北海道ツーリング2015















風極の地にて



 日頃の疲れが溜まっているんだろうなあ。ずいぶん熟睡し、5時ごろ起床。暫くボーっとした後、大浴場に朝風呂に向かった。

 誰もいない浴場で、夜明けの海を見つめていた。昨夜の悪天候から回復して好天になるようだ。最初から雨だったら、本当にがっかりするけど晴れて嬉しい。朝風呂を満喫し、B寝台の客室に戻る。そして横になっているうちにまた寝てしまった。





 朝食はレストランでバイキングにした。近年、食が細くなってきた筆者は、スタンドコーナーで、おにぎり1個と味噌汁一杯で充分な気もするのだが、まあ、久しぶりだから朝食バイキングを堪能しよう。

 最近のことなんだが、知人の70歳に近い年配の方が、朝から丼超てんこ盛りのご飯をお代わりしていた。本当に凄いと思った。筆者の20代の食欲全盛期の頃とほぼ同じ量をペロリと平らげてしまったのだから。ぼくの食が細いのは酒飲み野郎だからかもしれない?





 朝食バイキング、ほどほどにバランスよく食べた。ご飯のお代わりは無理だけれど、浅く広く、そして軽くそつなくいただいた。

 しかし、太平洋フェリーの女性スタッフは実によく働くし、機転がきく。綺麗な人が多いし。

 流石、従業員を容姿で採用しているというだけある企業だ。 





 食後、デッキに出てみた。まさに抜けるような青空である。このスカイブルーが続けばラッキーなのだが、世の中、そんなに甘くなかった。

 まあ、それは先の話だ。この場は、美しい空を眺めながら、心地よくベンチの上で横になる。

 なんとなく、今後の旅の空の日程が、波乱の内容になりそうな予感がした。





 ”きたかみ”の船内から脱出した。気温は高いが、とても過ごし易い気候である。そんな中、日高国道を北上していく。

 昼食は、静内町内の”家康”というラーメン屋で摂った。筆者は、この店の辛し味噌ラーメンが秀逸だと思う。ピリ辛のスープが食欲増進に繋がっているかもしれない。

 店を出て、愛機で日高地方を駆けていると、やがて涼しくなってきた。なんだか、秋のような陽気の北の大地である。 





 初秋の気配のする牧場地帯、サラブレッド銀座をひたすら北上すると、久々に辿り着いた襟裳岬だった。

 観光客もライダーもそれなりに多い、典型的な観光地である。とにかく岬の看板まで歩いてみた。

 何年振りだろう?きちんと襟裳岬まで来たのは?






 襟裳岬、北海道の南東端にある岬だ。地名はアイヌ語で”エンルム”。つまり、とがった頭という意味に由来するそうだ。

 遊歩道が整備され、岬の突端部にはゼニガタアザラシが、300〜400頭生息しているそうだが、本日は時間が押しているため、奥まではいけなかった。双眼鏡でなら、観察が可能らしい。






 襟裳岬付近は、明治中期から紙の材料として、広葉樹が次々と切り倒され、あたり一帯が砂漠化してしまった。そして、鮭も来なくなり、昆布まで採れなくなってしまう。まさに森進一の唄う”襟裳岬”の歌詞通りの状況になった。

 1953年以降、林野庁の緑化事業により、1999年に荒地面積のほとんどを木本緑化を完了する。このあたりの経緯は、NHKのプロジェクトXで放映されていたのを見た記憶がある。

 陽が落ちかけてきた。さて、そろそろ今宵の野営地に向かうか。ぼくは静かにゼファーのスロットルをあげ、岬の下の小さな集落を駆け抜けていった。






 本日幕営するサイトは”百人浜オートキャンプ場”だ。実に16年ぶりに訪れた。よく手入れされた広大な芝のサイトである。

 ゲートが19時から翌朝7時まで閉鎖されるので、セキュリティもばっちりである。管理棟には、簡易水洗トイレ、シャワー、ランドリーまで整っていた。旅人ライダーにとって、最も大切な要件、ゴミもきちんと捨てられる。また、少し歩けば高齢者センターの入浴施設(300円)も利用できた。

 これだけハイレベルなキャンプ場でもフリーサイトの利用料は、大人310円・子供200円、昔より料金が安くなっている。なんと素晴らしいCPだろう。 






 フリーサイトは比較的空いていた。ファミキャンテント(ただし、利用しているのは年配の夫婦)、ソロツーリングライダーのテントが5張り程度であった。

 皆さん、大人しい方ばかりで、自分のするべきことに熱中しておられるという感じである。

 ちなみに今回、筆者が使用したテントは、エアライズ2だ。






 テントの前からゼファーの後ろ姿を撮影してみた。やっぱりカッコいい。平成4年ぐらいから乗り続けているマシンだ。

 あれから20有余年、当初は20代だった筆者もついに大台を越えてしまった。

 手前味噌ながら、初期型ゼファーにはそれなりの風格というものが出てきたと思う。 






 夕食は、肉を炙って済ませる。米を一升ほど持参しているが、無理にご飯を食べなくてもいいだろう。肉をつまみに酒が飲めればいい。 

 この頃、キャンプ場に入ったご夫婦ライダーがおられた。たいへん仲睦まじい感じのカップルで、てきぱきとテントやタープを立てていた。そして、予期せぬドラマチックな再会に繋がったり?

 まあ、このくだりは次章にてじっくりとお話いたしましょう。






 今宵の酒は、羅臼の海洋深層水を使用したGRAND BLEU(ハスカップ味)だ。ちびりちびりと飲んでいるうちにヨッパになってきた。

 冷えてきたので、早めにテントに入り、メモをつける。そして、いつの間にか寝入ってしまった。

 16年前に初めてこのサイトを利用したときもそうだったのだけれども、なんか熟睡できずに仕事の嫌な夢を見たりして何度も深夜に目覚めた。

 まだ旅慣れていないというか、いつもの研ぎ澄まされた感覚を取り戻していないらしい。

 ザブ〜ン、ザブ〜ン・・・

 まさしく怒涛であった。遠くから、いや比較的近くからだと思う、波の砕ける音が激しくこだましていた。  




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