北海道ツーリング2015















雨音はショパンの調べ



 昨夜は、心地よく酩酊し、すっかり熟睡した。そのせいか、ずいぶん早くに目覚めた。まずは管理棟で洗顔し、髭を剃る。ジェントルマンは、身だしなみが大切だ。

 いつものように湯を沸かし、パンとコーヒーの簡単な食事を済ませた。現在のところ雨の気配はなさそうだ。今のうちにテント・タープの撤収をしちまおう。そして、さっさとパッキングも済ませた。

 ゴミ捨て場で、昨夜ステッカーを進呈したご夫妻と再会する。

「昨日の永久ライダーステッカー、フェイスブックに掲載したら、いいですねえっていう反応が凄かったんですよ。ありがとうございました」
『こちらこそ、シールドを直してもらっちゃって、本当に助かりました。またどこかでお会いできる日を楽しみしています』
 ぼくがそういうと、ご夫妻はとてもいい笑顔を見せ、頷いていた。

 お隣のライダーさんにも挨拶をすると「お気をつけて」と返していただく。なんだかとても清々しい気分で愛機のスロットルをあげた。

 行先は少し迷った。和琴方面へ向かうか、道央道南方面にするか。結局、ここで道東に戻るより、南下しよう。終盤に和琴方面を目指したら、去年と一緒だ。ワンパターン過ぎる。

 ナビだよりで、記憶に自信がないのだけれど、中富良野から凄い山の中の道へ入った。多分、道道135だと思う。暫く進むとR452へ合流する。そして、桂沢湖で右折し、ダム沿いの道を走った。湖畔のキャンプ場はいつ見ても綺麗だ。いつの日か利用してみよう。

 三笠市街地は、とても閑散としていた。お盆が終わったからなのだろうか。岩見沢市内に入った。R12を快調に南下していく。江別市を通過し、札幌入りすると流石に渋滞が激しかった。しかもなんか蒸し暑いし。

 白石区を過ぎ、大都市札幌中心部からR230に入り、定山渓を目指した。





 24時間トイレ解放の道路情報館あたりまで来ると、湿度が劇的に低くなり晴天となった(今のところは)。爽やかな気分で定山渓の温泉街を抜け、豊平峡(ほうへいきょう)温泉に到着した。ちなみに豊平川(とよひらがわ)の上流である。

 実は、今年の正月にアンビの村長に連れて来てもらったんだけど、残念なことにデジカメ電池切れで画像が撮れなかった。ウェブマスターとしては、いい温泉なだけに画像なしはかなりがっかりである。というわけで、今回、リベンジにいたった次第なんです。





 ここの温泉渓は、インド人シェフがつくる本格インドカレーでも有名なのだ。温泉に入る前に食べようと思ったら、レストランでは行列ができていた。お客さんは、ほとんど地元、まあ道内の観光客の皆様が多いと思う。

 これだけ北の大地を旅している筆者でさえ、村長に案内してもらうまでまったく知らなかった。ちなみに定山渓温泉には、20代の頃、スキーのついでに2度ほど宿泊した記憶がある。

 さて、カレーについてくるナンの味も秀逸だ。パリッとした表面と中のやわらかい食感のナンの秘密は、タンドール釜にあるらしい。カレーは辛さの最高ランクの5辛のチキンカレーをオーダーしてみた。でもそれほど、苦痛を感じるほどの辛さではなく、むしろ爽やかな青春の辛さだった。チキンの旨みも効いたナイスなカレーの味に満足する。ちなみにお代わりナンは210円なり。正月に来たときには、スエヨシくんがお代わりしていた記憶がある。





 内湯の材料は、青森ヒバを使用しているそうだ。そのせいか東北の山奥にある秘湯のような渋くて味のある雰囲気を醸しだしていた。

 源泉温度52℃、ナトリウム-炭酸水素塩・塩素物泉。淡黄色透明、無味・無臭。札幌市内の温泉では、唯一飲泉が可能である。





 続いて露天風呂に入る。人肌にふれる部分では、日高・十勝で採れる丸みのある岩を使い、人肌にふれない部分では羊蹄山の麓で採れる荒々しい岩石1千トン分を使用するなど随所にこだわりがあった。なにより、実に心地よい湯加減なり。ふにゃふにゃになるまで、露天風呂を楽しんだ筆者である。

 ちなみに地下鉄南北線真駒内駅から無料送迎バスが出ているので、かなりお得であろう。

 帰りがけ、PAはほとんど満員御礼だった。本当に人気がある温泉施設なのだ。なんとなく大時代的なレトロ感がいいと筆者はふと思う。そして、ゆっくりとスロットルあげる。気温が今度は、かなり上昇している。あまり心地よくないが、雨よりはずいぶんマシな真夏らしい熱風が筆者の体へ激しく吹きつけてきた。





 さて、本日はどこで幕営しようか?そういえばお気に入りの支笏湖畔ではまだ一度もキャンプしたことがない事実に気づく。いい機会だ。湖畔のモラップキャンプを利用してみるか。

 ここで中山峠を越え、支笏湖に向かうか。あるいは、やや道を戻り、真駒内方面から支笏湖を目指すか?距離的に微妙だ。MAPを見た感じでは後者の方が近い気がするんだが悩む?いつまで考えてもしょうがないので、よし、真駒内方面に引き返して、R453にて支笏湖に向かおう。もう、時間もかなり押してきた。

 滝野峠付近は、どんよりと曇っていた。そして、支笏湖が近づくにつれ、ガスがかかってきて、小雨が降っている状況になってきた。気温も劇的に低下してきた。また雨か。実に気が滅入る。あまりにもお天気が、めまぐるしく変わり過ぎる。雨の支笏湖の湖畔の道をもくもくと走るとモラップの看板が見え右折する。

 16時半、モラップキャンプ場着。物置小屋のような管理棟で、学生さんかなあ?係の青年に受付を済ませた。まあ、基本的にどこにテントを張ってもいいそうだ。しかし、利用料が720円で、この施設かいといった感は否定できない。以前は確か500円のワンコインだったと思う。そして17時には、ピタッと管理棟が閉鎖されていた。

 利用者は、ファミキャンのテントがぱらぱらと張られていた。ライダーは皆無。天気は今にも降りだしそうな曇天。さらにカーカー騒ぐカラスがあちこちに集まり、虎視眈々とキャンパーの荷物を狙っている。なんだか13日の金曜日みたいなロケーションなのだ。やっぱり気が滅入る。





 なんて思っていたら、また雨が降りだして来た。はやくテントを張らないと。今宵はタープを張らずに旧管理棟の軒先に荷物を置かせてもらった。これで荷物を雨に濡らさずに(ビールを飲みながら)幕営できた。旅が長くなってくると、こういう悪知恵ばかりはたらくようになる。

 夕食は、まるちゃんのインスタントラーメンしょうゆ味とご飯少々。美味しかったのだけれど、かなり手抜きな食事だ。まあ、腹がふくれりゃあ、すべてよし。そして、サバ缶をおかずに焼酎のお湯割りをガブガブと飲みまくり、したたかにヨッパになれりけり。

 いつの間にかテントの中に入って寝てたんだけど、ボツボツとフライシートに雨音があたる音が聴こえていた気がする。

 雨音はショパンの調べ♪のような夜だった(それにしても古い)

 というより、もう雨は勘弁してもらいたい。旅の初日からまったく雨が降らなかったという日など1日もなかった。



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