第2章 僕の生きる道
蔵の街「喜多方」の街並み
風力発電がここにも
秋元湖 |
遅めの起床。頭が痛い。またまた飲み過ぎか。テントの外へ出て桧原湖を見ると低温のためか水蒸気が湯気のように真っ白に浮き上がっている。 朝食は、夕べの食べ残しのうどん鍬だ。あんまり食欲がなかったが無理矢理押し込んで完食。洗面しながら管理人のおばさんへ連泊を申し込んだ。今日は街へ出て喜多方ラーメンでも食べよう。 煙草をくわえながら充分に暖気して出発。まずは秋元湖へ。 |
秋元湖は、いまいちマイナーなイメージだがとても静かで美しい青の湖だった。桜は二分咲きほど。キャンプ場もいい味だしてるし。という訳で次回キャンプ候補地へ決定した。 ぼんやりと寝ぼけまなこで狭い道のコーナーをバンクしていた刹那、乗用車と危うく正面衝突しそうになった。アクセルワークで間一髪でかわすも冷や汗が出る。フー。 有料ゴールドラインへ入った。もちろん道路脇は雪だ。しかし磐梯山の眺望と心地よいワイディングはまさに第一級の有料道路だと思う。 |
ゴールドラインPにて |
風力発電 |
ゴールドラインを出て猪苗代方面へ向かった。すると、どこかで見た扇風機のようなものを発見。 キタノが愛おしくてやまない「サロベツ」。何もない、人間の手が介在しない北の大地「サロベツ原野」へ僕に勝手に?埋め込み、世界最高の光景をぶち壊してくれた風力発電か。ここに埋めても景観には影響がないと思うが、巨大な扇風機を見て不快になる。猪苗代から、元の道へ撤収を開始した。 県道7号線を喜多方へ向けて愛機を走らせた。すると大量の湧き水をメットボトルに詰め込んでいるご夫婦発見。湧き水と聞けば黙っていられない男「キタノ」は、ためらいなく停車した。一口相伴させていただく。 |
湧水群
甘くて美味しい。このあたりは造り酒屋が多い。水が美味しいから酒が美味いんだ。「会津の里は酒の里」、なるほどなあ〜。 ご主人と少し話した。 「美味しいだろう」 『はい、とても甘い感じがしますね』 「ここの水はね、2ヶ月はもつ名水なんだ」 『それは凄いですね』 「俺たちは2週間に一度は汲みに来てるんだよ」 なるほどおもしろい話を拝聴した。丁寧に頭を下げ静かに出発する。 |
道路脇の湧き水 |
龍ヶ沢湧水 |
しばらく愛機を走らせるとツーリングマップルに磐梯西麓湧水群と標記されている。もちろん日本百名水のひとつだ。よし、行ってみよう。龍ヶ沢湧水の標識を発見。ここだろう。史跡「恵日寺」付近から細い道を縫うように走った。 龍ヶ沢湧水の入り口を見つけた。ここからは車両進入禁止だ。よし歩こう。一応、龍ヶ沢湧水までは800メートルとなっているが意外に遠い。今回はライダーブーツなんで、靴擦れがしてかかとがとても痛かった。もちろん熊避け鈴は必携だ。杉林の中を延々と歩きようやく湧水を発見した。 |
さっそく岩の割れ目から噴き出す湧き水を堪能した。美味しいなあ。ここは、どんなに大干ばつでも湧き水が噴き出すらしい。会津藩の時代から大変大切に祀られて来たそうな。 もう少し画像を撮ろうと思ったらスマートメディアが容量オーバー。まあ、補助用の8MBだからな。32MBのは北海道ツーリングで使い込み磨耗してしまった。街の電器屋で買おう。 ということで、次に向かったラーメン屋「祭り亭」、喜多方で1、2を争う実力店だが画像を残せなかった。味の方は、これぞ「喜多方ラーメン」という正統派の味だ。麺がモチモチして、よくスープにからむ。チャーシューも柔らかくて美味しい。満足して店を出た。 |
道の駅へ併設された温泉施設「蔵の湯」へ目が向いた。露天風呂・サウナ・休憩室がついて、なんと500円。恐るべしっ喜多方。温泉施設付きの道の駅。これなら、また絶対に来るぜ。 |
道の駅「喜多の郷」の「蔵の湯」 |
まるやのチャーシューメン |
その後、喜多方の街中を徘徊・・・いや散策する。いつ来てもレトロな雰囲気だ。市内には2000以上もの蔵がある。ふと古い造りのラーメン屋を発見。「まるや」昭和28年創業の喜多方では老舗中の老舗だ。よし入ってみよう。 時間的に中途半端なせいかお客は僕一人だ。若いおねえさんが注文を取りにきた。迷わずチャーシューメンをオーダー、おっこれは!煮干がほどよく効いた、まさにシンプルラーメン。チャーシューもコリコリした舌ざわりが、とってもグッド!美味い。 ラーメン屋をハシゴしたため、もう超満腹。そろそろ山へ帰ろう←俺は雪男か? |
人情キャンプ場
桧原湖ママキャンプ場へ戻り、一杯やり始めた頃、管理人のおばさんが何かを運んできた。 「これ目の前の湖でとれたフナの味噌煮とこのあたりのふきのとうのてんぷらだよ。食べて」 『あ、ありがとうございます』 旅先での親切は身に沁みる。 「ところで、おにいさんライダーにしてはいいテントだね」 『ええ、新調したばかりなもんで』 さすがにキャンプ場の管理人をしているだけあって、目が肥えている。このテントのよさを既に看破していた。 |
フナの味噌煮とふきのとうのてんぷら |
前室の宴 |
寒い中、わざわざ外で酒を飲まなくても広い前室で飲めばいい。今さらながら気づいた。 おばさんから頂いたおかずを肴にぐいぐい杯を重ねた。酔いが心地よく全身にまわって行く。改めてテントを見渡すと天井にファスナーが・・・凄い通気孔までついている。これも今さらながら気づいた。おばさんが誉めるわけだ。 広くて本当に居心地満点。やはり、このテントは大当たりだった。そんなことを考えながらほどほどの時間にモンベルのシュラフへ入る。そしていつの間にか爆睡していた。 |
既にかなり陽が高くなってきた。何度も目覚めるがその度にまた寝る。ルーズだが寝れば寝るほど心の中にくすぶっているシガラミ、ストレス、肉体的な疲労がとろけていくような感じがして、とても心地よかった。 そして昼近くなって、テントの中の尋常じゃない暑さに耐えられなくなり、ついに外へ這い出した。 おばさんが今度はスイカを持ってきてくれた。 『すいません、今度はお土産を買ってきますね』 「いいんだよ、またここを使ってくれるだけで」 うっ、なんていい人なんだ(TT) 『必ず、また来ます』 と言ってテント撤収作業を開始した。 |
思い切り寝坊 |
テントをたたみ、愛機へ荷物を例の如く完璧にパッキングした。ゴミを拾い使う前より綺麗な状態に戻し、おばさんに挨拶しに行く。 『また来ます』 「いつでもおいでよ」 『はい、すっかりお世話になりました』 「気をつけて行くんだよ」 北海道で首筋から蜂が進入し、胸部から腹にかけて7箇所の傷を受けて以来、バンダナを必ずするようになった男、キタノは馬上の人となった。その姿には、もう一片の曇りもない。爽やかな風にバンダナを勢いよくなびかせながら永久ライダーは裏磐梯を駆け抜けて行く。 |
僕の生きる道
忙しいって愚痴ばかりこぼす僕がいた。
でも愚痴をこぼして現実が好転するわけではない。
むしろ心の狭い嫌な野郎になっていたろう。
旅は北の大地ばかりじゃない。
いつだってそこにある。
僕の側にはテントがある、シュラフがある、キャンプ道具一式がある。
近くにだって、こんな素晴らしい居場所があるじゃないか。
さあ、キーをまわせ。アクセルをあげろ!
愛機は常に僕を待ってスタンバイOKだ。
走れ、真の男キタノ!
記事 北野一機