立山連峰の山並







 5月2日

 翌朝・・・

「キタノさんには野営地だけ教えて、金沢に置いてけ堀にしちまおうぜ」
 いちさんの悪魔のような謀略もあったそうだが、とにかく筆者は無事回収されて、金沢を脱出。そして、高速道を駆使しながら富山へ舞い戻った。

 筆者は、もう、どこをどう走ったなど覚えてございません。なんだか、蒸し暑いし、ちと二日酔い気味でだるかったし。 
 Let it be・・・

 なすがままに北陸のあちこちをさすらいました。編成は、四輪2台、二輪2台の混成旅団であった。

 辿りついたポイントは、富山県砺波市花園町という、生まれてこの方、聞いたこともないところだった。
 まあ、とにかくチューリップが綺麗なフェアを開催していたのだが、二輪駐車料が4百円で、入場料千円は、ちと高くないかい?なんて、独りごちつつも富山名物”マス寿司”なるものを喰らう。
 ひとりでは、食べきれないので、いちさんにもわけたんだけど・・・

『いちさん、なんだか喉にひっかかる異物があるんですけど』
「キタノさん、もしかしてビニールも一緒に食べてねえ?」

 うっ、食べたと思う・・・

 かなりショック!本当にビニールまで食べていたことは内緒だ(汗)

 マス寿司、恐るべしっ・・・
   博物館前の昔のポストを見つけて懐かしいなあ、なんて思いにふけるもすぐに飽きた。

 出口付近に来ると、いちさんも同様の様子で佇んでおられた。
 とりあえず会場を出て、バイクのところへ戻りますかということになり、駐車場へと。

 遠くに中華料理屋の看板が・・・

『なんだかラーメンと餃子が食べたいです』
 筆者がボソッと呟くと、
「本当にそうだねえ」
 いち先輩も激しく頷いておられた。

 なんてやっていると、macさん、ユウコさん、Nagaさん、ともちゃんたちが、「お待たせ」と帰ってきたが、四輪の駐車場はさらに奥だった。

 ラーメンが食べたい。で、いちさんとふたりでラーメン屋(中華料理屋?)の脇にマシンを横付けして四輪組を暫し待つことにする。

 ところが・・・

「長い間お世話になりました。当店は平店いたしました」

 ガ〜ン

 やってないの?辞めちゃったの?凄い達筆な文字なんだけど、”平店”じゃなく”閉店”だろうと、いちさんが気づいた。確かに、けど深い意味があるやも?店を閉めて土地を平に整地するとか?

 その頃、四輪組がやって来て、それは絶対ないという意見だった。ただね、筆者が凄いと思った張り紙は・・・

 ”中高年割引”という掲示を見つけたことです。俺だって、熟練の旅系ライダーなんだから、目のつけどころが素人ツーリンガーとは違いすぎる。そして、筆者も当然、その中高年という範疇(ちなみに自分はメンバーの中では、ともちゃんの次に年少だった)に入るだろう。閉店する前に来たかった。

 しかあし・・・

 よく見たら、

 ”中高生割引”でした・・・

 全員が脱力して、さあ、行こう、〇カヤマへという声があがる。


 筆者は、思わず、 

 おお、北のサムライ、ついにオカヤマにまで行く・・・

『これから、関西を通り越して岡山ですか?すげえ旅になりそうですね〜』
 しきりに感動していると・・・

 ゴカヤマ(五箇山)ですっ (-_-#)

 筆者のあまりの天然ボケぶりに、全員の怒りの声がかえって参りました。

 怖え〜

 合掌造り、世界遺産の富山の五箇山でしたか?今回のルートをまったく把握してなかった筆者であった。

 さて、クルマ2台、バイク2台の混成旅団。チューリップフェア会場から、全機出撃。R156をひた走り、五箇山国民休養地キャンプ場に向かった。天気は暑くてジャンパーを腕まくりするぐらいの状況になった。やがて道幅が狭くなり、くねくねとしたタイトコーナーが多くなってくる。

 すげえ、山の中だ。

 相山ダムという巨大なダム湖周辺に到達すると覆道、覆道の連続になる。しかも覆道の中で平気でカーブがあるし。これは2008年に筆者の神経構造をおかしくしたシチュエーション(日勝峠)とまったく同じ状況だ。気分が悪くなり、速度を抑えながら走ることにする。後でmacさんが、キタノさんの姿が急に見えなくなったから、転倒したのかと思ったとおっしゃっていた。

 まあ、それでもなんとか持ち直し、”道の駅たいら”で小休止。もう間もなく五箇山のキャンプ場へ辿りつく。しかし、山の中過ぎてスーパーマーケットなどないみたい。

 ユウコさんが、機転をきかせて道の駅で聞き込みをし、この先に〇〇商店というお店なら、アルコール始め、たいがいの物は手に入るという情報を入手された。

 〇〇商店で、今宵の買い物を済ませ、五箇山へ向かうも手前から大渋滞、バイク隊のいちさんと筆者はすり抜けを駆使しながら、お先に到着。

 冒頭の画像、どうです。この見事な立山の眺めは。暫し、言葉を失う。しかし、駐車場の係のオジサンが、この感動をすべてぶち壊してくれました。
「駐車料金払って」
「キャンプ場を利用するから、ここは通過するだけです」
「だから駐車料金払って」
「今、仲間の四輪がやってくるから、少し待ってください」
「でも金を払って」
 いちさんと係員との押し問答が暫し続いた。キャンプ料金を払うキャンパーから駐車料金を取ったら、通行料払えの野伏せりみたいな二重徴収になるだろう。やっぱ内地の観光地って金だけか、嫌だねえ〜とこのときは少しだけ思いました。流石に温厚ないちさんもムッとしていたが、ようやく係員も折れた。

 やがて、四輪組がやってきて、Nagaさんが全員のサイト料をとりあえず払った。
 暫し、世界遺産の合掌造りの撮影タイムとなった。いやなんとも風情のある風景ではないか、すっかり堪能する。

 そして、人ごみの多い相倉合掌集落を突き抜け、キャンプ場へと向かった。
 
   炊事棟やトイレのあるサイトは、それなりにテントが立っているので、一段下のサイトで野営しようということになり、移動する。やや地面が荒れていたけど我々の貸切状態となった。

 さっそくテントを設営した。ビールを飲みながら。
 サイト利用料1人5百円。トイレは水洗ウオッシュレット付き。前言撤回、素晴らしいキャンプ場だ。駐車場係のオジサン以外は?

 「熊出没注意」の看板もあるが、筋金入りのホッカイダーぞろいの集団は微動だにしなかった。

 というより、熊が現れたら、キタノさんに戦ってもらうということで・・・

 どこからか、そんな声が聴こえてきた。

 おい!

 そのとき義経、少しも騒がずう〜♪
 テントを張り終えて、ビールタイムでわいわいやっていると、そろそろ17時もまわってきた。温泉に行きますかという話になり、まだ飲んでない女性陣運転のクルマ2台に便乗させていただく。
ゼファーとmacさん 
   まあ、せっかくだから相倉合掌集落を散策路から望んでみようということになった。

 結構な山道をえいこらさと登っていく。ビューポイントに辿りつくと絶景かな。さすが世界遺産の合掌集落。暫し見入ってしまった。

 画像は、Nagaさんと筆者。
 眺望を満喫し、車で暫し進むと国民宿舎五箇山荘へ到着。駐車場から、また登りを歩いた。今日は意外に運動量が多い。

 ここの温泉、ぞんがい混んでなかったし、いい湯だった。
「本当に最高だね」
 Nagaさんが、しきりに呟いていた。露天風呂もほぼ貸切状態。旅や野営の話題で盛り上がりながら、じっくりと温泉を堪能しまくりキャンプ場へ帰還する。 
 そして、いちさんの焚き火台でシシャモやサバを炭焼きにした。いや、これが本当に美味しくてびっくり。軽く塩をふりかけて炙っただけなんだが旨い。

 全員が大喜びの炭焼きのオサカナでした(ちなみにいちさんの差し入れ)

筆者といちさん
 macさんも焼き方に加わり、お酒も入り、もう大満足。サバの炭焼きうますぎる。ともちゃんの五箇山の豆腐も絶品だった。

 その後、パビリオンに戻り、宴は最高潮に盛り上がっていくが、そろそろNagaさん劇場へ(撃沈態勢)。しょうがねえなあと北のサムライがお手洗いに彼をつれて外にでた。

 あっ、あれ?

 北のヨッパライがNagaさんを介護している。春の珍事だ。

「Nagaさん、お好み焼きが食べたい」
 椅子に座ったまま、ひっくり返っているNagaさんに、みんなからのリクエスト。ほとんど半落ちで彼はお好み焼きを調理しておりました。

 筆者も並行しながら鯛のアラ汁を作り始める。いちさんに味見してもらいながら。
「味が薄い」
 と、いち隊長から暫し鋭いチェックも入る。

 少しレアなお好み焼きの完成と同時にNagaさんは撃沈してしまいました。

 Nagaさんが、完全に爆睡している頃、筆者のアラ汁も完成。
「キタノさんが、きちんと料理している姿を初めて見た」
「キタノさんが、こんな繊細な味を出せるの」
 など、驚嘆の声があがるほどの出来栄えでした(自分でいうな!)

 夜もふけてきて、いちさん、ユウコさん、筆者が残った。

「そろそろ寝ますか」
 と、いうことになり、全員がテントの中へ・・・

 がっ・・・

「いっ、いや〜、やめて、痛い!」
 いちさんのテントからの絶叫が五箇山に響き渡っていた。

 ユウコさんは、まさかの、〇モタップ状態?

 と、妄想しまくっていたそうだ。

 真相は、いちさんのテントになぜかいた筆者が、いちさんから首を絞められていた。近年の筆者は、弱って衰えきっているので、いちさんの剛腕に抵抗する術などない。

 やがて、夜のしじまがやってきて、気絶していた筆者がふと蘇ると、同じ毛布の中に仲良くならんでいるふたり。いちさんに添え寝してもらっている深夜2時頃の驚愕の出来事。

 ひえ〜、ゾンビ〜

 慌てて、自分のテントに戻る北のサムライの影が、五箇山の月明かりに鮮やかに照らされていたんだとさ。



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