北海道ツーリングストーリー



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 とくに急ぐ必要なし。

 今日は札幌へ出る予定だ。ここからは比較的近い。米をとぎ、ゆっくりと朝食をとる。相変わらずおかずは缶詰オンリー。しかし、ほかほかご飯に缶詰ってよく合うぜ。ご飯を美味しく平らげた。そしてヨッシーがパーコレーターで入れたコーヒーをヒッチハイク氏やシャドウの若者ライダーにも配った。

 雄冬冷清水で体を拭く。朝から尋常じゃない暑さで既に汗まみれになっていたからだ。冷たいタオルが実に心地よい。と思った頃、クラクションが鳴った。灼熱の太陽が眩しいが道路を見上げるとシャドウ乗りのあんちゃんが、なんともいい笑顔でお辞儀をしながら出撃して行く。俺は心の中で旅の健闘を祈りながら手を振った。いい旅を。

 俺がテントの撤収作業をしている頃、ヨッシーは清掃業者のおっさんと話し込んでいた。
「こんなことをしていられるのもひとりのうちだけだべ」
『いやあ、実は子供が3人いるんですよ』
 おっさんは爆笑したそうだ。

「向かいの海、潜ってみろや。ウニやアワビがザクザクだぞ」
『そいつは密漁じゃないですか』
「いや、海水パンツに入る分は密漁とは言わねえよ」
 とおさっんは豪快に笑ったとか。

 ただならぬ暑さに辟易しながらも水筒に雄冬冷清水を詰めた。準備が整う。よし行くか。ヒッチくんともお別れだな。元気でな。彼は既に道路脇でヒッチハイクの体勢へ入っていたのを確認しながらアクセルをあげる。

 しかし、途中でラジオを忘れたことに気づき、雄冬キャンプ場へ引き返すとヒッチくんの姿はどこにも見あたらない。時間にして10分程度だ。もうヒッチハイクに成功したんだ。実に見事な腕だ。

 留萌方面へ少しだけ戻り道道94から北竜町へ突入。日本一のひまわり畑を見学する。もの凄いひまわりの数だが、あまりの暑さにバテまくる。

 北竜町はバブル期のアホみたいな故郷創生1億円がばらまかれたとき、ありがちな工場誘致やリゾート開発を一切しなかった。偉いところは町の若者の意見を取り入れ、地道に米の品種改良に取り組んだことだ。

 残念ながら日本の頑迷なオヤジ社会は若い人間の柔軟な発想を受け入れようとしない。むしろ軽視する傾向すら見られる。ある自治体ではオヤジどもの安易な発想で砂のオブジェを造った。しかし強風のため一夜で一億円のオブジェが跡形もなくふっとんだそうだ。馬鹿な話である。

 さて北竜町の米の名は「田からもの」。ほしのゆめ・きらら・はなぶさを混植させ独自のブランド米の開発に成功した。その味は天下の魚沼産コシヒカリを凌駕する美味しさだといわれる。今日、国内どころか海外からも北竜町への視察が絶えないそうだ。素晴らしい。

 北竜町を出発し、R275をひた走る。それにしても暑い。途中、浦幌あたりでは37度近くまで気温が上昇していた。とにかく道の駅を見つけるたびにクーラーで涼むという作戦をとり続けた。今朝、水筒に詰めた雄冬冷清水を取り出し飲んでみると、まだぎんぎんに冷えていた。さすが!

 札幌に突入。さすが北の大都会。高層ビルが立ち並び、道も混んでいた。今夜はビジホへ泊まるつもりだ。碁盤の目のような札幌市内を彷徨う。右折禁止も以前より確実に増えている。そしてようやく予約していた狸小路近くのビジホへ到着した。

 このホテル、低料金のわりにクーラーがよく効いていた。今まで灼熱の野外で苦しんでいただけに本当に天国気分になる。さて今夜は繰り出すか。

 初めて札幌を訪れたときから利用している居酒屋「魚屋一丁」へ入る。ここは、スキーや仕事、あるいは職場旅行で札幌入りした際によく利用していた。そして酒や新鮮な刺身などの料理をガンガン飲みまくり喰いまくる。いやあ、実に心地よく酔った。

 千鳥足で札幌一美味いといわれる「五丈原」にて、1時間半も並んで噂の味噌ラーメンを食べてみる。

 しかし、もはや泥酔状態にて、その味もわからず。ヨッシーは美味いと言っていたと思う。

 暑さと旅の疲れで完全にグロッキーだ。

 おやすみ!



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