北海道ツーリング2014








ファスナー破損







 北のサムライ、いざ出陣!

 ゼファーに跨り、コミネのメッシュJKTのファスナーを上げようとしたら、昨年同様、ファスナーがまたも壊れた。メーカー修理に出したばかりなのに。こりゃこのJKTダメだ。もう廃棄処分しよう。

 続いて、バックミラーに引っかけていたアライのメットが地面に落ちて、シールド大破。まあ、直せるけれど、今までシールドが壊れることなど皆無だ。

 駄目押しは、愛機ゼファー、セルは回れどエンジンがかからず・・・・・

 なんてこった!

 アクシデントの3連発。次々とトラブルが押し寄せて来る。なにか得体の知れない巨大な力が、筆者の出発を全力で阻もうとしているとしか思えない。

 ユミさんに頼んで車のバッテリーからゼファーへブースターケーブルで繋いでもらったけど、エンジンが作動せず。お手数をかけてしまいすいませんねえ。

 素人判断ながらも原因はバッテリーではなく、エンジンを発火させるコンバーターのような部品がいかれているような気がした。悪天候の中、随分雨ざらしにしていた影響もあるのか。昔のカワサキのマシンは電気系統が弱いとよくいわれていた。

 北海道で、通算何百日、何万キロ、ゼファーで走行したかなど勘定したこともないが、こんなマシントラブルなど初めてのことだ。

 念のために早朝とか夕刻とか毎日1度はゼファーを走らせていたのだが、ナンタルチア。

 とにかく北海道に来ているのにあまりにもツーリングに出ないからバイクの神様の逆鱗に触れたか?

 それにしてもウエアのファスナーが壊れ、ヘルメットのシールドが壊れ、オートバイのエンジンが始動しない等、3つの災難が一気にやってくるとは、筆者はどんだけ不運の塊なんだろう。

 どうしよう・・・

 こうなっては仕方がない。JAFを呼ぼう。携帯から連絡し、アンビ前までレッカー車に来てもらった。

「キルスイッチは大丈夫かい?」
 トラックから降りてきたオジサンが基本的なことを訊いてきた。

 流石にその程度の確認はしていたので、オンですと答えた。

「まだ、盆時期だから開いているバイク屋がどれだけあるかが心配なんですよ」
 レッカー車のオジサンは、そっちこっちのバイク屋に片っ端から電話をしまくっていた。

「某駅前に開いているバイク屋さんがあって、診てくれるというから、そこに行きましょう」
 筆者には断る術もない。よろしくお願いしますといいながらバイクの積み込み作業を手伝い、愛機はトラックの荷台でドナドナされていく。40分ほどトラックの助手席に揺られると、某駅前のバイク屋さんに到着した。そして、レッカーのオッサンに、確か10数キロ以上過ぎると発生する割増料金を支配って別れた。

「これは、サイドスタンドが立った状態だとエンジンがストップする安全装置が勝手に作動しているのでしょう」
 バイク屋の店長の判定だった。

 その後、バイク屋の店長にアンビまで送ってもらった。まあ、たいしたことはなかろうと、この時は楽観視していた筆者だった。しかし、後刻、サイドスタンドが原因ではなく、エンジンを発火させるブースターが壊れているようなので、その部品が届くまで4日ほど待ってもらいたいという旨の連絡があった。

「大丈夫です、お客さん。4日後の朝には、まず間違いなく仕上がりますので、ご安心ください」
 店長は力強く言い切ったので、4日後には旅立てると思うが、完全に出鼻をくじかれた。

 ガ〜ン!

 あと4日も待ったら、ツーリングを再開出来るのが残り4日になってしまうではないか。バイクに積んできたテントを始めキャンプ道具は、すべて非常用と化してしまう。無念なり。

 でも22年も乗っている愛機だ。そのようなトラブルが出て来てもおかしくない時期に差しかかってきているのかも知れない。かなり落ち込んだけど、ユミさんに連泊のお願いをする。なんかすいませんねえ。

「あら、ゴロウさん、どうしたの?そんなトラブルがあったの?まあ、直るまでトレッキングをしながら待とうよ」
 ツアーから戻った村長もびっくりしつつも噴き出していたりした。

 さて、今宵のお客さんもライダーさんだった。十勝の酪農家のおじいさんと千葉のヤマグチさんというお方である。おふたりともPCX125というホンダのスクーター乗りだ。
   まあ、がっかりばかりしていても致し方ない。気持ちを切り替えて、村長のいう通り、明日からのトレッキングを楽しもう。

 今宵の夕食も大変美味しかった。ボルシチがメインだ。野菜の旨味がとても前面に出ていて食欲をそそる。ガンガン食べた。
 食後の温泉は、久々に日本秘湯を守る会”鯉川温泉”である。

 どうです、このひなびた感、ワビとサビの世界。マシンが故障して、かなり落ち込んだ心がずいぶんと癒された。
 
 温泉から戻り、いつものようにワインの宴が始まった。

「彼女とは、昨年、ガソリンスタンドで知り合いメールのやり取りをしてここで再会したんだ」
 十勝の酪農家のおじいさんとヤマグチさんは、そんな出会いをされたようだ。

 お若い女性ライダーヤマグチさんは、今回は千歳でレンタルしたPCXで旅をしているが、ご自宅にはマイマシンがあるらしい。まあ、なんにしろ、なによりです。いろいろな人間模様があるのが旅なのだ。

 この晩の宴もいろいろな話題で、それなりに盛り上がり、オヒラキとなる。

 でも夏の北海道では、筆者の傍を片時も離れたことのない愛機ゼファーの姿はない。

 ゼファーのない筆者は、まるで「クリープのないコーヒー」である。 ←あまりも古い。

 ゼファーのない筆者は、まるで”翼の折れたエンジェル”状態であった。







 翌日も雲が多かった。外に出るとやはり筆者のゼファーはない。北の大地にツーリングへきて、愛機がないという喪失感は、ぼくにとってとてつもないダメージだった。

 でも気持ちを切り替えて、積極的にツアーに参加して旅を楽しまないと・・・

 朝食後、十勝の酪農家のおじいさんは、ヤマグチさんと握手を交わして旅立っていく。

 というわけで、村長、ヤマグチさん、筆者の3名で洞爺湖方面に向かう。

 途中、真狩村の人気ベイカリー”JIN”に久々に立ち寄り、チーズパンや、クロワッサンなどを昼食用として購入した。しかし、袋から漂うパンの匂いが相変わらず香ばしい。
   ニセコのダチョウ牧場も覗いてみる。人懐こいダチョウがすぐに近づいてきた。こちらの牧場では、ヘルシーなダチョウのお肉が自動販売で購入できるそうだ。

「ここのお肉を割り勘で買って、飲み会のつまみにしようか」
 と、村長の提案もあったけど、お盆でお肉は置いてなかった。
 そして、洞爺湖の絶景ポイントへ・・・

 あいにくの曇りだけれど、この透き通るような水面(みなも)の美しさは素晴らしい。正面に見えるのは、ご存じ”昭和新山”です。

 気のせいかも知れないが、洞爺湖って、昔、最初に訪れた頃より、非常に水質がよくなっているような気がする。
   その後、渓流釣りのポイントへと向かう。

 素晴らしい清流である。

 サクラマス、つまり山女が海に出て成長して(巨大になって)帰ってくるという川だ。ただし、ここの場合、海ではなく洞爺湖に出て戻ってくるサクラマスとのこと。 
 最初に村長が、山女をヒットしたが小さ過ぎたのでリリースした。

 大物のサカナもたくさんいたのだが、かなりの知恵者のようでなかなか釣れない。時折、ヤマグチさんにも竿を交代するも当たりのみで喰いつかなかった。

 ちなみに餌はイクラである。
 
   暫くして、村長が食べごろサイズのイワナをゲットした。参考までにイワナはヤマメに比べ、非常に獰猛なサカナで、大きめの昆虫やトカゲはおろか、小型の蛇にでも襲いかかり、餌食にしてしまう。放流した鮭の稚魚などいいターゲットである。

 ちなみにこのイワナは、夕食時にヤマグチさんのオカズのひとつに追加されたことを付記しておこう。  
 一昨年、ジャムおじさんと来たときには、このポイントでずいぶんと釣れたそうだ。 

 筆者も十数年ぶりに渓流釣りを楽しんだのであるが、この日は釣果なしで残念なり。地元でも渓流に入りたいのだけれども原発事故の影響で無理だろうなあ。本当にあの事故にはいろいろな楽しみまで台無しにされた。

 でも久々に渓流釣りの楽しさを再認識した次第である。 



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