冬の北海道の旅2013
雪煙
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ニセコヒラフ
「今日はどうする?」 「スキーにします」 村長に訊かれると、アラキさんはためらわずに答えた。 「ゴロウさんは?」 『ぼくも今回滑れるチャンスは今日が最後なのでスキーにします』 というわけで、なんだか天気が荒れ模様だが、ニセコヒラフで滑ることにした。 ニセコヒラフか。学生時代以来、四半世紀ぶりだ。ただ寒かったという記憶しかございませんが。 タナカさん、アラキさん、ゴロウさんは、村長にヒラフスキー場の入口まで送っていただく。しかし、シバレルねえー、異様な寒さだった。風も強いから体感温度は氷点下30℃ぐらいじゃなかろうか? リフトの隣には小学生ぐらいの子供が2人ほど座り、ぼくに笑顔で話しかけてきた。 「日本人ですか?」 確かにゴーグルやネックガードで顔はあまり見えないが、ぼくは典型的な日本人顔 だと思うのだが? 『そうだよ』 と、答えると、 「ぼくは日本人じゃないけど、日本語しか話せないないんです」 『?????』 つまり、ハーフでニセコ在住なのか? イマイチ、意味が理解できなかったのだが、それなりに会話が弾んだ。そして延々とリフトで登っていき、レストハウス”エースヒル”まで辿りつく。 |
こりゃだめだ。暴風雪で雪煙が渦を巻いて荒れ狂っている。もはやブリザードといっても過言ではない。慌ててレストハウスに飛び込むとスキー教室のチルドレンも大量に避難していた。 いつまで経っても天候が回復しないので、強引に滑る。そして転がった。オージー(オーストラリア人)が乗るボードにも激突され、吹っ飛んだりと波瀾の展開が続いた。 |
流石に腹がすいたので、ホテルニセコアルペンのレストランで昼食をとることにした。ここのステーキランチはボリュームがあり、良心的な値段だった。確か1300円で200グラムのお肉が出てきた。ご飯の盛りもかなりよかった。 「ゴロウさん」 『こりゃどうも』 アンビに泊まっていたファミリーの皆さんとも偶然ながら再会したりもする。 |
嬉しいことに、ここのホテルにはミルク工房の直営店があり、ソフトクリームを存分に堪能できた。いや本当にミルク工房のソフトって、味が濃くて絶品なんですよ。マイウ! もう午後からは滑りたくない。ソファーでゴロゴロしていたいと本気で思ったりしたのだが、リフト1日券がもったいないので強引に14時まで滑りまくる。しばれるねえ。 |
村長に無事回収してもらい、14時半前にはアンビに戻った。一応、スキーをしてきたんだぞという証拠画像をアラキさんに撮影してもらう。 これから帰宅されるタナカさんを見送る。そして今宵はハコさんという方がいらっしゃった。やはり熟練のスキーヤーっぽいオーラが出ている。 |
今夜の温泉は、ニセコ昆布温泉鯉川温泉旅館という秘湯に浸かる。本当に”日本秘湯を守る会”に加盟している。また創業明治30年、100年以上の歴史をもつというから凄い。確かに古い温泉旅館だけど、味わい深い内湯が素晴らしい。個人的に大好きなひなびた雰囲気が濃厚に漂っていた。もちろん露天風呂もあるぜよ。泉質は炭酸水素塩水で、とても効能が高いそうだ。 「感動した」、ニセコには、こういう情緒あふれる秘湯が残っているんだ。夏にも来たいと激しく思うなり。 ワインの宴会は、昔の北海道の旅の赤裸々な話題で盛り上がった。ずいぶんと無茶したけど、若かったからできたこともあるかもしれない。でも年配になって、こういう旅ができるのもあの頃に土台を築いていたおかげかなとふと思ったりもした。 ハコさんは口数は少ないが、ぼくらの 明日には、ぼくも宿を出る予定だ。寂しい気もするが、そろそろ単独行動でしておきたいことがある(食べ物のことなんですけど)。 というわけで、布団に入ればあっという間に意識が消えた。 |
朝食時、村長の怪談が始まった。 恐怖の味噌汁 ちょうど、その麩(ふ)の入った味噌汁を食べているときである・・・ きょう、麩(ふ)の味噌汁 だそうです(^_^メ) そうきたか。こいつは朝から一本とられましたな。 こんなに楽しいダジャレも当分聴けなくなると思うと寂しいが、本日は筆者も出発しないといけない。 「ゴロウさん、また3月あたりにもきてね」 と、村長はハコさんと南白老岳トレッキングへと出発していった。 どうも大変お世話になりました。 しかし、3月はぼくの稼業の書き入れ時で、休みを捻出するのが厳しい。少し昔なら、楽勝で休め海外とかいけたんだけど、こう景気が悪くて余裕がない時代だとなかなか。 ユミさんにニセコ駅まで送っていただく。福島の雪はどうなんですかと聞かれたが、奥会津や裏磐梯ならニセコ以上の超豪雪地帯だけど、福島市内は融けたり降ったりですと答えた。ただ、今シーズンの福島の雪はかなり多い。また、北海道みたいに細部まで除雪がいきわたらないので、かえって車の運転が危険であると思う。 アンビが素晴らしいのは宿主である村長が、自ら運転ガイドしてくれるツアーが充実していることだ。夏からどれだけ後志一帯の穴場を案内してもらったことか。それでもぼくがまわったポイントだって、まだまだ氷山の一角に過ぎないのだ。 |
ユミさんにお世話になった旨の礼を述べ、ニセコ駅に入った。 ぞんがい駅は部活動へ向かう高校生で混んでいるなあなんて思っているうちに汽車がやってきた。 |
ずいぶん雪をかぶった汽車だ。そういえば村長が、ニセコの雪も例年の倍だといっていた。 なんとかボックス席に座れた。向かいのおとうさんは美味しそうに缶ビールを飲んでいる。 |
そうか、運転じゃないんだからぼくもビールぐらい買えばよかった。けど時既に遅し。 ガタンゴトンと3両編成の列車に揺られているうちに爆睡。冬旅をするようになってからいつでもどこでも簡単に寝られる習性がついてしまった。 |
いったん小樽駅で乗りついで南小樽駅で降りた。目的は、ここ十数年越しで、一度は食べてみたいと熱望していたラーメン店を訪ねることだ。小樽一美味しいと呼び声の高い”初代”である。マップでは調べつくしているのでばっちり頭に入っていた。そして迷わず10分ほどで到着した。行列覚悟だったが、思ったより混んでない。 |
オーダーしたのは醤油チャーシュー麺だ。暫し待つと飴色のスープのラーメンが運ばれてきた。 一口スープを頬張ると重厚な味がする。鳥がらと魚介のダシの絶妙なハーモニーである。 |
またラードが表面に浮いていて最後まで熱々だった。北海道のラーメンなら、このぐらい脂ギッシュじゃないと筆者は認めない。 美味い! 小樽一の看板は伊達じゃない! またひとつ北の大地での胸のつかえがおりたぜい。 すっかり満足して店を出た。 そして、運河に向かってゴロウさんが叫んでいたことは内緒だ。 「オタル、いつでも富良野に帰ってこい!」 なんか基本的に間違ってないかい? |