第1章 キャンプ場の夜



「道の駅つちゆ」にて


復活!

 転勤、引越し、遠距離通勤と最近の僕は精神的にも肉体的にもかなりボロボロになっていた。そこでGW前半の3連休は久々にキャンプツーリングへ行くことにした。

 さて準備しようかと思ったら、あれ?ツーリング道具は?キャンプ道具は?引越しのドタバタでどこへ行ったことやら。それでも奇跡的に小1時間ほどで準備完了!莫大な荷物のパッキングも完璧に済ませた。僕は、北海道ツーリングで数々の失敗(荷崩れも)を重ねているため、パッキング術には絶対に妥協しない。

「あなた、どこでキャンプするの?」
 妻が出がけに聞いて来た。
『やっぱり裏磐梯方面かなあ〜』
「会津は雪が残っているよ」
『マジっすか?』
 息子(人間)・コロ(犬)・ミー(猫)の寂しがる3つの頭を撫で、逃げるようにアクセルをあげた。

 まあ、どこだっていいや。キャンプ場があれば・・・と言いつつ土湯街道へといつの間にか機首が会津に向いているのであった。

 お天気は快晴で暖かい。まさに絶好のツーリング日和だ。僕のトレードマークのひとつ、バンダナが新緑の薫風になびく。本当に心地よい。土湯峠を舞うように快走した。


 「道の駅つちゆ」を過ぎ、長い土湯トンネルを抜けると雪国だった。



土湯トンネル付近のP
 でも雪は道路脇だけなので、走行に支障がまったくない。

 ここからは会津地方ということになる。僕が生まれた会津若松も近い。親戚は今も多いが、子供の頃、ちょっと住んでいたというだけで、すっかり縁遠くなってしまった会津若松。

 しかし何故か自然と足が向く。帰巣本能というやつか?


 白金の山々を拝みながら、R115を猪苗代へと降る。

 このあたりには、農家直営の野菜や山菜を露店で売る店が多い。

 その中の一軒、食堂も兼ねる店へ立ち寄る。

 手打ちうどんも美味そうだが、名物「味噌焼きおにぎり」へ食指が動いた。

 1個200円也。大きくてボリューム満点。香ばしい自家製の味噌の味が漂う秀逸なおにぎりだ。美味い! 

焼きおにぎり



神秘の沼「五色沼」
 猪苗代山間部から裏磐梯へ突入。さっそく五色沼へ立ち寄った。磐梯山の噴火でできた10数湖の神秘的な湖沼群の総称である。天候によって色の変わるとこからその名がついたらしい。

 道東のオンネトーに匹敵する美しい沼である(って、なんでも北の大地と比較してしまう北海道病な僕をお赦しくだされ)。


NEWテント始動


 以前に寒さで惨敗した桧原湖畔のママキャンプ場へ入った。

 人気がない。考えてみれば、まだ4月だ。裏磐梯にキャンパーなど居るはずもない。

 ようやく管理人のおばさんに再会した。



新調したテント
「おにいさん、久しぶりだね・・・」
 って、おばさんの一言。

『今日、泊まりたいのですが』
 と聞いたら・・・
「ちょうど、今日から営業よ。おにいさんが初来場だから、200円まけて500円でいいよ」
 覚えていてくれたんだ!
『ありがとうございます』
「でも、ひとりじゃ寂しいね」
『いやあ、いいんだよ。この方が慣れてるんで』


 今回、購入した「WOOLRICH」のテント、かなりグッド!それなりの機能と広さは充分果たしていると思う。以前のテントと同じ2人用なんだが、広々の前室で4人用に錯角してしまう。その名もずばり「WIDE TOURING TENT」という。前室がタープにもなるそうな。

 ただ、前室付きのテントは初めてなので設営にとまどり、40分はかかった。テント設営のマニュアルって、どうしてこう抽象的なのだろう?キャンプビギナーならこのテントは、絶対に組み立てられないと思った。

広々としたテントの前室



桧原湖近くの道沿いにて
 テントの設営を万全にこなした。日が高いうちにお風呂へ行こう。ここから、そう遠くない地点にある温泉施設「ラビスパ裏磐梯」へ向かう。

 キャンプ場の管理人のおばさんが「今年は雪が多くてね」とぼやいていた。途中、道沿いで愛機を停めてあたりを見渡すとなるほどね。雪だらけ。これではキャンプ場を開くにもさぞ苦労したろう。


 ラビスパ裏磐梯、清潔感が漂う綺麗な温泉施設だ。入浴料700円(税別)。

 ジャグジー付きなど何種類かの湯船。もちろん露天風呂もある。北海道の公営の温泉施設を彷彿させる立派な温泉だ。

 現在、時刻は16時半、どうやら17時から500円になるらしく、そのほんの時間差で施設内はガラガラだった。そんな環境を享受させていたく。じっくりと温泉を堪能し、帰路に着く。

ラビスパ裏磐梯


キャンプ場の夜



簡単な料理をする
 陽が傾いてきた。さすがに裏磐梯の夜は冬のように寒い。でもなにもかも覚悟の上だし気にならない。装備も北海道夕張にて日々研究開発、そして販売をしている旅系ライダー支援のショップ「快速旅團」のかねやん(防寒)ジャケットでばっちりだ。

 持参したウインナーやベーコンをフライパンで炒め、塩コショーするだけの簡単な男の料理だ。でも充分に美味い。ウィスキーを飲みながら焼きあがったブツを次々にほお張る。懐かしくて本当に泣けてきた。野外の料理って、粗末でもどうしてこんなに美味しく喰えるんだろう。


 酔いがまわってきた。夕陽と同じように僕の顔もおそらく真っ赤なんだろうな。仕上げに「うどん鍬」を作ろうと思っていたが、もう充分だ。

 乾いた砂漠へ水が浸透するように心地よく五臓六腑へ酔いがしみわたる。

 相変わらず感度の悪いラジオが時々、変な声をたてるのがおかしかった。

 ふと夜空を見上げると満天には及ばないものの綺麗な星空だ。これだ!この雰囲気を味わうためだけに永久ライダーはキャンプに来たのだ。

 いつまでもいつまでもこのスタイルを離したくはない。だから僕はキャンプツーリングを続けているんだ。

かなり冷える


 世間との関わりを絶った、この瞬間に心が洗われる。

 またまた新調のマイナス5度対応のモンベルのシュラフの中で静かに意識が途絶えていく・・・


 おやすみなさい!