安達太良山2008山開き







奥岳登山口〜五葉松平ルート〜薬師岳〜山頂〜牛の背〜



峰の辻〜勢至平経由〜奥岳登山口



2008.5.18



 5時半起床・・・

 今朝は気合いが入っている。

 シャワーも浴びて朝食も済ませ、7時には町内会の下水掃除に向かう。この作業は、あっという間に終了したので、そのまま安達太良山へと向かった。
   なんだこの混雑は?駐車場が遥か下まで車で埋まっていた。そうか、今日は安達太良山の山開きか。それで、こんなに人出があるんだ。先週までは閑散としていたのに。記事をUPしてなかったが、俺は4月から安達太良に入山しているので、今シーズン3度目の山行である。
 ”祝あだたら山開き”の垂れ幕を横目にしながら登山口へ向かい歩いていると、
「ご苦労さまです。お気をつけて山をお楽しみください」
 と、いいつつ中年の男と若い女がスポーツドリンクの粉末を配っていた。製薬会社の宣伝か?まあ、無料なんで受け取っておいた。登山口から、馬車道を歩く。陽光が次第に増してきて汗が滲んできたので山行用シャツの袖をまくった。
 
「こんにちは」
 速いペースで若い女性が俺を抜いていく。
『こんにちは』
 俺は軽く挨拶を返した。よほど山慣れしている人なのだろうか。

 最初の登りで息があがりかけている自分が情けなかった。途中、馬車道からそれて五葉松平ルートへ左折した。ゴンドラリフトと並行しながら登るコースである。登山道が荒れていて人気のないルートでもあるのだが、今日は山開きということもあって、ぞんがい人が入っていた。

 登りが過酷になってきた。足が鉛のように思い。はあはあ息をしながら登っていると。

「こんにちは」
 さっきのお姐さんが険しい表情でまた挨拶してくれた。

 しかし、座り込んでいてかなりばてている模様。最初にペースを上げ過ぎて、体がついていかなくなったらしい。以後、俺も各所でそれなりに休憩をとったが、彼女の姿をその後は見ていない。途中で引き返したのか?

 道が険しくなり、雑木で眺望がきかなくなった頃、ここらで俺も一腹するか。あまりにも早い休憩だ。相変わらず俺は登りが弱い。

 携帯灰皿に灰を落としながら、煙草を吸っていると軽装の団体が通過していく。ほとんどの人がスニーカーで女性の添乗員までついていた。

「こんにちは」
 若い皆さんに元気よく挨拶される。
「もう、頂上から降りてこられたのですか?」
『いえ、私もこれから頂上を目指しているんです』
「そうですか。負けないように頑張りましょう」
 団体ツアーの皆さんへ励まされてしまうとは俺も情けない。

 少し本気を出すか。かなり真面目モードで歩き始めるとツアーの皆さんはすぐ道をゆずってくれた。なんかすいませんねえ。
   薬師岳へ到達。ここでも休憩。なんだか休憩が多い。椅子に腰掛けているとゴンドラリフトから降りてくるトレッカーが次々と頂上目指して歩きはじめていた。
 ここから山頂までは、1時間ちょいだなんて思っていると先ほどの団体の添乗員さんがやってきて、
「薬師岳?え、このルートじゃない」
 と、呟いていた。どうやら、くろがね小屋経由と間違えたらしい。初歩的だけど、とり返しのつかないルートミスだ。

 まあ、ここからなら引きかえすより山頂を目指すしかないだろう。景色がよいコースなので充分楽しめると思う。ということで俺は出発。先月末には雪で埋まっていた木道をてくてくと歩いた。
 登山道へかかって通行の妨げになっていた樹木の枝も取り払われて、とても登り易い。常にルートを整備してくれるボランティアの諸氏には頭が下がる思いだ。  
   木道が切れ、足場が悪くなってきたが、雪が消えたので歩き易い。スローなペースでちんたらと登っていく。しかし、本当に人が多い。登り下りの人の喧騒が安達太良連峰の峰々へこだましている。なんて思っているうちに休憩ポイントの仙女平へ到達。せっかくだからここでも休もう。本当に休憩が多くだらしない山行である。
 しかし、本当に入山者が多い。実は安達太良山は、年間30万人も入山する福島県でぶっちぎりのトップで人気のある山なのだ。知人に安達太良の美しさに魅了されて退職後に東京から二本松市へ移住された方もいる。煙草を吸い終え、ようやく動きだす。勾配がきつい斜面から先ほど休憩していた岩場を1枚撮影した。数多くの登山者の姿が望めた。  
   ハイマツの森を抜けると、お〜山頂の乳首岩が見えてきたぞ。登りをスローペースで歩く。それでもいくつかのグループから道を譲ってもらい、足を止めずに歩き続けた。すると雪渓だ。例年この時期は、もっと大きな雪渓があるはずなのにやはり暖冬の影響だろうか、とても小さく感じられた。足元が悪い中をすたすたと歩きクリアする。特に踏み抜き注意もなかった。
 ハイマツの森を抜けると、眼前にさらに迫力の乳首岩が浮かび上がった。先週は、ガスでなんにも見えなかった。というより、視界ゼロで、かなりの恐怖感を味わったのだけど、やはり頂上が見えてるって精神的に楽だ。  
 くろがね方面ルートとの分岐地点に到達。さらに登山者の姿が多くなってくる。なんだかお祭りみたいな様相だ。ここで露店をだして焼きそばとか炒めたらずいぶん儲かることだろう。 
   ようやく乳首岩手前、つまり山頂の乳首岩の真下まで到達する。そこには、たくさんの人だかりがあった。神主さんによる安達太良登山の安全祈願の神事がなされたようだ。テレビカメラもまわっており、なかなかの賑わいを見せている。
 ま、あんまり気にせず山頂の乳首岩へよじ登る。通常のルートではなく梯子が架けてあるポイントから登った。梯子が不安定でスリリングであったが、ようやく山頂へ辿り着いた。今日は、なかなかの眺望だ。裏磐梯・蔵王方面がよく見渡せる。近くにいたおばさんへ依頼し、デジカメで頂上のキタノの姿を撮っていただく。ありがとうございました。  
   天気はよいが、風は強いし肌寒かった。長袖シャツだけではちょっと辛いのでモンベルのウィンドブレーカーをだして羽織る。それでも寒い。せっかくなんで頂上からデジカメ画像撮影開始。雪は残っているが、やはりこの時期にしては少ないと思う。確実に温暖化は進んでいるのだろうか?大丈夫なのか人類は?
 頂上から牛の背ルートを見ると雪渓もなく歩き易そうだった。先週はガスで視界ゼロの恐怖にびびり、このコースを断念した経緯がある。視界ゼロって、いくら熟知しているルートでも怖い。何度も歩いているといっても標高1700メートルの山頂でで登山道が見えない、いや読めないんだぜ。今、自分がどこをどう歩いているかもわからない得体のしれない不気味な現象だと思う。絶対に山をなめたらいかん。  
   牛の背から峰の辻へ向かうルートも眺望できた。なんの変哲もないというか過酷さもない行程だが、一箇所だけ雪渓がルートを阻んでいた。でも、このぐらいの雪渓は愛嬌だろう。慎重に歩けば特に問題はないと思われる。裏手は”矢筈の森”と呼ばれているらしい。森林限界のきわどい地点で森というには少し木が足りないかな?
 そろそろ昼食をとりたいが、頂上付近は毎度のごとく風が強い。峰の辻の岩場あたりで、食事をとろう。頂上から見ていた牛の背まで降りた。乳首岩から降りるとき、安全祈願祭へ参列して登山者の皆さんが一斉に山頂へ殺到したため、渋滞が起きてタイムロスしてしまったが、まあ、アバウトということで。  
 前方を歩いていたのは、父娘のようだ。娘さんは十代半ばぐらいかな。いつもひとりの俺は少し羨ましく思った。うちの女房は登山が苦手だからなあ。
   峰の辻まで降っていると中規模の雪渓あり。登山靴なら特に問題ないが、スニーカー程度の人はスリップして難渋していた。さらに後半は踏み抜きも存在するので要注意。これでも例年より、確実に雪は少ないと思う。もっと雪渓の距離が長くないといけない。気温も頂上より、体感がかなり高い気がするのは気のせいか?
 上を見上げるとこんな感じ。上部から雪が流れ出して、下まで崩れ落ちたようなイメージに見えた。ソリとか担いでくれば、絶対に丸一日楽しく遊べることだろう。横ではなく、縦の見事な雪渓である。ビニールシートでもソリ代わりになると思う。次は早い時間にきて、雪遊びしようかと結構真剣に思ったりするキタノさんだった。  
   雪渓を渡り、少し登ると峰の辻へ到達。でもやっぱり風が強い。ここで、昼食にしよう。山で昼食抜きは思わぬダメージを負う場合が多い(経験者は語る)。人がいない、なるべく奥の方の岩陰でザックを下ろした。 
 山で食事といったらカップラーメンがいい。寒い時には本当に体が暖まり美味いと感じるのは俺だけだろうか。シエラカップへ水を満たし湯を沸かし、熱々のラーメンを作った。おにぎりと一緒に食べるとたまらない美味さだった。もしかしたら、これが食べたいから山に入っているのかもしれない。   
   風が強くて肌寒いけどラーメン効果で体が暖まった。ということで下山するか。ふとくろがね小屋ルートの方を見ると巨大な雪渓に覆われていた。先週、そちらを歩いたときと、それほど変わっていない。逆に今歩いている峰の辻〜勢至平経由ルートにはほとんど雪は見られなかった。
 道幅の狭い登山道を足早、いやほとんど走っていたかも知れない。途中、昨日の雨で粘土状になっている部分が何箇所かあり歩き辛かったが、かまわず突っ走る。ご老体のグループを追い越したとき、そんなに急いでどうしたのと声をかけられたりもしたが、トレーニングですとのみ答えた。  
   とういうことで、あっという間に馬車道との分岐へ到達した。ここの岩場で一服していると馬車道から下山してくるいろいろなパーティから挨拶される。登山をする人は本当に礼儀正しい。その後も、ほとんど駆け足で下山してゆく。 
 正規のルート(馬車道)ではなく、旧道をショートカットしながら下山すとあっという間に登山道近くの烏川の渓谷へ辿りついてしまう。旧道は、ある意味本当の登山道(山道)なので、それなりに険しい。俺も樹木の根っこで滑ってしまい、何度か転倒しそうになったりもしたが、これぐらいが楽しいのだ。  
 登山口のゴールまでもフィニッシュをかけるようにペースを上げた。黙々と歩く(走る)のみ。

 ゴンドラリフト見えてきて、発着のカ〜ン、カ〜ンという金属音が近くで聴こえた頃、奥岳登山口へと到達した。

 実は今シーズン3度目(4月から、そして4日後には4度目)の安達太良山行なんだけど、つくづくよい山だと思う。



FIN



2008.5.24UP



記事 北野一機



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