第1章 熱き鏡沼軍団



鏡沼キャンプ場の夕陽


出がけに


8月3日 曇


フェリーターミナルにて
 ず〜と、ほんとにず〜と・・・と言っても毎年だけど1年に1回の夏の北海道だけを楽しみにしている男、キタノが始動した。

 念入りに準備した莫大な量の荷物をパッキングした。息子が寂しがっているようで僕の側を離れようとしない。天候は曇り。ちょっと蒸すかな。

「パパは北海道という遠い所へ行っちゃうのよ」
 と妻が倅に説明していた。おいおいM78星雲へ行くわけじゃないんだから。毎年のことなので、この時期諦めモードなのかも知れない。
『んじゃ、ちょっくら行って来るわ』


 セルを回し、息子の頭を撫でた。門の前にゼファーイレブンをゆっくり走らせると後ろから
「あなた、待って」
『なんだおまえ、俺にかなり惚れてるな』
「違うよ、ブレーキランプ切れてるよ」
『マジ?あらまホントだわ』
「偉い?」
『おー偉い偉い』
 バイクには以前は乗っていたが、メカ的な知識などまったくもたない妻がよく気づいたもんだ。でも、これからの旅を予測する現象だとは、この時は知るよしもない。ワクワクしながらアクセルをあげた。体にあたる風がとても心地よい。

 名取市内のカワサキ専門店で、ランプを交換した。作業中、店長が
「こんなに荷物積んでどこに行くんですか」と聞いてきた。
『な〜に、18日ほど北海道を彷徨ってくるんですよ』
「ゲッ!18日ですか?羨ましいなあー」
 よく日焼けした呆れ顔でつぶやいていた。

『まあ、夏だけ休みのまとめ取りがしやすい仕事なもんで』
 面倒ながらそう答えた。永久ライダーは、人のことより行動する自分を選ぶね。
 
 修理を終えて仙台港フェリーターミナルへ向かう。途中R4から「六丁の目交差点」右折すべきところを通り過ぎてしまうなどアクシデントも多少あったが、無事、恒例の「coco壱」でのカレーを賞味しフェリーへ乗船した。 


混んでる!


 船内は、非常に混んでいる。往路はなんとか2等寝台を取れたが帰りはボートピープル・・・もとい2等大部屋になってしまった。2ヶ月前から申し込んでるのになんと激しいチケット争奪戦だろう。

 2等寝台と言っても苦手な二階なので、なかなか寝付けない。夜中にデッキへ風を浴びに行ってみた。かなり肌寒い。すぐにベッドへ戻り横になった。そしていつの間にか深い眠りについていた。

真夜中のデッキ


熱き鏡沼軍団


8月4日 早朝は雨

 7時くらいに起床した。さっそく展望デッキへ行くと大きな雷がなっていた。天気悪いのかなあ?北海道。

 クーポンについてくる朝食券でバイキングをガンガン食べた。もう年齢的に大食漢ではないが、嬉しいねバイキング形式って。

 11時くらいに苫小牧に上陸した。霧で真っ白、そして寒い。「やっぱり今年も冷夏なんだな北海道は」と思って岩見沢を目指すと晴れ間が広がってきた。気温もどんどん上がって暑くなってきたぞ。さすがに快速旅團の防寒ジャケットからコミネの夏用ジャケットに着替えた。夏物が丁度よいと思ってしまうのが我ながら可笑しい。高速を使って一気に留萌へ。小平のツインビーチでは漁協直販の大型ホタテを150円で食べた。新鮮でおいしかったけど刺身にできない部分もナマでガブりついたので、ちょっと失敗。

 しばらく走ると2年ぶりのオロロンラインだ!景色が良くなってきたぞ!



鏡沼の宴
 快晴の上に素晴らしい景色を堪能しているうちに鏡沼海浜公園キャンプ場へ到着。なるほど沼に面している。夕陽も綺麗だ。そしてシャワー付きで無料。さらに無料の宿泊施設まで併設している。

 素早くテントを立ててハンゴウを炊いた。そして一杯やり始めると、さっそく宴会の誘い。ありがたく参加させていただいた。こちらのグループは毎年道内外から「鏡沼」へ集結し、大宴会をしているそうだ。

 しばらくすると若い地元の漁師が昆布を大量に差し入れてくれた。これ普通に買ったら高いでしょ。なんだか初日から凄いキャンプ場だな。
 


 グループの中のおひとりが苺酒を勧めてくれた。
「キツイでしょ」
 彼は興味津々僕の顔をのぞきながらそう言った。
『かなり強い酒ですね』と僕が言うと
「実は1年前に苺酒を造って、このキャンプ場の土の中に埋めておいたんですわー」
『マジっすか?』

 こ、濃過ぎる!皆さん、濃過ぎますよ。酒じゃなくて、この宴が。苺酒をガンガン相伴させていただく。そして、熱き集団の狂乱の宴会が延々と続く。いつ、どうやって寝たのかまったく記憶などない。翌朝、シュラフの中で頭痛で目覚めた。スゲー、ハマっちゃうじゃないですか、鏡沼軍団!