第14章 羅臼にて



羅臼町からの羅臼岳


日本最後の秘境


 このサイトでは過去に何度も書いたが、もう一度知床について簡単にふれてみたい。

 北海道北東部、オホーツク海に突き出た長さ63キロの半島が知床半島だ。半島には一周する道はおろか突端まで行く道が存在しない。

 近年、急速に手付かずの原始の自然が破壊されつつある。しかし、人跡未踏の「知床岬」へは相泊から2泊3日かけて歩くか、海上から自然観察船または観光船で拝むしかないという脅威の秘境だ。



羅臼にて


 ウトロから原始境を貫く「知床横断道路」へ突入。駐車料金を取り、モロ観光化された知床五湖への興味は既に尽きている。樹海の中を縫うように走り知床峠パーキングへ入った。

 目の前に迫力のある山容の羅臼岳がそびえ立つ。こんなに凄い山を本当に踏破(昨年)したのか。



間欠泉
 そんなことを考えているとどこかで見た若者だぞ。Mr.GNUで一緒だった群馬のライダーではないか。しばらく歓談する。彼は悪天候のためすべての野営を中止し、とほ宿やYHを利用していたそうだ。間もなく帰路に着くらしい。また岩間温泉へ向かう途中バイクごと川に転落するアクシデントもあったと語った。やるなあ・・・もとい、お互い注意しようぜ。別れを告げ羅臼側へ降った。

 羅臼岳登山口にて間欠泉発見。昔は2・3分おきに温泉を吹き上げていたが、今では火山活動が弱まり2時間くらいの間隔だとか。


 熊の湯手前に「熊越の滝」という滝があると聞いたが見当たらない。やむなくビジターセンターで聞いたら職員の方が地図を用意してくれて丁寧に教えてくれた。なるほど羅臼側からじゃないと絶対に分からない。ここも熊多発地帯なのでくれぐれも注意が必要だ。熊避け鈴をつけて山道に入る。途中、道が崩落していたが何とか滝を発見。画像では木で見え難いが素晴らしい滝だ。ここも人に知られていないお薦めの穴場である。 
熊越の滝


 昔、猟師が母子の熊を射止めようとしたら、なんと母熊が小熊だけでも助けようと我が子を必死に滝へ押し上げていたそうな。その光景に感動した猟師は、鉄砲を撃つのを止めた。以来、羅臼の熊は人を襲わなくなったとか。これが「熊越の滝」と呼ばれるようになった所以である。泣ける話だ。



町立キャンプ場にて
 羅臼の街中へ入り、「知床倶楽部」という喫茶店にて小休止。ここはネットに入れるので久々に「旅人掲示板」を覗いた。管理人が旅の空にもかかわらず、たくさんの投稿ありがとうございました。そして近況などを書き込んだ。

 マスターやウエートレスのおねえさんのお薦めで「羅臼町立林間広場キャンプ場」にて幕営することに決定した。


 ここで書くのも腹立たしい。したがって詳しくはバックナンバーをご覧いただければお分かりの通り、どうしても「熊の湯」付近にだけはテントを張りたくない。

 本当に不愉快な出来事だった。また同じように遭遇したら、こういう性分ゆえ間違いなく大喧嘩になる。もっとも「帰れ」と言われてまで「来たい」というお馬鹿もおるまい。そんなに排他的なら旅人へ開放せんでもよかろうに?「熊の湯」、言われた通り、2度と行くつもりはない。

 ここの露天風呂のファンの方へは申し訳ないがキタノの率直な感想です。あいつらに迎合、いや気にならない人ならいいお風呂ですよ。僕はご免ですが。

 あと女性の方は、覗き穴の存在にもご注意を!穴を開けたヤツ、恥を知りたまえ!

 町立のキャンプ場では、テーブルの側のいい場所に幕営できた。無料だし、見晴らしもよい。


 まだ時間的に早い。よし、入ったことのない羅臼町の北東、約20キロにある相泊温泉に行ってみませう。

 屋根と囲いがされただけの相泊温泉は海に向かって開放されていた。天気が良ければ国後島が望めるらしい。

 源泉は食塩泉で湯温が56度。かなり熱い。入浴できるのは夏期のみで、後は雪に覆われてしまうとか。

相泊温泉



モツをあぶるの図
 キャンプ場へ戻り、セイコマで買った「モツ」を焼いておかずにした。周囲はほとんどファミキャンで笑い声が耐えない。そんな中でも結構孤独が好きな僕は阿修羅の如く、椎名誠の真実とも架空とも言い難い小説を読み漁る。

 本当は綺麗な知床の星空を観ながら、ひとり静かに珈琲酎を傾けたかった。今年の北海道では、まともな星空を一度も拝んでないなあ・・・なんて考えているうちに心地よく酩酊していくのであった。ラジオからは、盛んにプロ野球の実況中継が流れている。そして今宵の僕の記憶もそろそろこの辺で尽きていった。