第9章 遙かなる知床岬!


知床岬の羅臼側で漁船に乗る(画像は阪大生くん)



知床五湖
 8月9日 早朝に起床する。早速バイクにまたがり知床五湖に向かった。早朝のワイディングは気持ちがいい。ところが知床五湖の入口のゲートが閉まっている。30分待って(この間パーコレータでコーヒーを沸かして飲む)。ようやく駐車場に入った。それから小1時間くらいかけて、一湖〜五湖までゆっくりと歩く。人が誰も歩いていない。

 この辺は、クマ出没多発エリアだ。昨年もトイレの裏の木にクマがぶら下がっていたとか。一応、クマよけの鈴を腰に下げながら美しい景色を堪能した。少し怖かったけど。

 またこのあたりに大正時代から入植が始まったらしいが知床の厳しい自然環境が人間にうち勝ち、昭和40年頃にはすべての人々が離農しこの地から去ったそうな。凄いところだなあ、知床は。

 まあ実際には江戸中期に松前藩の隠密がこの地に入り、アイヌの集落をいくつか確認したという記録もあるが・・・


 続いて岩尾別温泉に向かった。人気のない景色の中、ゼファーをしばらく走らせると行き止まりになり、ホテル地の涯にぶつかる。その横にある無料の露天風呂だ。三段になった湯船の他、右奥に滝見の湯と呼ばれる湯船もある。

 早朝のせいか人影もなく、ゆっくり温泉を堪能する。ハチに刺された左腕も連日温泉に入っているせいか、かなり腫れがひいてきている。
  

岩尾別温泉



ウトロ側の岬
 セイコマで朝食を調達し、RHに戻ると皆さん出発のようだ。健闘を祈り、別れの挨拶をした。

 僕も親父さんやおばさんにお世話になった礼を言い、知床汽船乗り場に向かう。海上から知床岬を拝見する予定だ。

 ところが波が荒いため、岬まで行くコースは欠航。昨年から楽しみにしてたのに残念。半分まで行く便のみは運航するそうなのでそれに乗ってみた。
 宇登呂側の半島は断崖絶壁の連続。まさに壮観。何かの本で読んだ記憶によると時折、クマが崖から落ちてのびてるそうな。そんなことがあっても不思議ではない光景だな。

 次回こそ知床岬の突端を見てやるぞ!


 快晴の知床横断道路を快走し、羅臼側に出た。暫くすると「ひかりごけ」の標識を発見した。地球上でも低温の地域にしか見られないめずらしい夜光のこけである。
ひかりごけ
 さらに走り、道路が消える相泊近くのセセキ温泉PAで小休止する。今夜の宿、どうしようかな。きのう誰かが漁船で知床半島の羅臼側の奥地を漁船で案内してくれるRHがあると言ってたなあ。よし、そこにしよう。近くにいた大阪のお若いライダー2人にもそんな話しをしたら一緒に泊まるとのこと。3人で早速行ってみた。感想は普通の漁師さんの家。でも野趣があってよろしい。

 まだ時間がある。2人が「熊の湯」に行きたいと言うので、気がすすまないが案内する。案の定、何名かの漁師さん?(漁師さんではなく長期滞在の工事現場のコンコンチキなオヤジども数名が我が物顔で仕切っているという情報も後日判明)が入っていた。そして、おっさんのうちのひとりが寂しい頭をシャンプーしつつ、大阪の2人のうち1人に「ちゃんと洗って入れ」。「熱い」と思わず叫んだ彼に「だったら帰れ」。熱いから湯船に腰掛けると「あがるか入るかどっちかにしろ」。キツイお言葉の数々。

 
確かにマナーの悪い旅行者の噂も聞くが、大阪の2人は、何も悪いことしてないし、真面目でおとなしい好青年じゃん。不愉快千万。

 ブチキレ寸前でかろうじて湯からあがり駐車場に戻るとどっかで会った学生さんがいるなあ。おー、昨夜、ウトロの食堂で同じテーブルだった阪大生くんではないか。奇遇、奇遇。まだ泊まる宿を決めていないらしい。「俺達は、漁師さんのやっているライダーハウスに泊まるんだけど、よかったらどう?」と誘うと、「行きます」とのこと。今夜の役者が揃ってきたぞ。機嫌も直ってきた。

シーフードバーベキュー、最高
 宿に戻ると夕食タイム。シーフードバーベキューだ。ほっけ、つぶがい、いか、樺太マスのちゃんちゃん焼き、毛ガニ、どれも漁師のオーナーが朝、自分で採ったヤツばかりだ。もちろん新鮮でうまい。我々4人の他に九州のライダーも加わって大いに盛り上がる。もうホントに腹一杯。これで1500円也。安過ぎる。うま過ぎる。オーナーありがとう。

 熊の湯のおっさんの話しになると「そこまで言う。しょうがねえなあ」と呆れ返っていた。オーナーも熊の湯保存会のメンバーでもあるらしい。
 福岡の郵便局員だったが羅臼に魅了され、この地移り住んだ自称ヘルパーのけんちゃんも現れ爆笑の連続。さらに野趣あふれる五右衛門風呂でもてなしてくれた。やっぱり羅臼は最高だなあ。と一貫性のないキタノだった。

 22時には、ピタッと消灯。さすが漁師の家。


 8月9日 5:30起床。オーナーの漁船で、海上から道なき羅臼側の知床半島の奥地に向かう。日本最後の秘境だ。舟は豪快に波を飛び越え進んで行く。凄い景色だ。

 途中で映画ひかりごけ(三國連太郎主演。遭難した船の船長が乗組員の人肉を食べながら生き残るというすざまじいストーリー)のモデルとなった地を過ぎる。今でも年一回、お坊さんが犠牲者の供養に来るそうな。しばし合掌。

映画の舞台となった付近



秘境に上陸
 化石浜、タケノコ岩の景勝地を過ぎると剣岩が見えてきてモイレウシ湾で上陸した。来るとこまで来たなあ。クマと漁師の王国だ!内陸部は人間の手が入らない秘境。凄い。感動していると浜にたくさんのビールの空き缶が捨ててあった。何てマナーのないヤツがいるんだろう。非常に残念だった・・・

 だが雄々しい東の海を観ながら、いつか必ず徒歩でシリエトク(知床岬)を制覇するぞと誓うキタノだった。
 シリエトクはここからまだまだ先の遙かなる巨大な草原らしい。海上からの上陸は禁止されている。相泊で入林届を出して、登山という名目で徒歩で歩くしかない。その行程には道がない。したがって具体的なMAPすらもない。国土地理院の25000分の1の地形図のみか。あとは口コミだけ。昔はあまりの過酷さからクレイジーコースと呼ばれていたそうだ。

 ここモイレウシ湾は、2泊3日で岬を目指す際の1泊目の幕営地に使う人が多い。ここから先がペキンノ鼻、念仏岩、兜岩とエゾシカさえも滑落させるという超難関エリアが目白押しで続く。恐らく旅人キタノをして、生涯最大と言わしめる壮絶なトレッキングになるだろう。キタノが知床岬踏破を実現出来る日が、近未来に本当にやってくるのかどうか?

 帰りは、オーナー、とばすわとばす。凄いスピード。オーナーの話だとまだ甘いそうだ。漁師の中には小さな舟に強力なエンジンを搭載し、ロシア側の主張する経済水域でカニを獲り逃げ返る。すなわち「Hit and way」戦法を一か八かでやる人もいるらしい。最近はロシア側でも人間に向けて発砲してくるから命がけである。拿捕されれば舟没収、強制労働ん年。怖い!

 宿に戻り、オーナーや皆さんにお世話になった礼を言いセルを回した。ほんとに楽しかったなあ。出がけに「キタノさんのホームページに必ず遊びに行きますから忘れないでくださいよ」という阪大生くんの叫び声が後ろから聞こえてきた時、思わずこみ上げるものがあった。この屈託のないさわやかな若者にピースサインを送り馬上の人となる。元気でな!大丈夫忘れてないぜ(笑)

 今日は、根室にてネット上の「永久塾」のオフ会、楽しみだな〜 


スナップ集



知床沖を巡航するヨット

すれ違ったカヤックツアー

朝焼けの知床

早朝の漁