第15章 約束の地へ


約束の地へ



野付半島の碑


8月16日 日中は晴れ後小雨


 昨夜早寝したせいか早朝に起床。キャンプ場は寝静まっている。

 ハンゴウで米を炊き、サンマの蒲焼の缶詰をおかずに相変わらず粗末な朝食をとった。野菜不足を補うのに野菜ジュースを飲むのもロングツーリングの鉄則だ。テントを撤収しパッキングもテキパキと完了。よし今日も元気だ。煙草がうまい。

 誰も見てないを確認し準備体操がてら、「征遠鎮」、「ローハイ」、「観空」などの空手道の型を次々に演武していく。ひとつひとつの動作には必ず意味があり強弱をつけて大小に舞う。観空の型で手のひらから天を仰ぐと青空がのぞいていた。実に気持ちがよい。全身に気力がみなぎってくる。

「お見事」
 あれ?誰も見てなかったはずなのに隣のテントのおとうさんが、しっかりと見物していた。恥ずかしい〜
『押忍、ありがとうございます』
 と一礼しながら、そそくさと逃げるように出発するキタノであった。

 国後島の美しい山肌を見ながらR335を南下した。しばらく走ると北海の天の橋立、「野付半島」が見えて来たぞ。


 かつて野付半島の先端に「きらく」という大きな歓楽街が存在したという。幕末の頃に北方警備で派遣された会津藩士たちの宿舎、漁師の家、アイヌの人々との交易のための商家などが建ち並び、実に賑やかだったようだ。就中、「遊郭」まで存在したと言うから驚きである。しかし、海没してしまい廃墟となった。

 そして、その存在の事実は消滅してしまった・・・

 「きらく」の存在が詳しく知られるようになったのは、なんと約110年後に発見された古文書からだ。しかし、それまでよく人々へ語り継がれることなく封印されたと思う。

 この荒涼とした地で、人々の喧騒や繁栄が確実に存在した。集落の人たちが「きらく」に飲み会をやっていたことから、その名がついたともいわれる。

 なんと素敵な歴史ミステリーなんだろう。

 



延々と続く木道
 野付半島の全長28キロにも及ぶ長大な砂嘴に入った。まるで旧約聖書の「約束の地」へ向かっているような錯覚に捉われる。

 細長い砂の半島の道を延々走った。海が割れて道になったというモーゼの十戒の光景みたい。

 1999年夏に「ナラワラ」は見物した。今回の目的は海水の浸透と潮風の影響で立ち枯れたトド松林の「トドワラ」を見ようと思う。


 トドワラへ行くにはレストハウス付近から片道40分ほどの木道を歩くしかない。しばらく歩くと、立ち枯れ、風化した木々がいたる場所に点在する荒涼とした風景を目のあたりにできる。

 トドワラの南、白亜の無人灯台が立つ竜神崎の西側には新トドワラと呼ばれる場所があった。ここはトドワラよりも立ち枯れの樹木を数多く見ることが出来る。

 朽ちてもその気概は永遠に輝く。永久ライダーの旅もそうありたいと思い僕は「約束の地」を去った。

約束の地


絶品!花咲ガニ



野付温泉浜の湯
 オホーツク海に沿いながらR244を南下すると野付温泉浜の湯の看板あり。ひと風呂浴びよう。

 中に入ると設備が綺麗で低料金の温泉だった。この付近の温泉の元湯ともなっているらしく効能が非常に高いそうだ。源泉は2つあり、それぞれ泉質が違うらしい。露天風呂まで付いていた。

 じっくりと温泉を堪能する。いい湯だなあ〜


 風連湖付近で、R244とR243が交差する地点がある。弟子屈方面に少し右折するとパーキングがあった。

 芝生が広がっていた。天気もよいので芝に暫し寝転ぶ。トイレに行こうと歩くと何かあるぞ。そして発見したのは、廃線となった線路と駅だ。

 誰もいない。でも誰もがいつか見た光景だと思う。そこにはかつて確実に人が存在した。いや今、そのまま始動しても少しも不思議じゃない。時が停まっていた。まるでタイムスリップしたかのような不思議な空間だ。街から突然人が消えたような・・・

旧奥行臼駅


 
かさい商店にて
 根室入りした。駅前のニューモンブランで、タケノコ入りバターライスの上にカツがのり、デミグラスソースがかかる「エスカロップ」を賞味するつもりだったが、あいにく定休日。

 じゃあ、花咲ガニでも食べようかと思ってふらりと入ったのが、駅一番手前の「かさい商店」だ。


 大きくて立派なカニが千五百円。マジっすか?さらに画像のカニを千円にまけてくれた。カニミソやジューシーな身がいっぱいだ。今まで冷凍ものの花咲ガニしか食べたことがないので、浜ゆでのカニに本当に感動した。美味過ぎる。食べ方も丁寧に教わった。一緒にカニを食べた学生もかなり衝撃を受けていた。これ、内地ならいくらになるのだろう?

 「かさい商店HP」へリンクを貼りました。興味のある方はご覧ください。(許可をもらっている)

 さて、今日は霧多布へでも幕営しようかなと思いながら、スロットルをあげた。