北海道ツーリング2014











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 千歳東ICから全身に雨を浴びながら、道東道をひた走る。全身が冷えてきてガタガタ
体を震わせながら十勝の大平原を突き抜けていく。

 本別を抜ければ道東道が尽きる足寄だ。あと少し。自らを鼓舞しているとラッキーなことに雨があがった。足寄の街中のGSで存分に給油し、阿寒湖へ機種を向けた。途中、茂足寄PAで小休止し、冒頭のゼファーの画像を撮った。すでに夕闇せまる時刻となる。

 阿寒湖を左手に見ながら、まっすぐ阿寒湖横断道路に突入。道は空いていた。シフトダウンとフルブレーキングを駆使しながら、心地よくワインディングをクリアしていると、なんかゼファーの左手で並走しているモノ(ヤツ)がいた。

ギョッ!

 なんと小型の鹿がゼファーに伴走しておるではないかあ。本当に驚いて、クラクションを狂ったように鳴らしたら、鹿は藪の中へ消えていった。横断されて、直撃を喰らうよりはマシだったが、なぜ筆者とゼファーに勝負を挑んだのだ?
   弟子屈に入り、ようやく和琴湖畔キャンプ場へ到着すると真っ暗だった。ちょうど管理人のおっさんが、集金にまわっていた。

「今、着いたのかい。さっそくで悪いが料金徴収するね」
『どうも、遅い時間に入ってしまい失礼しました。福島のGA隊です』
 と言いながら代金を支払う。 
「おお、あんたか。しかし、GA隊さんのホームページの影響力は今も凄いものがあるよ。GA隊さんのホームページを見て来たという人の数が、未だにまったく衰えてない。むしろ勢いが増しているんじゃないかい」
『ホームページもブログも閑散としていて、そうは思えませんが、まあ、ご迷惑をかけない程度にほどほどにやっていきますわ』
 そう答えると、おっさんは噴き出しながら暗闇の中に自転車ごと消えていく。

 その後、暗い中、テントを設営していた。

「あのう、テントを張り終えるまで、このランタンを使ってください」
 近くのライダーさんが、持ってきてくれた。
『ご親切にありがとうございます。お言葉に甘えて使わせてもらいます』
 自分のランタンもあるのだけど、荷物の中から取り出すのが面倒で、暗い中、作業していたら、見兼ねて貸してくれたようだ。

『ありがとうございました。お蔭で助かりましたよ』
「いえいえ、ライダー同士、助け合うのは当たり前ですから」
 嬉しいねえ。こういう言葉が自然に聞けるのも和琴のよさだ。  
 テントが立てば、あとは晩ご飯だ。米をクッカーで一合炊きにする。他になんの取り得もないけど飯炊きの失敗はない。

 おかずはサバ缶のみ。これだけでもほかほかご飯にぴったりなのだ。

 あっという間に食事を平らげる。
 
   
 少し冷えて来たので、テントの中へ戻る。今宵の寝酒は赤ワインだ。ラジオから流れてくる懐メロを聴きながら何杯か杯を重ねた。

 多少、いやかなり無理をしても和琴まで出てきてよかった。
  ほどほどの時間に和琴露天風呂に浸かってこようと思ったのだが、本日のロングランのダメージとワインですっかりヨッパになって、シュラフにもぐってしまう。

 湖畔に打ち寄せる小さな波の音が、いい感じに響いていると思ううちに筆者の意識は消えていった。







 翌朝、テントにシトシトと嫌な音があたると思いながら目覚めるとやはり雨だった。

 どうせ筆者は雨男だ。もう、ずいぶん前から骨身にしみてわかっていることだ。

 画像の赤いモンベルの傘を差して、キャンプ場併設、無料の和琴温泉へと向かう。
 
   人気の和琴温泉露天風呂は、早朝のせいか閑散としていた。

 まあ、雨なので無料の和琴公衆浴場へ向かうとする。

 和琴公衆浴場、実に適温で心地よい温泉である。もう、幾度となく利用しているが、近年は異様に熱くて湯船に入れないという事態はない。いい湯加減で存分に天然温泉で汗を流した。
 朝食は、いつものように米を炊いた。おかずは納豆、ポテトサラダ、それにアサリ汁である。

 特に贅沢をしているというわけではない。普段、自宅で家人が作る朝食とほぼ同じようなメニューであるし、粛々と完食した。
 
   ちなみに冒頭の画像にもあるが、今回初投入のタープは、スノピのペンタAirだ。

 お盆の超混雑期にこのようなタープをライダーサイトに張ったら、たちまち管理人のおっさんに叱られると思うのだが、もう8月23日だ。流石にキャンプ場全体が閑散とし始めていた。もちろん注意などされることはない。 
 魅力はスピーディな設営が可能なワンポールタープであり、なにより、430gという超軽量がメリットだ。

 これはまさにアウトドアの実戦タイプだ。確かサバイバル登山家の服部文祥氏も、テントではなくワンポールタープで歴戦の過酷な登山をクリアされていた記憶がある。

 というわけで、北のサムライは、こんな雨の中、朝茹での花咲ガニを食べに根室に向かって、スロットルをあげていく。このためだけに道東まで遥々やってきたという噂もある。







 こんな雨の中、根室に向かう途中、摩周のセイコマの横の摩周アイスに立ち寄る。

 そして好物の”摩周ブルー”のダブルを頬張った。ソーダとリキュールが効いたソフトの旨さはなんともいえない。大満足で店を出て、雨に濡れながらバイクに乗る人がいる♪
 
 雨の別海町に入る。やがて、一度は利用したいと常々考えている虹別キャンプ場を通過。

 帰りには、温泉利用したいと考えていた別海道の宿温泉”しまふくろう”も通過。

 奥臼行PAにてトイレ休憩。あれ、ここには旧国鉄時代の駅舎やホームが残っていたはずだが、綺麗に整地された芝の公園のみだった。

 風蓮湖を左手に拝んでいると根室に入る。かなり風雨が増してきた。稲妻もピカピカと妖しく光り、激しい雷鳴が天地へ鳴り響いていた。

 温根沼を過ぎたあたりで右折し、花咲港へ出るために半島の内陸部に入る。その頃、エンジンが急に噴きが悪くなり、停止してしまった。やべえ、またマシントラブルかよ。まだ途中で給油してから90キロしか走ってないけど、念の為、リザーブコックに切り替えてみたら、ばっちりエンジンが復活した。絶好調だ。でもなんだか複雑な気分に陥る。

 筆者のゼファーが予備タンになるのは、通常は走行が200キロ近くになってからである。それが90キロでリザーブなどあり得ない。まあ、それでも無事にゼファーは動いているだから、いいかあ!

 この筆者のいい加減な性格は、北海道ツーリングを始めたうん十年前からなんも変わってない。

 やがて無事に花咲港近くの大八食堂に到着する。なんだかホッとしていたりする。

 さっそく二千円代のメスの花咲ガニをオーダーした。カニの身の本質はオスの方が絶対に旨いだろう。でも筆者は身の味が多少落ちてもカニの卵が好物なのでござるよ。
   身をパックリと割るとどうです、この滴り落ちるスープと芳醇な身のハーモニー、雨の中、雷までがんがん鳴っていたけど、根室まで来た甲斐があった。

 ほとんど、しゃぶりつくようにカニミソ、タマゴ、甘い身の味を堪能する。 
 ウチコとソトコと卵がぎっしりであった。朝茹でだから、まだ身が温かい。
「お客さん、カニの食べ方が上手だね」
 従業員のお姐さんが驚いていた。
『そりゃそうだよ、俺はよう、毎年のようにここでカニを食べているんだよ』
 そういや、見た顔だわとオバサンたちは噴き出していた。実は、愛機のタンクバックの中にマイカニバサミが常備されていることは内緒だ。 
 
   さて、そろそろ引き返すかと店を出ようとすると、今年もいたいた、看板猫ちゃん。昨年は産後間もなくて、子猫を育てながら店に出ていたそうだが、今年は大丈夫なのかな?なでなですると、ごろにゃんしてきた。相変わらず人懐こい。
 なんだか、もう一匹いるぞ。たぶん息子かな?しかし、凄まじい人相というか、猫相というか?

「不器用ですけど、どうかお元気で」
 
 男は見かけではない。優しさだ。そう思いながら、ゼファーのスロットルをあげた。
 
 すると、とたんに激しく横殴りの雨が全身に叩きつけてきやがった根室の昼下がり・・・

 コンコンチキめえ! 



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