北海道ツーリング2013








旭温泉にて



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 天塩のゆうみんさんのお店を出発して、延々とオロロンラインを南下していく。一応、お日様は出ているが、雲も多く利尻山は拝めなかった。ただ、やっぱり湿度が高く蒸し暑い。この時期の北海道は、太平洋高気圧からオホーツク高気圧に切り替わり、カラッとした大陸型の気候になるのがほんとうなんだ。なにかがおかしい?

 道の駅”富士見”で小休止。お手洗いを済ませた。結構早い時間だけど、ぞんがい多くのライダーが休んでいた。道内ナンバーのオートバイも目立つ。なにか軽く食べようかとも思ったが、キャンプ場でお茶漬け程度の食事は済ませているので、そのままスロットルをあげた。

 旭温泉の看板が見えたので、内陸部に左折してみた。15分ぐらい原野のルートを走ると前時代的な造りの旭温泉が見えてきた。これなんですよ。筆者が求めている温泉は。古くて味のある温泉施設、いい方を変えれば秘湯感のあるひなびた感じの温泉がよいのだ。

 この温泉は日帰り入浴も8時からやっているので助かります。日帰り入浴料500円で2種類の泉質がある。 
   ホウ酸・食塩と炭酸鉄泉だ。どちらも効能が高いそうだ。多分、内風呂の方が茶色に濁っていたので、炭酸鉄泉だと思う。時間的に早かったせいか、最初は誰も入ってなかった。後から入って来た人も2〜3人程度だ。 
 TMによると6月〜9月、ライダー限定で2000円プランもあるらしい。もう少し、歳をとって体が効かなくなったら、そういうプランも考えてみよう。まだ楽隠居ツーリングをするには早い。

 存分に良質の温泉を堪能し、再びオロロンラインに戻った。海の色が綺麗な初山別村を過ぎた。羽幌町に入る。ずいぶん前に泊まったことのあるとほ宿”吉里吉里”前を通過。この宿の料理はボリュームがあり、大変美味しかった記憶がある。たぶん昔の”ライダーズ名鑑”というファイルに筆者の写真が載っていると思う。

 さらに進むとドライブイン”さわ”を発見。ネット上で調べたのだが、大ボリュームのとんかつで有名だそうな。ただ、筆者はまだお腹が空いてないので、次の機会には是非訪問したい。なにせ筆者はとんかつとビールが大好きなんですよ(オヤジ丸出し)。
 天売国道のどのあたりだろう。風車が林立している丘があった。ちょっと興味が出たので、左折してみた。ダートの坂を登って行くとこんな風景が。

 白い雲に白い風車が同化してしまい、はっきり写らなかったのだけれども凄い数の風車だった。そして、この光景を撮影しに来ている人達も結構いた。
 
   猛暑の中、留萌市内に入った。このあたりで昼食にしよう。目的地は”蛇の目寿司”だ。昨年は発見できずに通過してしまったが、今回はナビ様がおれれるので一発で到着。お盆で混み合っており、30分以上かかりますといわれたが、OK牧場です。オーダーしたのは”蛇の目寿司スペシャル”21貫です。普通に単品でオーダーすると4千数百円もかかるが、なんと2500円でした。しかもネタも新鮮で美味しい。素晴らしいが、多すぎて後半は苦しんだけど。
 お腹ぱんぱんでR231を南下していく。海沿いのトンネルやシェルターをいくつも通り抜け辿りついたのが、こじんまりとしているけど、ぞんがいお気に入りの増毛町の雄冬野営場だ。

 時間的に少し早いような気もしたが、雲行きが怪しいし、本日はここいらで幕営するのが適切だと判断した次第である。
 
 盆過ぎのせいか小さなサイトにテントを張っていたのはファミキャン一組だけだった。子供たちと海水浴を楽しみながら滞在しているようだ。しかし、蒸し暑い。ここは久しぶりに雄冬冷清水で涼むか。湧水に足をつけるとあまりの冷たさに悲鳴をあげてしまう。そんなこんなしながら空を見上げると雲の流れ、空気の流れがおかしい。なんか嵐の前の静けさという感じがした。長年のキャンプライダーの勘なのだが、ひと波乱来そうな展開だ。

 テント前に戻り発泡酒を飲んでいると幼い娘さんを乗せたカブ110がやってきた。

「こんにちは。明後日が北海道ツーリング最終日なんですよ。明日は洞爺湖あたりで泊まろうかと考えています」
 気さくなおとうさんが話しかけてきた。
『そうですか。あのあたりだとグリーンステイ洞爺湖という綺麗なキャンプ場がお勧めです。ぼくもよく利用しています』
「そうなんですか。ありがとうございます。検討してみます。ところで、このあたりに大雨洪水警報が出ているのを御存知でしたか」
『知りませんが、間もなく大変な雨が来そうだという予感はずっとしています』
 なんて言っている最中にポツポツと降って来て、やがてザー・・・
「凄い勘ですねえ。預言者のようだ。驚きましたよ」
 おとうさんは、そう叫びながら自身のテントの方へと駆けていった。

 蒸し暑いテントの中でご飯を炊いてインスタントカレーをかけて食べた。そして焼酎をちびりちびりと飲む。何時だったか覚えてないけど、本を読みながらいつの間にか横になって爆睡していた。

 翌朝、まだ小雨が降っていた。そして、内容は聴きとれないけど人の声がする。誰だろうと思いジッパーの隙間から外を覗くと老婆が筆者のキャンプゴミをあさっていた。中身はビールの空き缶だけである。えっ、なんで?

『おばあちゃん、どうかされましたか?』
 思わずテント内から声をかけた。
「イヒヒヒ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 なにか喋っているようだけど、ぜんぜん聴きとれない。そして消えていった。
   10秒後ぐらいに流石に心配になり、筆者は外に出てみた。けど、おばあさんの姿はどこにも見当たらなかった。

 あまりにも怖いぜよ・・・

 あれはなんだったんだろう。やがて雨はやみ、ぼくはそそくさとテントを撤収し雄冬野営場を逃げるように立ち去った。
 曇天の中、増毛国道を南下していく。さて、これからどこへ行こう。北の大地の海岸線は久々にほぼ一周走った。そろそろ内陸部に行くか。

 富良野に向かいR451を左折すると「浜益温泉保養センターという日帰り温泉施設を見つけた。 
 
 利用料500円。単純温泉でここもいい湯だ。思えば北海道ツーリングをしてなければ、これほど温泉にハマることはなかっただろう。そして、いろんなキャンプツーリングの技を身につけたけど、ツーリング中はテントを張る前に通りすがりの温泉に入っておいた方が、後々ラクチンだと確信している。

 交通量の少ない、R451をどんどん内陸部に向かい進んでいく。やがて新十津川という集落へ入る。奈良の十津川から移住された方の町らしい。

 十津川郷士、実際は違うけど、そう名乗った連中が龍馬を暗殺した。日本人同士が殺し合う内戦を望まなかった龍馬さえ生きていれば福島全域に及ぶ凄惨な会津戦争の悲劇はなかったといわれてれる。
    新十津川町の古い住宅  このあたりの農家なのだろうか。比較的古い造りの家が点在していた。

 ここからぞんがい近くに”サンフラワーパーク北竜”がある。久々に100万本のひまわりでも見学していこうかとも考えたのだが、天気がよくないので諦める。
 雨に濡れながら、滝川市に入った。雨だとすべてがどんよりと見える。落ち込んだ気分の中、スタンドで給油し、そこから見えたラーメン屋さんで昼食をとった。

 「百麺想」という、なぜか不気味な名前のラーメンのチェーン店だ。ここが本店なのかな?オーダーしたのは、焦がし醤油ラーメンのチャーハンセット。
 
 これぞ札幌ラーメン醤油味という濃厚でアブラギッシュな感じのお味で、大変おいしくいただいた。血圧高めの筆者のバディにはよくないと思うのだがスープまで全部飲み干す。ラードが効いた甘辛の旨みがぼくの好みだ。パラパラに仕上げられた半チャーハンのレベルも高い。

 スープが真っ赤で激辛の”炎のラーメン”というのも非常に気になったりした。次回、機会があったらチャレンジしてみたい。

「こんなに雨の中ででもバイクに乗って旅を続けるのですか?」
 会計を済ませているとき、従業員のオバサンが心配そうに訊ねてきた。
『ええ、ぼくはツーリングライダーですから』
 と、答えるとお気をつけてとお釣りを手渡してくれた。

 しかし、こんだけ雨が続くとキャンプをする気がしない。

 お尻が擦り切れるほどバイクに乗った。ほとんど毎晩のようにキャンプで豪雨にさらされた。もう、このあたりでいいだろう。そろそろニセコ入りし、もうひとつの趣味のトレッキングに専念したって充分にキャンプツーリングの面目は果たしたと思う。ただ、長期間バイクで走りまわるだけになってしまうと旅がダレてしまうのだ。何度かそういう経験もあったりした。

 というわけで・・・・・

『もしもし、福島のゴロウですが今日の今日で申しわけありませんが泊まれますか?』
 ニセコの定宿アンビにTELした。
「まあ、ゴロウさん。もちろん大丈夫ですよ。お待ちしています」
 懐かしいユミさんの声にちょっとこみあげるものがあったことは内緒だ。

 雨の滝川ICから道央道に乗った。少しでも早くニセコに辿りつきたい。まるで水上バイクのように水しぶきをあげながら恵庭ICまでやって来て高速道を降りた。

 支笏湖を抜け、喜茂別を過ぎ、ようやくニセコ入りを果たした。いやあ、正月以来だ。実に懐かしい。

『ただいま!』
「お帰りなさい。ゴロウさん、雨の中のキャンプ、大丈夫だった?」
 村長が満面の笑みで話しかけてきた。
『毎晩、スコールにやられて、えらい目に遭いました』
「やっぱり、でも無事でよかったね」

 昨年、意気投合したノブロウくん、マスミさん、イワサキくんたちは、つい先日までいらしたそうだ。再会できずに誠に残念だったけど、またいつの日かお会いできるであろう。 
   ユミさんの心のこもった夕食も美味しくいただいた。この春から札幌の大学に進学したスミちゃん(村長夫妻の娘さん)も帰省していて楽しい会話で盛り上がった。

 筆者はね、常々思っているんですが、ユミさんの料理ってバランスがとれていて実に美味しい。家庭料理プラスなにかが加わっていて食欲を増進させると思う。日頃、とても小食な自分なんですが、ここへ来ると普通におかわりをしてしまう。 
 今宵の温泉は、久々にニセコグランドホテルだった。源泉かけ流し、最大級の露天風呂で有名を馳せる。露天風呂は混浴だが、もちろん浸かっているのは野郎ばっかりでした。

 21時ぐらいから、 軽くワインの宴会をして布団に入る。やはり相当疲れが溜まっていたのだろう。あっという間に爆睡したゴロウさんでした。
 
 今宵の同宿の方は、英国製のスーパーセブンというベーシックな四輪で来られた方と常連の大阪のナガヤマくんでした。おふたりとも明るい人柄で笑いが絶えなかった。

 またもスコールだ。外からもの凄い雨音が聴こえていた。



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