北海道ツーリング2013








イワオヌプリにて(画像提供:ニセコアンビシャス)



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『今日登る山は、ワイスホルンかい?』
 ナガヤマくんに訊いてみた。
「わっ、イイっす!」
『・・・・・・・・・・・・・・』
 脱力感が。オッ、オヤジギャグだ。こいつは朝から手痛い1本をとられてしまった。

 実際はアンヌプリ登山の予定だったらしいのだが・・・

 アンヌプリ頂上付近の雲の流れが微妙という村長判断で、本日も気候が安定していそうなイワオヌプリへ登ることになった。

 ずっとバイク旅で足腰がなまり切っていたので、同じ山でも絶好のトレーニングになる。

 メンバーは村長、ユミさん、スミちゃん、はっちゃん、ナガヤマくん、タカハシさん、筆者だ。

 
 というわけで、ワイワイガヤガヤ喋りながら昨日と同じ登山口に入った。昨日も午後から確実に雨にやられているイワオヌプリなのだが、石灰岩で水捌けがよいので、ほとんど登山に支障がない状態だ。

 しかし、暑い。大汗をかきながら登っていく。最初の樹林帯は木陰が多く、少しは凌ぎやすかった。
「ゴロウさん、あの山はなんという山なのかな?」
 村長からいきなりふられた。
『あの山は、秩父宮殿下が二兎、つまり2匹の兎のようだとニトヌプリと名づけられました』
 本当はゴロウさんは、そのカタチから○ッパイヌプリと呼んでいたことは内緒だ。そして登山道は帝王切開の後に見えるというのは有名な話だ。ちなみにTOPの画像で登山道が確認できる。

 画像提供:アンビシャス
 
 画像提供:アンビシャス
 爆裂火口に到達。ここまで天候の急変を心配していた村長のペースはいつになく早かった。

 筆者はなんだかダメージが大きくて、はかはかいいながら最後尾を歩いておりました。

 というわけでお決まりのポイントで、はいポーズというわけだ。
 頂上まであと少し。なんだか皆無口になってきた。先頭はタカハシさんで、初心者といいながら、よいペースで歩くではないか。

 天候がやはり怪しい。積乱雲がイワオヌプリ上空に迫っている。そして不気味に遠くから雷鳴が響いていた。果たしてお天気はもつのだろうか?

 画像提供:アンビシャス

   画像提供:アンビシャス
 2日連続でイワオヌプリ山頂まで辿り着きましたぞ。背後には雨雲がすぐそこまで迫っているのだが、なごやかにはいポーズをしていて大丈夫か。結構、危機的状況だったりした。雷鳴も至近距離から聞こえてきた。

 なんだかポツリポツリと雨のようなものが落ちてきた。気のせいではなく、どんどん雨が酷くなっていたと思う。
 そして、ザー・・・

 ゲリラ豪雨だ。さらに雷だ。

 土砂降りとなり、稲妻がそこらじゅうに走っていた。これはマズイ。少しでも標高の低い所へ逃れないと生命の危機に繋がる。

「早く樹林帯まで下りて・・・」
 村長の指示で、皆、一目散に石灰岩の降りを駆けていた。

 ところが・・・

「カッパの下も履きたいんですよ。ゴロウさん、待っててくださいね」
 タカハシさんが、ゆっくり着替えておりました。

 最後尾にいたはずのナガヤマくんの姿も遥か遠くに見えている。逃げ足が速過ぎますぞ。

『タカハシさん、早く逃げましょう。頂上のここのポイントはあまりにも危険すぎる』
 まさか置いていくわけにもいかず、彼女をせかした。

 ようやく石灰の下り坂をペンギン歩きで逃げていく。たまたま落雷にやらねなかっただけで、実は危機一髪スペシャルだったかも知れぬ。
 全員が中腹以下の樹林帯に逃げ込んだ頃には積乱雲が去り、何事もなかったように好天に激変してきた。

 そして雨後なもので湿度が異様に高くなり、もの凄い蒸し暑さとなった。

 これは北の大地の気候ではない。完全に亜熱帯と化している。夏の北海道の天気が激しく変動してきていると痛感した。 

画像提供:アンビシャス 
 
画像提供:アンビシャス
 みんな、結構ビショヌレになったので、いったんアンビに引き返して、着替えてから黒松内方面に向かうことになった。

 車窓から観た巨大な積乱雲。あの雲が先ほどイワオヌプリ上空にやって来てゲリラ豪雨を降らせたのだ。まさにゲリラの如く移動しながらピンポイント攻撃をしかけてくる、Hit&Away(一撃離脱)というやつだ。 
 出かける前にタカハシさんとは、ここでお別れとなる。お世話になりました。

 やがて黒松内のトワ・ヴェールというレストランに到着した。ここは昨年も利用したけどチーズフォンデュが非常に美味しい。

 まずは地元の素材を活かしたサラダがどっさりと運ばれて来た。

像提供:アンビシャス
 
画像提供:アンビシャス
 クリームチーズの冷や奴風。これがマジで美味い。去年、大阪のマスミさんも絶賛していた。

 クリームチーズの上に鰹節をふりかけて醤油をたらしただけなんだけど、もうワインのツマミにぴったりだった。
 ワインはブナの北限で育まれた、”黒松内”のワイン専用ブドウを使用した赤ワイン”ぶなのささやき”である。チーズの料理に本当にぴったんこなお酒だ。

 昼間から恐縮ですが、すいすい飲んでしまった。けど、この程度の量のワインぐらいで酔う筆者ではない?
 
画像提供:アンビシャス
 
画像提供:アンビシャス
 まあ、パンとか野菜などをBBQ串のようなものに刺し、煮立ってとろけたチーズにつけて食べるわけなんです。

 フランス出身のぼくにとっては非常に懐かしい、いわゆるソウルフードというやつなんです。
 トワ・ヴェールで加工したソーセージやベーコンだ。原料はもちろん黒松内産のお肉です。

 これもとろけたチーズに絡めて食べるのだが、その美味さといったら、絶品だ。黒松内町の町興しの真摯な取り組みは特筆に値する。

画像提供:アンビシャス

画像提供:アンビシャス
 この煮立ったチーズに野菜・パン・ハム・ソーセージ・ベーコンなどをチーズ鍋へ実際に串に刺して食べた瞬間の幸福感といったら何物にも代えがたい。

 いや素材の美味しさに、チーズの風味が加味され至高の味だ。筆者の地元にもチーズフォンデュがメインの店があるけど、ここの旨さとコスパに比べたら足元にも及ばん。 
 和気あいあいと会話も弾みながら、黒松内のランチは続いていった。

 かなりボリュームのある昼食だったけど、綺麗に完食した。

 笑顔がお似合いの美しい女性店員さんは筆者と目が合うと優しく微笑んでいた・・・はずなんが、村長もまったく同じことを話していたので、少しショックを受ける。

画像提供:アンビシャス 

画像提供:アンビシャス 
 レストランを出ると本当にお腹一杯で全員が腹を押さえていた。筆者はかなりメタボがやばい状況になってきた。それでも北の大地の料理は絶妙でボリュームたっぷりだから、どうしようもない。

 トワ・ヴェール、西洋の城郭のような造りが印象的だ。そして、チーズフォンデュの美味しさは実に見事である。誰もが大満足の秀逸なお味でした。
 ノブロウくんが、かつて饅頭の買い占め事件を起こした?という黒松内の人気和菓子店”すずや”は定休日でした。

 ご主人手造りで、奥様が販売する和菓子の美味しさは本当に絶品らしい。今回は定休で残念だったけど、いずれ食べてみたいと思う。
 
   近くの夏穂高原という、ここもあまり人に知られてない絶景ポイントにやってきた。凄いパノラマだった。ニセコ連峰や洞爺湖付近をまた違った角度から展望できる。

 帰りがけの駅でナガヤマくんとお別れだ。オヤジギャグ同志を失うことは誠に痛い。でも「また会おう」と再会を誓い握手した。いってらっしゃい!
 夕食後、村長と老舗温泉旅館の鯉川温泉に向かう。正月にも来たのだけれど、このひなびた内湯のワビサビ感が筆者好みで素晴らしい。

 露天風呂も風情があって、実に奥ゆかしい。ほんとこれぞ秘湯という雰囲気にあふれている。

 このような名湯がニセコ周辺には無数に点在するようだ。 
 
 
 画像提供:アンビシャス
 今宵のワインの宴は村長とふたりだけだった。はっちゃんは、明日の羊蹄山登山に備え、早寝されたらしい。筆者も長年の悲願である羊蹄山登山をしたい。

 でもお天気が微妙なのだ。ぼくが上陸してから雨のまったく降らなかった日など1、2日ぐらいか。
 まあ、流れに逆らわないように旅を続けるだけだ。筆者の生き方も流れのままに、自分らしいフッドワークを展開させながら動いていければいい。

 昔、池波正太郎の小説”真田太平記”に登場した滝川三九郎という人物の流れに逆らわない爽やかな生きざまに深く感銘を受けたことを思い出す。自分もこうありたいと誓った20代前半の頃の満月の晩だった。

 今宵の窓の外からも見事な満月が覗いていた。 



イワオヌプリ 夏穂高原 トレッキングツアー
制作:ニセコアンビシャス



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