北海道ツーリング2012



後志




アンビ近くのヒマワリ畑






 樽前国道を支笏湖に向け走る。気温が高いが広大な緑の樹林帯のトンネルを突き抜けて走っているカタチなので、とても涼しく感じられた。やがて右手に支笏湖の青く清冽な湖面が見えてくる。北海道ツーリングがようやく始動したという充実感のようなものが全身に分泌してきた。 
   久々に道の駅”フォーレスト276大滝”でトイレ休憩をする。トイレのピアノが自動演奏する仕掛けになっており、バブルの頃は1億円のトイレともてはやされた。

 現在は、あんまり清掃がいきとどいていない不潔な感じがした。やはり、この先の”きのこ王国”で休めばよかったか。
 しかし暑い。R276を喜茂別方面へ向けて走った。ふきだし公園で湧水を飲んでいこうかとも思ったが観光客でごった返していたので止めた。暑い暑いと口走りながらアクセルをあげる。左手には山頂部分だけ雲に覆われた後方羊蹄山の威容が浮かんでいた。利尻山に匹敵する難易度といわれている。何年も前から狙っているのだが何度も悪天候に阻まれてきた。そろそろ頂上踏破をしてもよい時期かなと漠然と考えていたりもする。  
 いつの間にかニセコ駅前到着。宿までは近いと思う。しかし、まだまだ時間的に早すぎる。多分、ニセコ駅前にやって来たのは初めてのことだ。暫しぷらぷらする。

 ここは冬にウインタースポーツで混み合うのかな?夏はなんとなく人通りがまばらな気がした。
 
 近くのコンビニまで移動し、缶コーヒーを飲んでいるとぼくの横のスペースに四輪が停まった。運転していたのは若い男で横には彼女が座っていた。

「いつから北海道にこられたのですか?」
『ああ、今朝、苫小牧に上陸だよ』
「オレも一応バイク乗りなんスよ。今年の道内は異様に取り締まりがキツイんでお気をつけて」
『ありがとう。安全運転を心がけるよ』
「実は、さっきオービスにひっかかってしまいました。過去の違反の積算もあるんで、確実に免許取り消しになるでしょう。チキショウ・・・」
『・・・・・・・・・・』

 いやはやなんともお気の毒に。どう慰めていいかわからず、ぼくは絶句していた。にもかかわらず助手席の彼女は平然とコンビニ弁当を食べていた姿が印象に残る。
   まだ時間がある。苫小牧からニセコって、ぞんがい近いのだ。なら久々にニセコパノラマラインを攻めてみよう。心地よいワイディングをクリアしながら湯本温泉付近までやってくると、周囲がガスってきた。

 ここいらが潮時だろう。もと来た道を引き返し宿入りすることにする。
 今夜の宿”アンビシャス”さんは、すぐにわかった。建物は古いがとても味のある山小屋風のログハウスだ。こんにちはと何度か声をかけると「は〜い」と奥さまの声が返ってきた。物静かで上品そうな感じ漂う方である。本日予約した者です。
「あっ、はい。ようこそ。お部屋は階段をあがって右側になります」
 基本的に男女別相部屋だが、この部屋はぼくひとりのようだ。
 
 荷物を運び終える頃、
「こんにちは。宿帳に記入してもらってよろしいですか」
 お客の誰もからも慕われているオーナーさんである、通称”村長”さんとの初対面だ。

 物腰の洗練された穏やかな方であった。なんでも関西出身で、高校・大学と山岳部に在籍しておられ、ニセコの山や自然を熟知しているそうだ。

「ニセコにこられた目的は羊蹄山登山でしたか。あいにく羊蹄山ツアーは毎日出ていません。頂上付近の天候は暫く悪いようなので、周辺の山々を登って足慣らしをしてみませんか」

 ぼくも今回なにがなんでも羊蹄山を制覇してしようとは考えていない。だめなら明日は函館方面に移動かなあと漠然と思っていた。

 6時半には夕食。奥さんのユミさんが作る家庭料理は、とても美味しかった。ただぼくはフェリーのバイキングでの爆食がたたり、おかずを少し残してしまう。すいませんでした。

「ゴルゴさん(この宿でのぼくの最初の渾名)は、明日の宿とか決めているのですか」
 親切そうな常連さんから声をかけてもらう。通常、連泊者の多い宿ではどうしても常連さんが、新参者を軽視する(ヌシ化する)傾向があるのだが、そんなことはまったくない居心地のよさだった。
『いいえ、特になんも決めてません。ぼくの場合、行き当たりばったりなんですよ』
 本当のことを素直に答えると皆さん、ちょっと驚いていた。
「明日はミステリーツアーですよ。無人島探検なんです」
 村長さんが、にっこりと微笑んでいた。

『明日の無人島探検、ぼくも参加させてください』
 思わず連泊を申し込んでしまう筆者である。
   夕食後、希望者は温泉へ連れていってもらった。”ニセコグランドホテル”の温泉施設の充実度はあまりにも素晴らしすぎて度肝を抜かれた。女性は居なかったけど広々とした混浴露天風呂の野趣は満点であった。

「このあたりに美味しい湧水がでるんです」
 常連のコサカさんが、帰りに教えてくれた。そんな情報地図にも出てないのによく知っていると感心した次第。
 宿に戻ると会費制(300円)の宴会。ワインを飲みながら楽しく語り合う。驚いたことに皆さん、こちらの宿を利用して20年、10数年という古参の常連さんばかりでした。

「羊蹄山狙いですか。ゴルゴさんは、硬派ですねえ」
 ぼくと同じ歳というノブロウさんは人の良さが本当ににじみ出ている好漢だった。2週間、最初から最後までこちらに滞在されるとのこと。

 ただし、ぼくの硬派という印象は、数日後にはエロオヤジの間違いだったと見破られてしまう(謎)

 一見強面の大阪のマエダさんもお地蔵さんのように穏やかな人柄である。

 家族連れのキーボーさんは、お若い頃にはこちらの宿の常連さんで、今回は復活の利用だそうな。

 心地よく酩酊し、22時には布団に入る。少し寝苦しい。北の大地では珍しく熱帯夜の晩だった。

 明日の秘島ツアーが、とても楽しみだ。




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