北海道ツーリング2013








和琴湖畔キャンプ場







「本日の風の状況もやや強く、これから協議してバルーンを飛ばせるか検討いたします」
 早朝5時過ぎぐらいから、女性アナウンサーの声が放送でガンガン流れ、否応なしに目が覚めた。まあ、昨夜寝た時間が異様に早かったので、ほとんどダメージはなかった。

 相変わらず、クッカーで飯を炊き、納豆3パックをおかずに朝食を済ました。福島県民の納豆消費量は日本一だ。もちろん筆者も自宅でも毎朝納豆を食べている。

 元気盛り盛りで撤収を済ませ、航空公園を出発した。

 ここから和琴に向かうには足寄を目指すしかない。もう何十回も通った道だ。一応、晴れているが路面は濡れている。数時間以内に降雨があったことは間違いないが、お陰でもの凄い湿度だった。

 足寄の市街地を抜ける。ここらで久々にオンネトーでも拝んでいくか。 
 十数年ぶりにオンネトーに立ち寄る。エメラルドグリーンの湖面は神秘的の一言に尽きた。

 アイヌ語で老いた沼という意味があり、その美しさは、知る人ぞ知る穴場スポットでもある。
 
   オンネトーの奥には、雌阿寒岳・雄阿寒岳などの名峰が連なっていた。いつの日か、これらの山々も制覇してみよう。

 湖畔では幾人かの人たちが、三脚を立てて撮影していた。ここも道内屈指のビューポイントといって差支えない。
 どうです。湖面に空・雲・たくさん木々が映し出されていた。素晴らしい景色だ。

 刻々と湖面の色が変化するから、五色沼とも呼ばれている。

 美しい自然を満喫した後は、秘湯に入って温泉も堪能したい。
 
 
 というわけでオンネトー温泉景福に向かった。時刻は午前9時50分だ。10時から入浴できるので暫し待った。ほぼピタリ10時に玄関をくぐると誰もいない。受付の前のカゴに料金を入れろみたいなことが書かれた張り紙があった。

 しかし、年季が入った建物だなんて思いながら階段を降りる。
 まずは露天風呂に入る。湯温が低いから、低温が苦手な人は露天風呂を控えなさいみたいな張り紙があった。なんか張り紙の多い温泉である。

 エメラルドグリーンの温泉は確かに温いけど、心地よい露天風呂だった。手足を大きく伸ばしてじっくりと浸かった。
 
   続いて内湯に。どうです、このワビとサビの世界。こういう秘湯を筆者は求めているのだ。エメラルドグリーンの露天風呂とは明らかに泉質が違うようだ。こちらは無色透明源泉かけ流し、単純硫黄泉である。

 体をきっちりと洗い、さっぱりとして湯を出た。噂に違わぬ名湯なり。またいつか来よう。もう少し歳をとったら泊まりで来てもよいと思った。
 秘湯を堪能し、霧がかった阿寒横断道路の強烈なワインディングをクリアしていく。荷物が重すぎて、今ひとつ軽やかなコーナリングにならない。というより、過去何十回とこの道を走行したが、いつも過積載だった。

 久々に弟子屈入りしたとたんに腹がへった。渡りに船とばかりに弟子屈ラーメンの看板が目に入る。いつの間にかできていたんだ。
 
 当節流行のラーメン店だ。その名の通り、ここ弟子屈が総本店である。道内に何店舗か支店もあるそうだ。確かに凄い人気で12時前から行列ができていた。

 筆者がオーダーしたのは”弟子屈辛味噌”だ。行者にんにくの漬物も入ってスタミナ満点、なかなか美味しい味噌ラーメンであった。行者にんにく餃子も旨い。また来よう!

 ご覧の方で行者にんにくを御存じない方もおられるかもしれない。そこで、軽く行者にんにくについて解説しておこう。

 強いニンニク臭を放つが、にんにくではなくネギ科だ。別名アイヌネギという。名前の由来は修験道の行者が食べていたからとか、逆に滋養がつき過ぎて修行にならなくなるから食べることが禁止になったとか諸説あり。

 山奥の雪が多い所でよく採れる。日本では北海道でダントツで採れ、ジンギスカンに入れる野菜としても使用されているぐらいだ。

 筆者の地元の福島市内でも行者にんにくが採れるポイントがある。もの凄い奥地なので、山岳愛好家でないと辿りつけないであろう。6月上旬ごろになると群生し、周囲に強烈なニンニク臭を巻き散らせている。ただ市場に出回るのは少量なので高値で取引されているらしい。といいつつ筆者も密かに栽培していたりした。
   久々に屈斜路湖畔付近にやってきたんだ。このあたりを走りまわってみよう。

 パイロット国道から砂湯に入り、川湯温泉を通過し、アサトヌプリの噴煙を横目に摩周湖方面に向かった。
 摩周湖第三展望台に辿りつくも霧ばかり。

 でも”霧の摩周湖”っていうぐらいなんだから霧で湖面が見えないのがあたりまえなのだ。ぼくはむしろ自然体の摩周湖を拝めたのでよしとしないと。

 なんか開き直った文章になってきたぞ。摩周湖が見えなくて悔しかったと、素直に書けばいいのに。
 
   弟子屈の街に下りてきて、まずスーパー”フクハラ”でアルコールや肉(トントロ)など今宵の食材を調達した。

 さらにセイコマ横の摩周湖のあいすで、摩周得濃ミルクソフトクリームを食べる。しかし、本当にミルク味が濃い。素晴らしいコクだ。筆者はコクっとうなづいた。
 ついに和琴に帰って来たぞ。道東のすべてが雨にやられてもここだけは雨が降らないという奇跡の地だ。そう、人呼んで和琴の奇跡!
「よう、福島の自衛隊さん、久しぶりだね。何年ぶりだい!」
『5年ぶりです』
「もう、そんなになったかね。なんだか去年会ったばかりだと思ったよ」
 管理人のオッサンが笑いながら、自転車で通り抜けて行った。
 
   さっそくライダーサイトとファミリーサイトの目立たぬ境目あたりにテントを設営した。

 キャンプ椅子へ座り一息ついていると、
「あのキタノさんですね。ホームページをよく拝見しています」
 とおっしゃる数名の方から立て続けに声をかけていただく。その中のひとりが、マサさんの知人だったようだ。 
「キタノさん、ご活躍はネットで拝見しております。2005年にここで飲んだことがあるさいたまのホシノと申します」
 知床岬を踏破した年だ。あの折、このキャンプ場にとても社交的なライダーさんがいて、大人数で盛り上がる宴になった記憶がある。その時いらした方のようだ。

『それはそれはお久しぶりでした』
 筆者も懐かしい気分になる。
 
 ホシノさんのロース肉と筆者のトントロを炙りながら酒を飲んだ。ライダーと酒を飲みながら語りあうなどこの旅初めてのことだ。やはり道東の旅は一味違う。

「どうも」
 会話に盛り上がっていると、あれ〜

 ミヤタだあ〜

 何年振りだ?もう7年ぐらい経つのではないか?いやあ、混浴ライダー@大阪と再会できるとは嬉しいねえ。やはり和琴の奇跡よ。彼もここ数年いろいろあり過ぎたようだ。旅のスタイルも変わり、屋久島や沖縄の島々にも渡るようになっていた。社会人としても会社の重役となり活躍していた。だからあまり変なことを当HPで書かないでもらいたいと釘をさされてしまう。

 今宵、初めましてのチューさんもツワモノだ。札幌在住でマシンをワゴンに積んで移動している。時折、母艦(ワゴン)からマシンを発射させるそうだ。礼文の8時間コースで骨折した話題や知床岬ルートの途中まで偵察にいったことがあるとか武勇伝が多い。

 さんざん飲んで笑った後は和琴露天風呂だ。ずいぶんヨッパになったが、しっかり体が暖まったぞ。我々のやっている行動は13年経ってもあんまり変わってないような気もした夜だった。

 夜空の雲の合間から、キラリと光る星が、やはり俺を見ていた。



HOME  TOP