北海道ツーリング2015











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深山幽谷



 朝6時ぐらいに起床した。明け方に何度が目が覚めたのだけれど、テントやタープに叩きつける雨音がずっと聴こえていた。外に出るとやっぱり弱い雨が降っている。

 パンと熱いコーヒーという簡単な食事を摂っているうちになんとか雨があがった。でもラジオの天気予報だと本日も全道的にあんまりお天気がよくないみたい。

 もう、無理してなにがなんでも野営にこだわる理由などない。ニセコのアンビシャスで、明日の最終日までお世話になることにしよう。

『もしもし、ゴロウですが、今宵も宿泊させてもらいたいんですが』
「おはようございます。ゴロウさん、今どこ?」
 村長の元気な声が返ってきた。
『洞爺湖のグリーンステイキャンプ場ですけど』
「それなら、11時15分にかに太郎で待ち合わせをしよう。かにめしを食べてから沢登りをしましょう。オオタさんも来てるしさあ」
『了解しました』
 村長が、そうおっしゃるなら、白老付近の天候は大丈夫なのだろう。ちなみにオオタさんとは、札幌在住の常連さんで、筆者とも3年前から面識がある実にパワフルな方だ。





 テントやタープの撤収作業を済ませた。陽はなんとなく照っている。ゴミ捨て場にきちんとゴミを処理してゼファー出動。

 今度こそは、オロフレ峠をきちんと越えて、白老町までやってきた。天気は悪くないし、気温は適温ぐらいか。少し早目に到着したので、暫し村長たちを待った。

「ゴロウさん、なんでここにいるの?」
 オオタさんは、なにも村長から経緯を知らせれてないようで驚いていた。

『どうも先日はご馳走様でした』
 かに太郎の店主のオジイサンに告げたのだが、筆者のことはまったく覚えてなかった。

 そして、またもかに太郎の”かにめし”を喰らった。相変わらず美味しい。ちなみにSWツーリングの最終日にアンビに泊まった友人のNagaさんもかに太郎に立ち寄ったそうな。

 謎が深い食堂だけど、かにめしは、リーズナブルで本当にお勧めです。





 食後、村長の車の後について白老の山間部へ入っていく。ダートに入る前にゼファーを停めて車に乗り、さらに奥地へ。やがて車も駐車して歩いてまた奥へ。まさに深山幽谷だ。大雨による増水被害の復旧工事現場みたいなところも過ぎ、橋の横から飛生川に降りた。

 魚の泳ぐ姿も見えて、とても綺麗な川だ。ここからリバートレッキングがスタートする。筆者の長靴は、ほとんどスタート地点から浸水してしまったが、まあ特に支障なくどんどん進んでいく。

 オオタさんは、かなり沢慣れしており、敏捷な動きをされていた。ロープを使って崖をよじ登ったり、岩から岩へ飛び移ったりとかなりアクロバットなシーンもあったけど、楽しみながら沢を登る。





 ナガヤマくんルートという流れの速いポイントをトラバースしたとき、一瞬筆者も流されそうになった。その姿がとても滑稽だったらしく、オオタさんが爆笑されていた。その表情が、アンビHPのツアー履歴の動画の表紙に出ていておもしろかった。

 美しい滑床が長く続いたり、エメラルド色の水面があったり、とても変化に富んだ川だった。

 天気が予報ではあんまりよくなかったらしいが、どんどん晴れ間が広がってきた。たいがい筆者が離れるころになると好天になるのだ、今のところは。というのは、強力な台風が北海道に迫っており、フェリーが欠航になる恐れすらでてきている。まあ、そんときは、アンビに帰ってきて連泊すればいいかあ。←なんか楽天的なゴロウさんなのである。





 「飛翔の滝」前にて。大小の滝がたくさんあり、今となってはどれがどの滝だったかなど、ほとんど覚えていないけど、とにかくマイナスイオンたっぷりでござんした。

 オオタさんが、後ろ向きになって長靴を岩の上に乗せてぴょんぴょんやっていた。最初はおもしろいことをしているなあと思っていたら、長靴から水抜きをしていたのだ。筆者も真似をしてみたら、よく水が抜けて行って心地よい。

 しかし、すぐ深みにはまって浸水して、水抜きをしての繰り返しだった。





 折り返しポイントあたりで村長がとても綺麗な蝶を発見した。なんという種類なのか昆虫にあまり詳しくない筆者は見当もつかない。ただこれほど美しい蝶を観たのは初めてである。後で、ネットで調べてみたのだが、「コムラサキ」なのかなあ?

 なんとなく南方系の蝶のように思えた。もしかしたら台風で、南の島からここまで押し上げられて来てしまったのか?それはないか。

 このあたりで、岩の傾斜がきつく動けなくなってしまったのは内緒だ。でもその姿を村長はしっかりと撮影していたりする。





 この川は「カワガラス」が多かった。ちなみに体格が小さくカラスの仲間ではない。日本各地の山地の渓流に生息する。つがいの形成期には一夫二妻行動をとることもあるようだ。脚が頑丈で、川底を歩きながら、水中で捕食する。なんとも愛嬌のある小鳥なので、見つけると筆者は、つい嬉しくなってしまうのだ。

 岩場に座って談笑しながら昼食を摂った。

 ズトーン!

 凄い音がした。何と近くに座っていたオオタさんが、岩ごと1メートルぐらい下に滑落しているではないか(驚)

 でも奇跡的に怪我はなかったので、本当によかった。

「本当によかったよ。うちのヘルメットが壊れなくて」
 村長の一言。

 おい!





 復路も楽しみながら川を下った。例のロープの地点にくる。手慣れた村長は、スルスルっと降りていった。オオタさんは、ゆっくりと慎重に降りていく。知床岬トレッキング以来、こういうのが得意の筆者なはずだ。

 ところが、着地1メール付近でかけていたいた足を踏み外し、やや股間を打撲し、かなりの激痛にさいなまれる。ただ、みんなにはポーカーフェイスで、スットボケていたりするゴロウさんでした。

 最初の橋の地点に戻り、楽しかったリバートレッキングも無事終了となりました。

「いや、最近体調が悪くて一度もゴロウさんをトレッキングに連れていけなくて終わってしまったと、心を痛めていたんだよねえ。これでようやく安心できるよ」
 村長が笑顔で話していた。





 ライダーに戻った筆者は、村長の車の後に着いて「ポロト温泉」に向かった。去年、皆でカヌーに乗ったポロト湖畔近くの温泉施設である。塩化物泉と書かれているが、黒褐色で強烈な効能のありそうな熱い温泉だった。強烈過ぎて先ほど強打した部分がヒリヒリしたりしたのは内緒だ。

 すっかりさっぱりして、道道86に入る。二輪と四輪とではペースが違うからということで、村長の車と別行動でニセコに向かう(これが失敗だった)。R276に入り、京極町〜倶知安町〜ニセコとすっかり暗くなった夜道でなぜか迷ってしまう。

 アンビの近くまで来ているのは確かだ。ナビは目標地点付近ですと言ったきり、ルート案内を止めてしまった。さらに雨が降ってくるし。多分、同じルートをグルグルまわっていたような気がする。

 8時半、今宵もやっぱりビショ濡れになりながら、ニセコアンビシャス到着!

 ちなみに村長とオオタさんは8時には到着していた。筆者は30分も遅れてしまう。村長の車の後を素直に着いてくればよかった。後の祭りだけれども。

 夕食は、先日のキーボーさんの居残りの息子さんのように独りで食べた。遅れてしまってすいませんねえ、ユミさん、ボルシチが美味しいです。

「ゴロウさん、あんた遅れてきたんだから、ビールは抜きね」
「ゴロウさん、あんた遅れてきたんだから、皿洗いぐらいは手伝いなさいよ」
 オオタさんに怒られる。

 叱られながらも、ごくごくとビールを飲んで、すっかり酔い心地で上機嫌になっている凝りないゴロウさんの姿あり。

 そしてワインの宴に突入する・・・





 ああそうそう、一昨日、単独で羊蹄山登山に向かった千葉の山ガールさんは連泊されていた。なんでも4合目付近で体調不良となり、頂上踏破を断念し下山していたそうだ。それは残念でした。

 本日のリバートレッキングの動画を観ながら反省会?をした。それにしてもナガヤマくんルートで苦戦している筆者の姿をみて、爆笑されているオオタさんの表情は素晴らしい。





 動画の中でもわざと流されそうになったり、転びそうになったり、ふざけた演技ばかりする筆者の映像を見ていた千葉の山ガールさんが、
「ゴロウさんって、なんの仕事をしている人でなんですか」
 呆れながら訊いてきた。 
『極秘だけど、ぼくは幕末の江戸からタイムスリップしてきたサムライなんです』
 と、正直に答えてしまった。
「えー、嘘、本当ですか?」
 彼女は、かなり動揺している様子だった。
『おお、ペニシリンとかアンドウナツを探しておるんぜよ』
 その後も暫く質問攻めが続いたのであった(一部架空)。

 画像は、オオタさんからの差し入れの有名なお菓子だったかな?大変美味しくいただきました。

 というわけで、宴会終了後、一気に疲労のピークに達したゴロウさんは、大部屋であっという間に爆睡してしまったようだ。

 ようやく2015年夏の北海道ツーリングの最後の夜は、静かに更けていった。



 画像提供:ニセコアンビシャス

 飛生川の飛翔の滝 リバートレッキングツアー:制作ニセコアンビシャス 



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