北海道ツーリング2012



後志




女郎小岩



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 未明に豪雨の音が聴こえていた。朝、目覚めた頃には小雨になっていたが本日の登山は無理だと思う。

「カワベさん、積丹っていったことがある?」
 村長が何気に訊いていた。

 もしかして本日のツアーの目的地は積丹半島方面かな。かの地は景勝地として知られているが、ぞんがいアウトドアポイントとしての穴場も多いと聞く。

「一応、それなりに歩く用意をしてね」
 村長さんの運転で宿を出発する。なんとなく積丹方面なのはわかるが、具体的にどこを目指しているのかは予想がつかない。

 車窓から見た風景はどんよりと曇っている。かろうじて雨が降っていない状況だ。
   道路脇の売店で少し買い物タイム。トウキビ、メロン、スイカなどが売られていた。

 イトウさんがプチトマトを購入し、分けてくれた。ニセコ産のトマトは甘くてとても美味しい。

 なんでも余市産のメロンとワインは絶品で、道内一の味を誇っているそうだ。
 牧場、農園、時々小さな集落。うちのPCでは変換不能な仁木町を走っている。天気が悪いわりになんだか蒸し暑い。盆過ぎの北海道とはとても思えない。

 おっと仁木町、多分、何度かはここの町を通り抜けたことはあると思う。でもぼくの印象にはまったく残ってなかった。いろいろ調べると豊浦の礼文華のように隠れた名所というか穴場があるのだろうなあとふと思うなり。今回の旅で、いかにぼくがただバイクで通り抜けていただけという事実を思い知った。
 まずは余市ワイナリーに立ち寄る。画像はパーキングから撮影したものだが、実際は奥に深く連なる洋館であった。

 周辺をよく見ると敷地の外に葡萄畑が広がっていた。あの葡萄もかの有名なワイン”ナイヤガラ”にも使用するのだろうか?
 
   この施設の中のリカーショップで販売しているワインソフトクリームを全員が購入する。

 このソフトの美味さはなんだ。我が人生ベストスリーに入るくらい秀逸な味なり。ほんのりと漂う葡萄酒の香がたまらなかった。

 というわけで、今夜の宴会用に余市ワイン1本を購入し、ワイナリーを後にした。
 続いて余市の燻製屋に到着。ここが噂の南保留太郎商店ですか。一度は訪ねてみたいと常々思っていたのだが、ついに念願成就する。

 なんでも先人(多分、アイヌ民族だと思う)が作っていた燻製の復元にチャレンジしているそうだ。
 
   いろいろな海産物の燻製が売られていたが、定番は”ヘラ蟹”だと思う。蟹の濃厚な味とチップのワイルドな香が絶妙にコラボしていた。

 こいつは旨い。福島県の浜通りで生活した期間が長かったもので蟹の食べ方はお手のものだ。しかし、このヘラ蟹って南相馬でよくネットの仕掛けで釣っていた。懐かしいねえ。
 蟹の燻製を堪能した後は、比較的近くにあったロウソク岩を見学する。

 波の浸食で出来上がったのは間違いと思うが、よく建っているもんだ。手で押しただけでも倒壊しそうな微妙な岩だ。でもそんなことをしてはいけませぬ。 
 
   ちょっと記憶に自信がないのだけれど、旧ワッカケトンネル?北海道のダートをほとんど舗装道路で埋め尽くした北海道開発庁とやらが、無用論に押され存亡の危機に立たされた。その時節柄豊浜トンネル崩落事故が起きる。それ来たとばかりに積丹の美しい海岸線のルートは内陸部に移され、トンネルも塞がれたそうだ。せっかくの風光明美な積丹半島海岸線ルートの魅力も半減されたとか。
 これも記憶に自信がない(近頃、老化が著しいせいか、そればっかし)が、白岩?遠くから見ると本当に山肌の白さが際立っていた。

 ちょっとクライミングしてみたいとか思ったけど、最上部はオーバーハングしているので筆者程度の力量では無理であろう。
 
   大国岩と恵比寿岩。こんなに見事な奇岩も廃道となった現在は埋もれてしまい、ツーリングマップルにさえ載っていない。

 逆に穴場中の穴場となったことが、幸か不幸か?

 興味のある方は探してみてくだされ。
 積丹岬パーキングへ到着。なんでも神威岬の方は道が崩落したため立ち入り禁止だそうだ。

 というわけで、歩いてトンネルをくぐり積丹岬へ向かうのかなと思いきや灯台へ向かう急な上り坂を歩いた。
 
 ベテランの村長さんや、よく山に入っている筆者の登りの速度はスピード違反だったようだ。イトウさんやカワベさんから速いとお叱りを受けた。

 また、イトウさん、カワベさん、筆者の予想はここが目的地ということで一致していた。

 ところがどっこい、ここから散策路を歩き、さらに奥地へと進むらしい。なんだか手強いルートの予感もしてきたぜよ。
   この段階での最終地を知っているのは村長だけだった。

 果たしてどこまで歩くのだろう?不安というより、むしろ楽しくなってきているのはなぜ?
 灯台から、だいたい2時間ぐらい歩いたと思う。ここが目的地の女郎小岩だ。 

 積丹岬には、過去2回ぐらい来ているけど、女郎小岩まで歩く散策路があるなど、まったく知らなかった。

 女郎小岩は義経を想うシララ姫の化身と言われている。義経さん、女を泣かしちゃいかんぜよ。
 
   ここで昼食を摂り、暫しまったりと時を過ごす。昔、新婚の頃の船長さんは、ユミさんとここに来たことがあるそうだ。当時は、散策路とか整備されておらず、荒れ放題のルートを命がけで踏破したらしい。

 左から、カワベさん、筆者、イトウさんと記念写真を撮影。流石にここまでは、そんなに滅多やたらにはやってこれないと思うなり。
 帰路、歩行者専用の洞門をくぐり、久々に島武意海岸をのぞむ。

 相変わらず、積丹ブルーが美しかった。来るたびに思うのだが、ここで海水浴をしている人々が羨ましい。

 カワベさんと階段の下の方まで下りようとしたら、そろそろ帰るとのこと。
 
   宿に戻り楽しい夕食タイムとなる。カワベさんもイトウさんもとても明るくていい方々だ。とにかく笑いが絶えない。近頃のぼくに不足していた表情だと思った。

 そして宴会へと。午前中密かに?購入していた余市ワインを出した。おっ、いしい、ねっえええ〜

 ↑田中邦衛風(流石にくどい) 
 つまみというかデザートというか非常に美味しいメロンを御馳走になる。

 北海道のメロンが甘いのは、朝晩と日中の寒暖の差が大きいのがよいといわれているが、近年の夏の北海道の暑さはほとんど本州と変わらなくなってきたと思う。道産の米も異様に美味しくなったし。
 
   カワベさんが村長のリクエストに応え、某ドラマの爆笑のシーンを再現されていた。

 とても愉快な方で癒されました。

 ぼくは、そのドラマを観てないのだけれど、カワベさんの表現力というか演技力が素晴らしいと痛感した。 
 こういう展開になると、ゴロウさんも黙っているわけにもいかず、北の国からネタが連発したり、ついにドラマ”仁”に登場する龍馬さんのモノマネが炸裂してしまう。

 そして早くも九州のイワサキくんのモノマネも。もう、ユミさんはお腹を抱えて大爆笑が止まらなくなった。

 そういえば、ドラマ”仁”の後編で、アンドウナツを南方は作っていた。

『センセ、アンドウナツはできたがぜよ』
 やたら龍馬の台詞を真似たりしていた自分なのですが、カワベさんは昼食にアンドウナツを買ってくれていた。ちょっと嬉しかったりしたゴロウさんである。

 ぼくにとって、とうとう2012夏の最後の北海道の夜となった。

 早寝早起きのアウトドアの宿なのに、今宵は珍しく12時をまわるまで飲んでしまう。

 正直、ぼくは寂しかった・・・

 この日の動画:ニセコアンビシャス制作




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