第12章 ディープな夜(和琴キャンプ場)

 


画像提供:大阪府・ミヤタさん


 走行中荷崩れというビギナーな失敗をしたキタノは、開陽台キャンプ場に向かうというこの日の予定を急遽断念。和琴キャンプ場へ引き返した。オーナー達から「もう帰って来たのかい」と爆笑されつつテントを設営する。トホホ・・・

 キャンプ道具の半分を落としたが、テントやシュラフは健在なり。どうにかなるだろう。時間があるのでビールを飲んだり露天風呂へ行ったり、昼寝(ふて寝)したり、終始のんびり過ごした。こんな日があってもいいではないか。まだキャンプ場へ来る人も少ない。

 夕方になり、ぼちぼちテントが増えてきた。レストハウスで、大好物のいもだんごや焼きイカなどを夕食に替えてビールをがんがん飲んだ。ここはライダーサイトなので、ライダーかチャリダーしかいない。少し酔ってきたキタノは、周囲の皆さんにせっかくだから交流しましょうと提案した。周囲の皆さんは、快く賛同し集まってくれた。

 ミヤタさん、栃木のヘビーキャンパーさん、みゆきちゃん、イシダさん、長崎大生さん、チャリのおとうさん、みんないい味だしている。ミヤタさんは、昨日から連泊しているそうだ。きのうの暴風雨に納得できずもう1泊。栃木の彼は優しそうな感じの青年。人の良さが顔ににじみでている。昨日、暴風雨の中、美深キャンプ場で、浸水しながらテントを張ってたツワモノだ。就職頑張ってください。みゆきちゃんは、悩み多きレディ。イシダさん、この後ここを基地に4連泊のディープなライダー。長崎大生くんは礼儀正しき好青年。チャリのおとうさんは、仕事を辞めてロングな旅を続けている。

 「ねっ、ねっ、一緒に露天風呂入ろう」とひたすらみゆきちゃんを口説きまくっている学生の姿もあった。止めたまえ。ストーカー行為は嫌われるぜ。なによりみっともない。まあ、そんな野郎は置いといて熱いトークが続いた。みんないろいろ事情をしょって旅している。しかし深くは聞かない。

 旅人モードになっているぞ。大いに盛り上がった。これだからキャンプツーリングは止められないのだ。どうして北海道に来るとバイクやチャリというだけの共通点で打ち解けられるのだろう。心理的に素直になる。僕はそれを「北海道モード」と呼んでいる。これにハマって何度もライダーの聖地に来てしまうのだろう。不思議なモードだ。

 深夜、ミヤタさんが露天風呂の奥にまた温泉があると言うので、ストーカーくん以外の全員で行ってみることにした。遊歩道をしばらく歩くとお風呂の建物発見。先に入っていた皆さんが「百杯くらい湖の水バケツで埋めたけど、全然ぬるくならんですわ」と言っている。ここも熱い湯なんだな。さっそく足だけ湯につけてみる。「アチー・・・」、60度以上あるかも。みんなですぐ後ろの湖からバケツリレー。さらに百杯くらい埋めたけど全然ぬるくならん。恐るべき和琴の奥の温泉。

 みんな酔ってるので60度のお湯で洗髪タイム。1人1人頭に熱湯をかけ流す。「うおっアツ!」と言いながらみんな爆笑の連続。収拾がつかないくらい大騒ぎ。よく考えれば女性のみゆきちゃん(もちろんバスタオル使用)も入っている。レディの前で失礼しました。遅くにテントに戻り、とろけるように眠りに落ちた。

 


 8月13日 早朝に起床。寒い。ラジオで弟子屈の最低気温が8度と言っている。真夏なのにさすが北海道、こういう日もあるんだなあ。 

 夕べの温泉に朝風呂へ行く。もちろん誰もいない。熱いので湯船には入らず、たらいで体を流した。何杯もお湯をかけて体を温める。

 湯から戻ると皆さん起き出してきた。ミヤタさんや長崎大生、チャリのおとうさんたちは、早出して行った。他の皆さんは連泊するらしい。

カヌーに挑戦
 僕は、釧路湿原へ行く予定だ。そう遠くないので時間はある。よしカヌーに乗ってみよう。半島の先まで行く。慣れないので結構しんどい。

 カヌーを降りる頃、急に暑くなってきた。朝の冷え込みはなんだったんだ?朝露に濡れたテントを干しながらゴロンとしているとまた睡魔が・・・

 よし、そろそろ出発するか。テント撤収!連泊するイシダさんやみゆきちゃんに挨拶して、アクセルをあげた。また来るぜ和琴!お世話になった皆さん、またどこかで会いましょう!
僕のBBSにもカキコしてね。

 尚、「混浴ライダー@大坂」のミヤタさんとは、翌年、ニセコキャンプ場で再会できました。



展望台前
 そうそう釧路へ行く前に中標津警察署に出頭しないと。悪いことした訳ではない。昨日落とした荷物が届いているそうな。暑い中、中標津までひとっ走り。荷物を引き取った。拾ってくださった方ありがとうございます。

 ここまで来たついでに有名な回転寿司「すしロード」に行ってみよう。とにかくネタがでかい。ライダーサービスのサーモンの握りがうれしい。一押しは新鮮で大きなホタテの握りだ。

 同じ道を戻るのも無念なので、「多和平」に立ち寄る。展望台に登ると360°の大パノラマ。牧歌的風景が広がっていた。


 間道を抜け標茶町から鶴居村に入った。丹頂鶴ウォッチングや釧路川川下りの為に選んだのがとほ宿「風来坊」。17:00頃に到着する。

 髭をたくわえたオーナーは、丁寧な話し方をする感じのよい方だった。お客さんも満員らしい。

 夕食のシーフードカレー、めちゃめちゃうまかった。食後、地元の盆踊り大会にも強制参加させられ、かなり驚く。しかも寒いのなんのって。 

釧路川
 小学校の校庭で催された盆踊り。地元の皆さんや小学校の若い女性教諭たちは内輪で盛り上がっていたようだが、無理矢理連れてこられた旅行者たちの顔は一様に場違いで困惑した表情を浮かべていた。

 どうやら祭りを盛り上げるため、うちの客も連れてくるかというオーナーの意図のようだが企画外れに終わってしまった。皆、校庭の隅の方で寒さにぶるぶる震えながら時が過ぎるのをただ虚しく待っているだけという現実は否定できないと思う。

 ようやく宿に戻ると今宵は、オーナー主催の「飲み会」があるそうだ。ほとんどのお客が気分を害している空気にさすがにマズいと思ったのかな?

 僕はもう、こんなに遅くから飲み会に参加する気分にもなれずベットで横になりるとすぐに熟睡してしまう。

 まあ、宿でも悪気があって強制参加させたわけではなかろう。後年、廃業の運命を辿ることになろうとは、この時は誰も知るよしもない。

 それより明朝の鶴見学ツアーがとても楽しみだ。僕は前述の通り、地元の盆踊りじゃなく丹頂鶴や釧路川に興味があって、この宿に来ただけなんだし。