北海道ツーリング2013















 6時起床。昨夜未明からの豪雨がまだ降りやまない。

 お湯を沸かし、1時間ぐらいテントの中でコーヒーをを飲みながら待機した。実はこの日あたりが渡島管内八雲町や松前町、長万部町で線路や道路の冠水、住宅の浸水などの被害が出た記録的な大雨が降っていた時期かと思われる。

 雨がやむ兆しがないので、カッパに着替えてテントを撤収した。本当に嫌なんだけと濡れたままのテントを袋に詰める。

 マシンに荷物をパッキングしていると、傘を差した知らないオジザンがやって来た。

「こんな天気でもバイクで出かけるものなんですねえ」
 しげしげとゼファーを眺めていた。
『ええ、ツーリングライダーですから』
「そうですか。どうかお気をつけて、キタノさん」
『ありがとうございます』

 え?ちょっと待って。どうして筆者の名前を知っているのだ。そう思った時にはオジサンの姿はどこかに消えてしまっていた。

 この旅では神威岬の先端まで歩くのは諦める。変わりに朝食も”うしお”で食べよう。本当は初めからそのつもりだったという噂もある?
   というわけで”うしお”は8時から営業しているので、朝からウニ・アワビ丼をオーダーした。

 本当に美味しいのう。ウニはもちろんだが、アワビも歯ごたえがあり、プリプリだった。

 朝から至高の贅沢をする。
 白身魚(名前を失念した)の刺身も低料金でお薦めメニューとのことだったのでオーダーしたら、ナマコやツブ貝の煮つけもサービスしてくれた。

 う〜ん、どれも美味しい。本当にビールが飲みたくなるような味だ。

 もちろんこれから運転なので自粛したけど。
 
 さて、気を取り直して雨の中再びカッパを着こんでアクセルをあげた。

 天気はどんよりとして、雨が降ったりやんだりと、せっかくの積丹半島の景色をあまり楽しめなかった。余市を過ぎ、小樽に入った。思ったより混んでなかったけど、相変わらずの雨だ。

 特にどこへも立ち寄らず、ナビのいうがままに札幌に入ったり、石狩市に入ったり、また札幌で次は江別市に突入する。

 雨の田園、トウキビ畑の中を延々と彷徨った。一応、ナビの目的地は”北村ふれあい公園”キャンプ場である。おかちゃんが絶賛していたサイトだ。

 新篠津村を抜けると岩見沢市に入り、ようやく”北村温泉ホテル”に到着した。おかしいな?このあたりにキャンプ場があるはずなのだが?

 ホテルの向かいに大きな池のある公園があるが、人が誰もいない。まさか公園がキャンプ場というわけではあるまい。とりあえず北村温泉に浸かり、雨に打たれ疲れ切った体を休めよう。

 しかし、ここの温泉、思ったよりも実に素晴らしい。アトピーに効果があるというナトリウム物強塩泉。湯温43℃。源泉かけ流し100%とまさに秀逸の内容だ。

 もう、こんな悪天候の中、キャンプするなんて嫌だ。ここに泊まりたい。数回ぐらい温泉に浸かって体力を蓄えたい。そう思ってフロントに宿泊を申し込むと「あいにく満室でございます」と従業員のおねえさんから、あっさりと却下される。

 しょうがねえ。北村ふれあい公園キャンプ場に泊まってもう一度、温泉に入りに来るかとも思ったが、キャンプ場が見つからないんだよねえ。暫し周辺をぐるぐると周り、偵察したがやっぱり発見できず。おかちゃんにも携帯で連絡したが繋がらなかった。そりゃそうか、まだ17時前だ。仕事中に決まっている。失礼しました。

 事ここに至っては致し方ない。潔く岩見沢駅前で、ビジホを探そう。今宵は絶対布団の上で寝たい。豪雨の中でなんで好き好んでテン泊しなくてはならぬのだ。そうブツブツと呟きながら駅前まで辿りづいた。雨は一時的にあがって小康状態となる。

 駅前周辺でさっそくホテルを押さえようとしたら、2件立て続けに断られた。さらに旅館にも2件あたったが2件とも満室とのこと。某旅館の女将の話だと長期滞在の業者がかなり先の日程まで押さえていると気の毒そうな顔で筆者に告げた。

 テントもシュラフも雨でぐちゃぐちゃなのにやっぱりキャンプするしかないのね(TT)

 もういいよ。やっぱり俺はキャンプツーリングの申し子なんだ?

 ということで、頭を切り替えてここから一番近い”いわみざわ公園”のキャンプ場を利用することにした。 
   キャンプに決めたわりには、コインランドリーを見つけてのんびり洗濯をしているキタノさんでした。

”キタノさん、もう時間もおしてきているのになぜのんびりしてるんですか”

 はい、ナビ様がおっしゃるには15分でキャンプ場に着くそうです。
 なんだかんだで、すっかり最新のカーナビに依存しまくっている筆者であった。確かに便利なんだよね。言われたままに動いていれば目的地に到着してしまうのだから。

 でも読図能力とか勘とかが衰えて、北のサムライも落ちぶれていきそう。いわみざわ公園に向かいながらそう思ったが、ナビの横ではシガーソケットで携帯の充電もしていたりする。21歳の我が愛機もハイテク装備が整っておるのう。
 曇天の中、とりあえず”いわみざわ公園”に到着。

 ジェットコースターのある立派な遊園地だった。キャンプ場はこの奥だな。愛機のアクセルをあげるとゲートがあった。なんでも暗証番号が必要だとか。看板を読むと公園の事務所への予約が必要らしい。すなわち完全予約制というやつだ。
 
 とにかく看板に書いてあった電話番号にTELすると、おねえさんが出て一泊千円で、一般サイトの3番に張ってください。代金は後で係の者が伺いますと言って暗証番号を教えてくれた。

 まあ、不潔な無料サイトより、千円ぐらいなら清潔でゴミが捨てられる環境のキャンプ場の方が筆者的にはよいに決まっている。

 ゲートをくぐり指定されたサイトまでいくと既にファミキャンテントが3つほど張られていた。地元の家族連れらしい。こっちを見ている人に軽くお辞儀をしてからテントの設営を始めた。
 
 テントを張り終えて一息ついていると携帯が鳴った。おかちゃんからだ。

「もしもし、キタノさん、お電話をいただいたようで、どうされましたか」
『いや実はね、北村ふれあい公園キャンプ場というのが見つからなかったのだよ』
「北村温泉ホテルの前の大きな池のあるキャンプ場ですよ」
『げっ!マジっすか?ただの公園かと勘違いしてたよ』
 温泉もセイコマも歩いていける便利なサイトなので次回は是非利用してくださいとのこと。

 なんて話して電話を切った直後、まるで堰を切ったがの如くのスコールとなった。どうして毎晩毎晩こうなるの。そんな予感がしたからこそ、今宵はホテル泊にしたかったのだ。と愚痴を言っても時既に遅し。テント内に運べる荷物は全部搬入した。
 クッカーで0.6合ぐらいの飯を炊き、焼き鳥の缶詰をかけて簡単な夕食を済ました。

 食後、TMを見ながら明日のルートを模索していた。さて明日はどこへ行こう。ラジオで聴く天気予報だとどうせどこへ行っても雨みたいだし。
 
 しかし、どんだけ雨が降るんじゃ。フライシートに叩きつける雨音が尋常ではなかった。そしてなかなか眠りにつけなかった。

 酒をビールからワインに切り替える。ボトルの半分ぐらい飲んでもまだ酩酊してこない。

 このまま最北端を目指すべきか。よーよー(よーへいさん)から15日に手塩のキャンプ場でライダーが集まるBBQに誘っていただいている。北に向かっては時期的に少し早すぎた。

 道東に向かおうか。実に5年ぶりに和琴方面を目指すのも悪くない・・・

 なんて考えているうちに意識が消えていた。

 なんだか蒸し暑い熱帯夜が続いていた北の大地である。



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