冬の北海道の旅2012
雪煙
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アンコウ鍋パーティ
ニセコ駅前に出ると、迎えにきていだだくはずの村長がいない。 なにかの手違いかなんて思っていると、 「すいませ〜ん、シャッター切ってくださいますか」 若いカップルから声をかけられた。 『は〜い、1+1は』 「に!」 なんだかやたらサービスのいいゴロウさんであった。 「やあ、どうもゴロウさん」 暫くすると、村長が現れる。 「ごめん、ごめん、まだ列車が到着してないと勘違いしてました」 『いや、なんも、なんも、今回もお世話になります』 車の中で、 「今日さ、寿都の永澤商店で巨大アンコウを仕入れてきたから、アンコウ鍋パーティになるよ」 意気揚々と村長は語っていた。 「ゴロウさん、おかえりなさい」 宿につくと、さっそくユミさんが出迎えてくれた。 滞在する部屋は、夏も連泊した大部屋である(冒頭の画像) 懐かしいっ、ねええ(田中邦衛風) 風呂は村長の息子さん(長男のTくん)と駅前温泉「綺羅之湯」でじっくりと浸かった。Tくんは、若くて(23歳)、キリッとした好青年だ。やはり風貌が村長によく似ておられる。村長も若い頃はこんな感じの好漢だったのだろうなあ(今もですが) ぼくも初めて北海道にやってきたのは大学4年23歳の秋だった。 ち 「ゴロウさん、ニセコまで長万部経由できて正解ですよ。ぼくは札幌から帰省してきたんですけど、半端じゃない混雑でした」 やっぱり、なんとなくそんな気がしていたんだよねえ。 彼は、札幌市内のTV局に勤めているそうだ。”水曜どうでしょう”のあの局でF村Dとかも面識があるらしい(凄い)←どうでしょうのカレンダーホスイ! その後、部屋でゴロゴロしていると、スキー組の皆さんが戻ってまいりました。 『あれえ〜、マエダさん!』 「おおっ、ゴロウさん!」 いやあ、夏以来お久しぶりでした。マエダさんは夏冬というかオールシーズンやってくる常連さんでした。暫し、再会を喜び合う。 「ご飯ですよー」と、村長の声が館内に響いた。 そして、アンコウ鍋パーティへと。 |
まずは、ソイとヒラメのお刺身を堪能する。この新鮮で身の引き締まった舌触りはなんともいえぬ美味しさよ。 |
メインのアンコウ鍋は絶品だ。福島では常磐沖アンコウという最強のブランドがあったのだが原発事故以来食べていない。いや食べれなかったのでアンコウが懐かしくて懐かしくて(TT) |
どうです。このアンキモ。通常は味噌と併せるのだが、キモがあまりにも巨大なので、一部はサッと姿煮にして、そのままいただきました。 マイウ! |
ちょっと煮たアンキモです。まさにホワグラの味、絶品でござんした。そしてワインもガンガン、したたかに酔った頃、いつもの通り、 「ゴロウさん、ゴロウさんの物真似やってよ〜」 のリクエストの声があがる。 |
ご馳走、ワイン、酔い心地・・・・ 富良野に、いやさニセコに黒板五郎が帰ってまいりましたぞ〜 蛍、いつでも富良野にかえってこい〜 2012年の暮れもずいぶん押し迫ってきた。 明日からは強烈な寒波がやってくるらしい。 カンパーい! |
大晦日の朝がやってきた。もの凄い吹雪でゴンドラは動かないみたい。それでもリフトが始動すれば、スキーに行こう。とにかく久々のスキーなので、あの広大なニセコユナイテッド全山共通券じゃなくてもよろしい。 とりあえず、4つのスキー場のうちのひとつ、ニセコビレッジ(旧東山スキー場)のフリーパスをアンビで二千五百円で購入した。破格だと思う。 村長にワゴンで、ヒルトンホテルまで送ってもらった。この時期、アンビに滞在しておられるお客さんは常連なのは当然だが、スキー・スノボの名手揃いだ。ヘルメットを標準装備しておられる方も多い。 なんだか緊張するが、もう後戻りはできない。 ビレッジ到着。暴風雪で下の方のリフトしか動いてないそうだ。とにかくリフトに乗って初心者コースを二回ぐらい足慣らしして、さらに上に向かった。 風が強くて雪煙が舞っている。視界はゼロで、なにより氷点下10℃以下でシバレル。全然楽しくないぞと思いながら、幾度となく転倒を繰り返す。もう、我武者羅に滑っていたゲレンデの特急野郎も見る影もなくビクビクとターンする弱い動物のようだ。 それにこの運動量の凄さは、たいへんなエネルギーを要した。ここらで、よい加減にランチにしようとヒルトンホテルに戻った。もう、体は完全に凍っている。コチコチな動きで階段を昇った。 ホテル2階の某レストランで昼食をとろうとすると、滅茶苦茶混んでいた。すると、とてもスキーに来ているとは思われない服装の優雅なレディがカクテルを傾けている席がござった。 ウイスキーがお好きでしょう♪ まったく下心などございませぬが、 『申しわけございませんが、相席をしてもよろしいですか?』 と問いかけると、どうぞとコワク的な微笑みを見せるお若い婦人よりエレガントな応答がありました。なんだかドキドキするなあ。ぞんがい彼女はフレンドリーだし。 |
オーダーしたのは一番安かった味噌ラーメンなんですけど、完全にインスタントでした。酷いぼったくりだった。これで、1680円はねえべさあ。おごれる平家久しからず。 一応、画像を撮影していると、 「よろしかったら、写真を撮りますか」 |
お嬢さんから申し出がござった。いや、サッポロ一番と記念写真を撮ってもいたしかたないので丁重にお断りした次第である。食後、お嬢に相席の御礼を述べ、風雪のスキー場へとふたたび立ち向かっていく。だってフリーのチケットがもったいないもの。 その後ものたうちまわりながら、ヘタクソなスキーを繰り返す北のサムライであった。そして、猛吹雪もピークに達していた午後の遅い時間、とあるリフト降り場で熱くて甘いドラマが誕生する。もう、豪雪で視界も定かではない。 「すいません、迷ってしまって、どこをどう降りてよいのかわからないのです。初心者ですし」 帽子やゴーグル・ネックガードで、イマイチ年齢がつかめなかったのですが、上品そうなご婦人から声をかけられた。かなり怯えている様子である。 ニセコのスキー場って、たぶん日本一、いや世界一ぐらい広大なゲレンデだと思う。実は筆者もこの超暴風雪で位置感覚がまったくつかめておらず、本当は非常に不安だった。 『ようがんしょ。てえした野郎じゃございませんが、ご一緒にヒルトンまで降りましょう』 というわけで、エロオヤジらしく もっ、もとい、北のサムライらしく、困っている人を座視できない男気を見せた。 迷子のご婦人と一緒に変な名前のコース(ミソシルとかザンギとか)を恐る恐る下降していく。傾斜がきつくかなりリスキーで人気がない。おまけにホワイトアウト。長いし。 |
かなり時間をかけてようやくヒルトン前に辿りついた。 「ありがとうございました。本当にこのご恩は忘れません」 彼女の眼は少し涙ぐんでいた。 そして、感動的なラブに・・・ 発展せず。残念ながら、これ以上はなにもございません。 |
「よく、こんな悪天候で今まで滑っていたね、もう、みんな宿に戻っているよ」 と、宿のワゴンで迎えに来た村長がにこにこしながら呟いていた。 どうやら、アンビにTELさえすれば迎えに来てもらえたらしい。またニセコのスキー場間を循環するシャトルバスが常時走っており、必ずミルク工房で停車する。つまり自力でアンビに戻る手段もあったのだ。 結局、約束の16時まできっちりと滑っていたのは、川崎のボーダー・フジタ氏とへっぽこスキーヤーのゴロウさんだけでした。 |