北海道ツーリング2013















   完全に二日酔いだ。頭が痛いというよりもまだ頭の中がグラグラする。これは朝から和琴公衆浴場で汗を流し、ダメージを回復しないと。

 今朝もお天気があまりよろしくない。どんよりとした雨雲が上空にかかっていた。盆の和琴は激混みだから1泊だけで北上しようと考えていたが、昨夜飲んだメンバー全員が連泊するそうだ。  
 とりあえず久々に和琴の公衆浴場に浸かる。今朝の温泉は適温で快適至極だ。どんどん二日酔いが回復していった。

 さて本日はどうしようか。せっかく和琴に来たんだし筆者も連泊しちゃおう。そして根室までひとっ走りして花咲蟹を食べてくるか。

 なんてにやにやしていたら、母親と小さい娘が風呂を覗いてるし。
 
 逆のことをされたらどう思うのだろう。脱衣所に服が置いてあるのだから、人が入っているのはわかりきっていたはずだ。風呂を見たいという好奇心を満たしたいだけであり得ない行動するなど言語道断である。体を洗いながら、ちょっときつい顔で睨んだら親子は煙のように消えてしまった。

 なんだか興醒めしてしまい風呂からあがる。帰路、屈斜路湖の湖面も波で荒れていた。和琴露天風呂でも親子が水着を着て泳いでいる。これでは温水プール状態だ。もう、呆れてしまって見なかったことにした。
   テントサイトへ戻り、飯だけ炊いた。あまり食欲がないので朝食はお茶漬けだ。というよりかなり手抜きだと思います。

 とにかく強引にご飯をかきこみ、食後のコーヒーを啜った。キャンツー中の朝食は腹がふくれればそれでよし。なにせ、本日は根室で久々に花咲蟹を食べるのだ。あまり食べるとうまくない。
「連泊に決めたんですね」
 ミヤタがにこっと微笑みながらマシンで出かけていった。

 筆者も湖心荘まで重い愛機を引きづっていった。いまだにキャンプサイトへのオートバイの乗り入れが禁止なのだ。数年前、ハーレーが場内に入り込み空ふかしをしまくり大暴れしてファミリーサイトから苦情が殺到したことがあった。そしてバイクはエンジンをかけたままの入場の禁止令が出た。今シーズンも同様の騒ぎがあったのだろうか?とにかく年齢的に衰えが著しい筆者はゼファーが重くて重くてひと苦労である。

 湖心荘の駐車場で暖気をした。天気は曇天。まず間違いなく雨にあたるであろう。そんなことを思いながらスロットルをあげた。今朝はめずらしく肌寒い。雨もポツポツ降り出したし。今回のツーリングにフリースを忘れたのは痛かった。

 弟子屈のセイコマの軒先で合羽に着替えた。そしてパイロット国道を延々と東に向かって駆けた。別海に入ると広大な牧草地帯だ。悪天候の中、たくさんの牛たちがのんびり草を頬張っていた。しかし、雨。合羽からパチパチと雨のあたる音がする。
 別海の街中のホクレンスタンドで給油を済ますと牛乳2パックを頂戴した。なんだってサービスがいきとどいているねえ。

 密かに人気の別海ふれあいプラザキャンプ場を通過。雲が低く立ち込め、あたりが夕方のように暗かった。特大ポークチャップで有名なドライブイン”ロマン”も通り過ぎた。まだ時間的に早いせいか開いてない。
 
 
 根室半島に入るとさらに冷え込みが厳しくなり、ぶるぶる震えながらアクセルを握っていた。筆者の知る限り、どんなに猛暑の北の大地でも根室だけは確実に寒い。

 やがて花咲港近くの大衆食堂”大八”に到着した。いやここに来るのも何年ぶりだろう。思わず”懐っかしいねえ”黒板五郎に成りきっていた筆者であった。
「秋刀魚の塩焼きを食べな」
 あれ食べな、これ食べなとサービスがやたらよかった大八食堂だが、なんだかこぎれいなお店になっていた。メニューも充実していてカニラーメンやカニチャーハン、カニ中華丼など、どれも美味しそう。でも筆者はやはり花咲蟹そのものがいい。店先でこれにしてもらいたいと立派な雌のカニを指定した。ある程度の値段を覚悟していたら、これでたった1500円である。素晴らしい。
 
 さっそくカニをを食べ始めた。内子も外子もびっちりついている。カニ味噌もたっぷり。そして身が甘い。

 美味い!

 筆者はカニの中でも根室で食べる花咲蟹が至高だという持論を持っている。今回もそれを再確認した。もの凄い集中力で花咲蟹一匹を綺麗に食べ尽くす。

 実は旅に出る前、前年度まで職場の隣の机のおねえさんに花咲蟹の美味しさについて自慢しまくっていた。

「キタノ、オクレ。根室にいったらワラワにカニを送れ。よいな」
 このような至上命令を受けてしまう。

 もちろん拙宅や知人宅を含めて数軒に花咲蟹発送の手続きを済ませた。ちょっと出費は痛いが、筆者のまわりの人間にも根室の花咲蟹の旨さの神髄を知っていただけるのなら嬉しい限りだ。 
   それにしても大八食堂で飼っている猫ちゃんが人懐こくてカワイ過ぎる。なんでも子猫がいる母猫だそうだ。

 混み合う店内のお客に愛想をふりまき、ほとんど看板娘と化していた。なんだかうちのにゃんを思い出してしまう。ミミちゃんは、家人にいじめられていないだろうか?かなり不安になってきたりするキタノさんでした。
 猫ちゃんに見送られ、スロットルをあげるとホームランやきの看板が見えた。ここは縫い目までついた野球のボールの形をしたホームランやき(鯛焼き風?)で有名な店だ。

 それより筆者が気になったのは暖簾に書かれた”ラーメン”の文字だ。カニを食べたばかりだが、ラーメンも食べていこう。 
 
 店内ではこの時期にもかかわらず石油ストーブが焚かれていた。真夏にストーブという光景、久々に見た気がする。10年ぐらい前までは、北海道には周期的に冷夏がやってきて、ツーリングライダーを寒さで苦しませたものだ。スタンドの建物の中では夏でもストーブが使用されていて、よく暖をとらせてもらった。

 出てきたラーメンはあっさりして非常にシンプルな味だった。やはり昔風の中華そばという感じで大変美味しかった。この味は和琴半島近くの”おかめ食堂”のラーメンに酷似していると思う。肝心のおかめ食堂は営業してないようだ?

 カニとラーメンで、かなり腹いっぱいになった筆者は根室の地を後にした。悪天候でも来た甲斐が大いにあり。
   帰路、べっかい効楽苑という温泉宿泊施設で入浴していくことにした。しかし、まるで西洋の城郭のような建物だ。

 入浴料は600円。十勝川温泉と同じく、源泉掛け流しの天然モール温泉とのこと。泡風呂、ジェット風呂、露天風呂と設備が充実しているが、茶褐色の植物性温泉は効能がかなり高いらしい。いい湯でした。
 こちらで食べたソフトクリームもクリーミーでボリュームがあり美味しかった。

 外は相変わらず雨が降り続けている。ソファーの上で横になった。少し休んでいくか。筆者のバディも相当疲労が蓄積されてきたと思う。そして、あっという間に深い眠りに落ちてしまった。30分ぐらい爆睡後、慌てて起き出して雨中和琴に引き返す。
 
   弟子屈のスーパーフクハラで、アルコールや食料を調達し和琴湖畔キャンプ場に戻った。既に結構いい時間になっていた。自分のテントに戻ろうとしていると川崎のマサさんが歩いていた。たまたま筆者の隣にテントを張っていたそうだ。

 というわけで得意のチクワキュウリにマヨネーズをぶっかけてツマミにし、さっそくビールをがぶがぶ飲んだ。
 マサさんは、昨夜は女満別でキャンプし、よーよーと偶然一緒だったそうだ。例の手塩の宴会に誘ってもらったと喜んでいる様子だった。そこにホシノさんも加わり、また旅の話で盛り上がる。この頃になると毎晩かなりヨッパになっていたもんでメモをつける習慣が消えてしまった。テントに入れば瞬間的に寝てしまうもので。ということで、具体的なことは覚えていない。   
   まあ、残っている画像等で検証していくとフクハラでがっちり購入したホルモンをフライパンで炒め、皆さんへふるまっていたのは間違いない。

 そうそう、今宵から伊丹のふじんさんがやって来てミヤタとチューさんたちで飲んでいるそうだ。前々から3人は約束していたらしい。
 藤沢のイトウさんから電話があった。なんでも帯広にいるらしい。悪天候でビジホ泊まりのようだ。

「ミヤタさんがいるなら、久々に会いたいので明日は和琴に向かいます」
 とのこと。
『いや、ミヤタは明日には道北に向かってしまうよ』
 と、答えたのだがとりあえず和琴に来るとのこと。
「キタノさん、ぼくのことを覚えてますか」
 かなり夜も更けた頃、話しかけてきた人がいた。
『そういうあなたは大泉洋ですね』
 もう顔といい、話し方といい大泉洋そっくりだった。

 ああ、5分間ライダーだあ・・・ 
 
 2007〜2008年にかけて、ここ和琴に現れた謎のライダーである。うちのHPの古くからの読者であることは間違いない。

「キタノさん、5分間だけ宴に交ぜてもらっていいですか」
 と、忽然とやって来て、5分後に消えてしまうという生態をお持ちだ。

 あれから毎年のように和琴にやって来て滞在していたらしい。

 あまりの懐かしさに筆者は、5分間ライダーと固い握手を交わしていた。以前よりも痩せてしまい大泉洋そっくりになってしまったそうだ。

 今宵は筆者も嬉しくなり缶ビールを2本ほど差しあげた。そして5分どころか、50分以上宴に加わってもらう。

 宴も終りの頃、売店側のサイトで飲んでいたチューさんも飲み会に加わる。ミヤタやふじんさんはテントに入り、既に寝てしまったそうだ。

 札幌のチューさんといろいろ語り合う。彼は筋の通ったひとかどの人物であると筆者は深く感じ入った。

 宴が終わりテントに入ると、いつものようにあっという間に意識が消えていく。



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