第11章 嵐の屈斜路湖


3匹が斬る

 8月11日(曇) 安らかに寝坊。コマンダーさんから「朝が早いキタノさんにしてはめずらしい」と声をかけられ、慌てて洗面しに行った。今日は和琴キャンプ場に結集するため、チャリダーのコマンダーさんは先に出発して行った。他の会員の皆さんもぼちぼち出かけるらしい。高市さんが出がけに根室名物「エスカロップ」情報を教えてくれた。

 根室名物の「エスカロップ」。竹の子入りのバターライスの上にトンカツとデミグラスソースをのせた洋食で、ロシア人からレシピが伝わったという怪しい噂も存在。大将の話だと根室駅前のホテルが元祖とか。

 大将やおばちゃんに挨拶しにいくと娘さんがR44を釧路方面に向かい赤橋(温根沼大橋)を渡ったところにあるピンクの建物、「ねむの木」のエスカロップがおいしいと教えてくれた。そこにしよう。皆さんにお世話になった礼を言い出発!

 「ねむの木」に到着。まだお店は開いてないが、中から仕込みの匂いがするので定休日ではないようだ。外で待っていると開店時間前にもかかわらずマスターから「どうぞ」と言われ中に入れていただく。綺麗なレストランである。もちろん「エスカロップ」をオーダー。

 う〜ん。何とも言えない洋食の香り。カツがシャキシャキしておいしい。しばらくするとマスターが温根沼の丹頂鶴の話をしてくれた。鶴をこよなく愛しているらしく、店に置いてある望遠鏡で毎日鶴を観察している。鶴が見えないとがっかりするそうだ。写真を撮るのも嫌いで観察するのが趣味だとか。今年は天敵「キタキツネ」が伝染病の影響で数が減りヒナが順調に育っていると話していた。望遠鏡を覗かせてもらうとつがいの鶴にヒナが1羽。はっきり見えた。でも意外に移動が早い。

 店を出ると外は雨。マスターに「雨の中、たいへんですね。お気をつけて」と見送られ出発。厚床から別海、そしてパイロット国道に入り弟子屈を目指す。おや前方を走るチャリダーはコマンダーさんだな。少し徐行し手を振って挨拶した。本当にたいへんだと思うけどコマンダーさんはチャリにハマっているのだ。手を振ってる会長を確認し、雨の中アクセルをあげた。

 ここで重大なミスを犯しているのに気づかなかった。和琴半島に行くには景勝地「美幌峠」を目指せばいいのだが「美幌町」の標識に気を取られ「阿寒横断道路」に入っていたのだ。おかしいなあ。屈斜路湖が全然見えてこないと思いつつひたすら先に進む。「阿寒湖」が見えた頃、ようやくルートミスに気づく。「いいや、こままま美幌町に向かおう」と開き直った。釧北国道から美幌町、そして美幌国道を逆から屈斜路湖に突入。うひゃ、相当な距離を迂回するなあ。

 津別町に入る頃、腹が減ってきた。雨で体が冷えているので暖かいものが食べたい。名物「塩ラーメン」の看板があったので、その店に入ってみた。「西洋軒」というモダンな名前だ。もちろん塩ラーメンをオーダー。出てきたラーメンのスープをひとくち「う、うめー」、タレに余計なものが入ってないので、塩本来の味がさっぱりと麺にからむ。かなり有名な店らしく遠くからもお客さんが来るとマスターが言っていた。

 体も温まったので、バイクにまたがって美幌町に向かう。霧が出てきたなあ。やっと美幌国道に入ったが霧で何も見えんぞ。有名な美幌峠も真っ白。麓になってやっと霧が晴れて屈斜路湖が見えてきた。

 和琴半島に到着。毎回来るキャンプ場である。砂州でつながった緑の小半島で、温泉が点在する。レストハウスに挨拶に行くとオーナーが「おっ、今年も来たな!自衛隊さん」の一言。ここでもキャンパーネームが「自衛隊」になっているのだ。キャンプしたいが、風も出てきた。無理と判断し、バンガローが空いているか聞いてみた。丁度3人用ならキャンセルがでたそうなので躊躇わずチェックした。

 バンガローまで行くと高市さんが来てるではないか。「誰もこなかったら、どうしようかと思いましたよ」との声。不安だったんですね。さっそく荷物を運び込んだ。そのうちコマンダーさんも到着。食中毒さんは彼氏とそのお友達たちとテントを張るらしい。天気がよくないのに大丈夫かなあ。一応、後でバンガローにも遊びに来てねと言ったが、邪魔をしないようにしようっと。

 夕食は、レストハウスでジンギスカン。ビールをガンガン飲みながら食べた。酒が苦手のはずのコマンダーさんが、スイスイ飲んでる。「コマンダーさん、いけるじゃないですか」とどんどんビールを勧めた。ジンギスカンも3人で5人分は食べたろう。腹一杯。

 バンガローに戻ると風雨が強まった。凄い嵐。こんな中、テントを張ってる食中毒さんは、鉄人キャンパーだと言いながらみんなで感心する。おや?コマンダーさんが、早くもダウン。疲れたのかな。いや違う。あまり飲めないコマンダーさんへ無理にビールを勧めたので酔わせてしまったのだ。本当に無理をさせてしまいすいませんでした。反省・・・

 暴風雨の中、日本酒をちびりちびりやりながら高市さんと歴史や小説の話など熱く語り合った。高市さんは、日本史にも造詣が深く、おもしろい話をたくさん知っている博識な男だった。時を忘れて大いに論じあう。さすが四国の「吟遊詩人」。

 深夜、暴風雨がおさまり、コマンダーさんも目覚めたので、3人で露天風呂に入りに行く。こんな遅くにお風呂に浸かるのもオツなものだ。体を温めバンガローに戻り爆睡!


コマンダーさんと高市さん
 8月12日 早朝起床。天気は晴れだ。またも3人で朝風呂タイム。気持ちいい。本日、コマンダーさんは、チャリで美幌峠越えをして北見へ。

 そろそろ四国へ帰らないといけない高市さんは、富良野のとほ宿で北海道最後の夜を迎えるそうな。

 その後、レストハウスで「いもだんご」の朝食。そして僕は何気に自販機で牛乳を購入し一気に飲んだ。濃くておいしいと思いながらラベルをよく見ると今、ホットな問題になっている大樹町の「雪○」の牛乳だ。げ〜。
 そんなにめったに会えるわけではない。充分に別れの挨拶をした。またレストハウスのお姉さんにデジカメで記念の画像を撮ってもらったりした。食中毒さんにも礼を言い出発!僕は、開陽台キャンプ場に行ってみよう。

 永久塾の皆さん、本当にお世話になりました。また会いましょう!

 


からまつの湯
 まずは「からまつの湯」に入ろう。標茶から養老牛に向かう。養老牛温泉からしばらくダートが続いた。ゼファーではちと辛いのう。

 からまつの湯に到着。さっそく入って見る。熱い。北海道の露天風呂は共通して熱いような気がする。ここは誰も居なかったので「熱い」と言っても揚げ足をとられんので気が楽だ。すぐ脇が渓流、釣り道具を出して上流に行ってみた。2度ほど大きなあたりがあったが逃してしまった。悔しい。

 もと来たダートを戻り、R150に入った。天気もいいし、まさに快走。

 と思っていたら、後ろからライダーが追い抜いて後部を指差している。さらに後続のクルマがクラクション。「何だ。どうしたんだ」。バイクを停車させるとクルマのおばさんが「荷物、ずいぶん手前に落としてますよ」と親切に教えてくれた。ガビ〜ン。

 とにかくお礼を言って後ろの車輪を見るとネットやロープがグルグルに絡みついている。あと何秒かそのままにしていたら大事故、死んでたかもしれん。僕は潔く「死ぬ時は死ぬ」という信念でありたいと常々思っている。しかし、死ぬには死に方というものがある。永久ライダーがこんな初歩的なミスであっさり逝くのは嫌だなあ!

 なぜか持ってるハサミでネットを切断し、応急措置。予備のロープを巻いてかなり手前に落とした半分の荷物を探しに戻ったがない。でもキャンプ道具だけだから警察に届くだろう。ダートを甘くみたのが敗因かも?こんな日は動かん方がいい。それがキタノの旅の哲学だ。

 そして潔く連泊を決意。警察に携帯から紛失届を出して和琴に戻った。オーナー達から「もう、帰って来たのかい」と爆笑される。今日は天気がいいのでさっそくテントを張った。そんな訳なんですよ。コマンダーさん、高市さん。

 そして、今夜もディープな展開に!