第10話 道南めぐり  8月11日(水) 天候 晴れ

 夕べ早く寝たせいか4時には起きてしまった。することがないのでテントを撤収し、パッキングも完璧に済ませてしまった。昨夜、ヨッシーと作戦を練り、明朝は早起きして函館朝市で、朝食をとるということだったのだが。

 めずらしくヨッシーくん、完全に寝坊。用意万端の僕を見て、慌てて片づけ準備完了。予定よりは遅くなったけど、それなりに早朝のスタート。

 途中、江差の手前でR227に入り、一気に函館駅到着。さっそく函館朝市に向かう。360ものお店が集まっている朝市には、新鮮な魚介類や野菜、果物のほかに乾物や衣料品に至るまで、いろいろな物が売っている。びっくりするくらい大きなカニも、あちこちで売られているので珍しいものではない。

 しかし先日の利尻島の商売っけの多さにも辟易したが、ここはややスケールが違う。30分も歩いていると100回くらい声をかけられるんじゃないかな。もう北海道の海岸沿いをほとんど攻略して来た我々は、釧路の和商市場、根室のカニ専門店を見ているので産地の浜値は、同じ物でも半値以下に思える(素人目ながら)。運送費やその他中間に介在する営業費を含めるとここもそれなりには安いのだろうけど。

 そんなことを考えながら歩いているとカニを売ってるばあさんが「ライダー。ライダー。ちょっとこれ見ていきな」と一方的に話しかけて来た。でも相手にならず進んで行くと「なんだべ。あのライダー!」って後ろから罵倒する声が聴こえた。めずらしくヨッシーがムッとして「失礼な」と言っていた。

 お腹が空いたので有名なK食堂でいくら丼を賞味する。「ご飯たりなきゃたすよ」と気前よく言ってくれたが、女将さんの従業員に対する態度が客の前でもすごいピリピリしていてあまり感じがよろしくない。以前に入った隣のT食堂の方が味も雰囲気も良かったような気がした。結局、お土産を何も買わずに撤収。


 R5を北上して行くと優美なコニーデ型活火山駒ヶ岳(1133m)が見えてくる。その裾野には、大沼、小沼、薄葉沼の3つの沼が並び変化に富んだ美しい景色で有名だ。R5から道道333号に右折し、大沼公園で休憩をとることにした。


噂の白い恋人ドリンク
 日本のヨーロッパと言われる風景なだけに観光客も多い。でも山賊みたいな生活をしてきた我々には、おしゃれな感性が鈍化して今ひとつしっくりこない。景気つけに白い恋人ドリンクでもと思い、一気に飲んだら(味は白い恋人チョコレートと同じ)ドロドロと甘い。甘過ぎる。て,撤収・・・。後から気がついたんだけど大沼のちょっと先に日本一うまい水が湧くといわれる「湧き水公園」があったのを見落としていた。目の前まで来ていながら残念なり。

 R5に再び戻り、長万部に到着。ここでは、カニめしを賞味したい。スタンドで給油してるとき、従業員においしいカニめしを食べさせてくれる店を教えてもらった。やはり地元の声が一番だと思う。行ってみたら大きなドライブインではなくて、○○水産という観光バスの絶対に入ってこないような店構えである。店内には、大きなイケスがあり活カニや貝類などがたくさんいたのが印象的だった。美味しい食事を充分堪能する。

 この旅に出て行動力や直感が研ぎ澄まされ、我ながら成長したなと思い苦笑いしながらアクセルを握り店を出た。フッフッフッフ。

 虻田町から左折し、しばらく峠道を走ると突然、紺碧の洞爺湖が眼前に広がった。洞爺湖は周囲43キロのカルデラ湖で、湖畔には賑やか(でもないが大きな)洞爺湖温泉街がある。湖の中には大小4つの島が浮かび、その中のひとつ、一番大きな島である大島には洞爺湖森林博物館があり、野生のエゾジカが保護されている。

 今日は、洞爺湖の湖畔に野営するつもりだったが思ったようなキャンプ場がない。探しているうちに1周してしまった。ダメもとで満員のはずのキャンプ場「グリーンステイ洞爺湖」に訊いてみるとOK。一般とライダーの区域が差別?ではなく区別されていたのが気になったが設備の整った芝の綺麗なキャンプ場である。テントを設営した後、この旅初めてのジンギスカン(有名な松尾ジンギスカン)を食べに出た。臭みが無く、タレがうまい。

 テントに戻り、ある事情(酔っぱらい?)でまだエンジンの熱い(冷えてない)バイクに半ズボンでまたがったら右大腿部がジンギスカンになった。「あぢぃ〜」思わず立ちゴケ。レバーが魔法使いのほうきのように曲がっている。バイクを起こしたら、勢い余って今度は左側に立ちゴケ。左膝脇にも大火傷。悲惨な火傷(全治1ヶ月)を両足に負った。ヨッシーが「奥さんになんて言ったらいいんだ」と頭を抱えこんでいる。何という不注意!全然、成長していないじゃないか?僕は!