第1章 突撃裏磐梯!



レイクラインにて   


 突撃裏磐梯!


 休みなんて半月以上なかった。連日の遠距離通勤から疲れ果てて自宅のドアを開ける。

『ただいま!』
「おかえり、あら早かったのね」と妻の一言。
『ああ、こう休みがないと身が持たんよ』
「家のローンとかあるんだから、くれぐれも短気起こさないでね」
『分かってるよ、ビール出して』
 なんて、すっかりいつもの光景になっていた。
『そういえば明日から2日間代休もらえるんだ』
「はいはい、『どうせキャンプ行かんと身が持たんでしょ』あなたが北海道から帰ってきて来てから、これで3度目よ」
『そうでしたか?』

 ネクタイをはずして、ダークスーツからジャージへ着替えた。

 と言うわけで、明けて翌日。北海道ツーリング「北のサムライ」の佳境の部分を午前中にしっかりと書き上げ、めでたく完成。パチパチ。キャンツーへ行くぞー!


 この夏の北海道ツーリング以来、荷物はいつだってキャンプ旅へ出撃できる態勢が整っている。まさに「常在戦場」を実践する北のサムライは健在なり!

 家には動物しかいない。「コロ、ちょっとキャンプツーリングしてくるわ」と犬の頭を撫でてスロットルあげた。この時期なら紅葉だろう。ならばお膝元の裏磐梯だな。というか地元ではそればっかという噂もあるが?

 コロの見送りを受け愛機ゼファーのスロットルをあげた。


 


うな重+蕎麦セット
 天気は本当に素晴らしい。一片の雲もない青空だ。

 気温も程よくあがっている中、R115を快走。しかし腹が減った。たまたま目に入った和食レストランで昼食をとることにした。

 やや風邪気味なのでスタミナをとろう。贅沢だが「うな重+蕎麦セット」をオーダーした。1380円也。まあ安いかな。

 出てきた蕎麦が白い。そういえばこの夏の北海道ツーリングで大阪のコマンダーさんと食べた中標津の蕎も白かった。併せて頼んだカツ丼のボリュームが・・・


 ・・・凄過ぎた。思わず残してしまったけど(コマンダーさんは流石に豚丼を完食)

 蕎麦の見た目は白石のウーメンのようだが、非常にコシがあり美味いと思った。また鰻も小さいながらも、モチモチした食感がありなかなかいける。

 しかし、量がそこそこなので完食できた。今の僕はこのくらいが丁度よいのだ。

 腹も作ったし出撃しよう。平日の割りに意外に混んでる土湯峠をせっせと昇る。しかし実にいい天気だなあ〜



 ワイディングをマイペースでクリヤーしながら行く。いつも休憩している「道の駅つちゆ」は、なんとなく通り過ぎてしまった。

 土湯トンネルを抜けると会津地方だ。ここからの風景や気候が劇的に変化すると僕は思っている。4月後半、キャンプ初めに訪れた時の右画像のパーキングの周囲は雪の壁だった。実際に気温が先ほどとまるで違い、かなり肌寒くなってきている。装備を快速旅団の防寒ジャケット・ズボン・グローブにすべて切り替えることにした。

 煙草を1本吸い(携帯灰皿は必ず持参してます)ふたたびアクセルをあげた。

土湯トンネル近くのP


レイクライン手前の橋から
 周囲が紅葉真っ盛りという素晴らしい景色の中、R115からレイクライン方面へと右折した。

 以前から関心があった河原が気になり橋の上で停車させてみる。逆光で見づらい画像だが、非常にキャンプ適地だと目をつけていたポイントだ。久々に渓流釣りも楽しめそうだし、焚き火をしてもここなら苦情はこないだろうなんて、しばし思いにふけるなり。


 レイクラインへ入り、紅葉を楽しみながらのんびりと走っていると練馬ナンバーのツーリングライダー集団がもの凄いスピードで、手当たり次第に追い越しをかけていく。この暴走行為にしばし唖然。だから群れるのは苦手だ。

 やってることは珍○団とまったく変わんないじゃん。こういうヤツラと一般ツーリングライダーも一括りにされ、いつまでもオートバイの社会的地位は向上しないのだろう。

秋元湖


 しばらく走ると秋元湖だ。地味だけど清楚で美しい蒼の湖だといつも感じている。自分のタイプの女性みたいに(爆)。

 しかし、このあたりの紅葉の美しさは際立つ。あちこちで車を停車させて写真を撮っている行楽客の姿が目立った。このページ冒頭の紅葉の画像もこの付近で撮影したものだ。
                                  



中津川レストハウスにて
 中津川レストハウスにてトイレ休憩。

 観光バスが並んでいて凄い行楽客の数だ。GWの時はあまりの人出の少なさにびっくりしていたが、やはりこの季節の裏磐梯の人気は健在だった。

 しかし寒いな。熱い缶コーヒーの封を切り、飲みながらあたりを歩いてみる。散策路もあり、楽しめそうだがライダーブーツなので控える(GWでは靴擦れになったし)。

 少しだけ歩くと深い渓谷が見える。しかし本当に深い。人を絶対に寄せつけないぞという厳しい孤高の雰囲気を強く感じた。


桧原湖ママキャンプ場


 レイクラインの紅葉とワイディングをしっかりと楽しんで桧原湖ママキャンプ場に向かった。

 キャンプ場の手前でどこかで見たおばさんが歩いている。よく見ると管理人のおばさんだ。

『こんにちは』
「ありゃー、北野さんかい。この寒いのにキャンプするの?どうせ今日は誰も居ないから勝手に好きなとこにテントを張っていいよ。バイクも中まで乗り入れていいから」
 4月から今シーズン既に3度目の利用なんで、すっかり憶えられているのだ。おじさんにも挨拶してサイトの中までマシンを突入。

桧原湖ママキャンプ場着



ウインナーを炒める
 陽が暮れてきた。早くテントを立てないと。もう吐く息も白くなるほど気温が低下している。素早くテントの組み立て完了。

 すぐにバーナーでお湯を沸かした。こんな時は珈琲酎のお湯割りっしょ。しっかりと持参してきました。ぬかりはないぜ。待つこと暫し。ようやくお湯が沸騰してきた。そしてホット珈琲酎をゴクリうめえ〜、ホント北の大地の味がするよ。冷えた体が芯から温まる。

 さて、ツマミはいつもの通り、ウィンナーを炒めて塩コショーするだけの簡単なものだ。でも美味いんだなあ〜これが!


 珈琲酎をガブガブとおかわりすると心地よく酩酊してくる。この雰囲気がたまらない。まったくキャンプは、これだからやめられないのだ(笑)

 続いて、味付きホルモン「こてっちゃん」を焼いてみる。香ばしい香りがテントの前室に漂う。美味しいことには間違いないが、セイコマ限定(北海道)の塩ホルモンが無性に食べたくなってきたので困った。

 本当にセイコマの塩ホルモンは美味しかった。昨年、北海道ツーリング中に珈琲酎とほぼ同時に発見した逸品である。

こてっちゃん



電気ランタン
 テントの天井に電気ランタンを吊るしたので煌々とした灯りがとても眩しい。しかし、この懐中電灯も兼ねるランタン、電気だけあってニッケル乾電池でも3晩くらいしかもたないからショートツーリングでしか使いようがない(北海道ツーリングで証明済)

 寒いのを我慢して外へ出ると満点の星空だった。キャンプには星空が一番似合うのだ。北海道ツーリングではまともな星空を2年ぐらい見てないし。

 外に出たついでにバイクのミラーへかけていたサイココンパスを見る。すると3度。ひぇ〜慌ててテントの中へ逃げ帰った。


 考えてみれば、ここは標高千メートル近くの山岳地帯だ。そして年間の平均気温も北海道と変わらないし、日本有数の豪雪地域でもある。かなり体が冷えたので、お湯を再び沸騰させ残りの珈琲酎で割って飲む。そしてラジオをまわしてみると・・・

 なんとHBCラジオ(北海道放送)にピタリと周波数が合う。おー懐かしいぜ。天気予報でも釧路支庁、根室支庁、網走支庁とか流れてるし。さらに晩秋の道内各地のイベント情報なんかも・・・かなり感動もんだ。

 さて、そろそろ寝るか。マイナス5度対応のモンベルのシュラフへ念のためシュラフカバーを装備した。万全の防寒対策をして横になるといつの間にか爆睡してしまう。

 おやすみなさい。