利尻島行きのフェリーに乗船した。この頃から天気が怪しくなってきた。大丈夫かな? 2時間くらいで鷲泊港が見えてきた。おー3年ぶりの利尻島、何にも変わってねえなあ。上陸してすぐに夕日ヶ丘展望台に向かい、このページ冒頭の利尻富士やぺシ岬等を撮影した。 |
ペシ岬 |
その後、島内をぶらぶらと走ってみた。あっ、セイコマだ。ついに利尻島にもできたんだ!ここで今夜のおかず「カルビ」をゲット。そして利尻北麓野営場にテントを設営した。 管理棟に行くと「アゴ勇」似の管理人さんがいた。奥さんらしい女性も健在だった。 「3年前にここで甘露泉水ご馳走になった者だが覚えてますか?」 『言われてみればなんとなく覚えているよ』・・・ほんとかね? 「明日、山に登るのでよろしく」 『そうか、じゃあ登山名簿に書いてね』 「分かりました」 そして携帯トイレをもらった。これが噂のやつか。利尻富士の環境問題は、かなり深刻らしい。 ここから近い利尻富士温泉へ行ってみた。ほう、これはなかなかいい湯だ。露天風呂も完備しているし、確か400円くらいだったかな。 テントに戻り、飯を炊きカルビを焼いてカルビ丼にしてみた。おっ、こいつはいける。晩御飯を平らげ、明日の登山に備え寝るだけだ。ここのキャンプ場の利用者は、まず間違いなく登山目的だから、夜は早めに寝ないといけないそうだ。ちびりちびり酒を飲んでいるうちに寝入ってしまう。 ところが・・・ 雨だ!天井をひっくり返すような雨になった。それはいいけど雨漏りが凄い。4年ものの安物だからなあ。我慢して寝ていると今度は床から浸水だ。なんで?やむを得ずビショビショなりながら外に出て、高い場所にテントを移動する。明日の登山無理そう・・・ オー・マイ・ガット! 8月6日 天候 豪雨 早朝に目覚めたが、天候が回復する兆しが少しもない。強引に行こうとも考えたが、年配の男性に止められた。「どんなベテランでも今日登ったら遭難する」って。天気は明日も悪いとか。僕は基本的にライダーで登山家ではない。何日もここで停滞しているわけにもいかない。残念だが潔くよく撤退しよう。無念なり・・・ |
利尻北麓野営場 |
利尻富士温泉 |
カルビ焼き |
あんまり悔しいんで漁業組合直営のお店で巨大ウニ(500円)を賞味してから帰りのフェリーに乗り込んだ。相変わらず凄い食べ応えだった。 フェリーは、悪天候の為か大揺れ、うー気持ち悪い。なんとか船酔いを堪えながら相模ナンバーのロードスター乗りのおじさんと話しこむ。氏は厚木在住の社長さんとか。とても温厚な年輩の紳士である。お孫さんまでいらっしゃり、北海道ツーリングは危ないから止めるようにと家族から反対されているがバイク旅は生涯止められないそうだ。俺は社長のイキザマに永久ライダーの神髄を見た。 |
そして、稚内入港。 利尻富士踏破は旅の第一目標にしていた。うちのサイトは、キタノの体を張ったレポートが醍醐味なのに。読者の皆様、本当に申し訳ありません。いつの日か「臥薪嘗胆」の覚悟で利尻に帰って参ります。 また旅の後半、「驚愕の事態が発生」まさに体張り過ぎなんて見せ場も・・・いやいやアクシデントも用意しておりますのでお楽しみに? さて、これからどうしようか! |