北海道ツーリング2011



きたの細道




道の駅寒河江にて







 今日から休みだ。いろいろな葛藤があったが、「後でストレスを溜めるより、旅にいってくれば」という妻の言葉に背中を押され、久々に北へ向かうことにした。

 北の大地に向かうのなら、必ず2ヵ月前にフェリーチケットをネットで購入している。だが、今回の原発事故で、なんとなく自粛ムードが個人的にあり、北海道へのチケットはもちろん入手してなかった。

 昨日までは、天候が悪く雨の日が続いたが、旅に出ると決めたら、天空もきっぱりとブルースカイとなった。というよりも暑すぎる。荷物は、ほとんど先日の都賀キャンツーのときのままなので、ロングツーリング用に若干積み加えて出撃だ。

 時刻は、既に11時をまわっている。セル一発始動で東北道へと向かった。当初は、新潟へ出て”笹川流れ”を楽しみながら北上しようと考えていた。だが、数日前の福島・新潟豪雨(19万人以上避難)で奥会津から新潟にかけて大被害を受けてしまったので、山形方面へ抜けることにする。

 このツーリングの大雑把なルートも震災のダメージの大きい太平洋側は復興作業の邪魔になったら申しわけないので基本的に走行しない。奥会津・新潟も同様の理由で迂回したのだ。

 というわけで、福島西ICから東北道に乗った。初日はできる限り高速で距離を稼ぐつもりだ。もわっとする蒸し暑い空気の中、宮城との県境のゆるい峠を抜ける。既に熱中症寸前のような気がした。

 村田Jctから山形自動車道へ乗り換える。一向に衰える兆しのない、いや逆にますます強くなる陽射しの中、延々と農村風景の道を駆けた。

 お昼もずいぶん過ぎたので、寒河江SAにて遅い昼食をとることにした。それが、このページ冒頭のサービスエリア内の画像である。レストランにてチャーシューメンを食べた。暑いときには熱いものを食べて夏バテを予防するのだ。味は、まあまあかな。しかし、直後にバケツで水をぶっかけられたような大量の汗が噴き出した。

 月山の霊峰を拝んでいると山形道はいったん道が尽きる。月山花笠道路という自動車専用道路に続き、また庄内あさひから山形道にふたたび乗りなおす。つまり山形道は、この部分がまだ繋がってないというわけだ。

 筆者は、この自動車専用道路をあえて利用せず、月山ICから六十里越街道という山間のルートをとった。実は今宵の野営を山形県志津野営場にしようと考えていたのだ。

 細くてカーブばかりの山道を延々と走ると大きな駐車場が見えてきた。かまわず先に進むと国民宿舎が建っている。ここの裏手がキャンプ場のようだ。

”駐車場に車を停めてください”という看板が目に入った。

 なるほど乗り入れ禁止というわけだな。しかし、駐車場からサイトまではかなり遠い。重い荷物を抱えて、ここまで運ぶことなど大変な難儀だ。特に過積載の筆者にとっては致命的な距離である。

 結局、ここでの設営は無理と判断し、踵を返す。

 狭くて高低差のある山道を苦労しながら下って月山道路に戻った。かなりの時間と労力を消費してしまったが、これが流離いの旅というやつだと思う。

 自動車専用道路だけにワインディングはあっても道幅があり、路面状況も良好である。追い越し禁止でもあるが、それなりの速度で巡航していた。すると性格悪そうな面をしたオジサンの運転するセダンが筆者の横をすれすれで追い抜いていった。確かに黄色いラインはオーバーしてないかもしれぬが、ギリギリでやられるとドキッとくる。筆者は心臓が弱いのだ。無体なことは勘弁願いたい。

 途中、ドライブインでトイレ休憩。お勧めのご当地名物?を使用したアイスクリームが地味に美味いのであった。さて、急がねば。少し、あたりが暗くなってきた。キャンプ旅は、「泊まる場所が見つからない」っていう緊迫感もたまらぬのだ。でも本当に見つからなかったらまずいので、慌てて出発する。

 ふたたび山形道に入り、鶴岡を過ぎ酒田も過ぎると”酒田みなと”というICで高速道路が尽きた。もう、陽が沈みかけてきた。コンビニでジュースを飲みつつ、TMで確認すると近くに八森公園というキャンプ場があった。というか、このあたりではここしかない。

 やや彷徨いながら八森自然公園到着。野球場やらテニスコートやらゴルフ練習場など、たくさんの施設が存在する広大な総合公園だった。とにかく標識に従いながらキャンプサイトの方角へ向かうと管理事務所へ辿りついた。

『あのキャンプしたいんですが』
「それでは、この用紙に記入してください」
 管理人さんに言われるままに住所などを書き込み、利用料735円を支払った。

「本日の利用はあなただけだから、入口の炊事棟あたりに自由にテントを張ってください。あとこの坂道を右に下ると温泉施設があります」
『はい、お世話になります』
 事務所から、さらに暗い坂道を登ると炊事棟が見えてきた。

 炊事棟の奥にバンガローが3件ぐらい建っているが、キャンプサイトは見えない。とにかくテントを張ってしまおう。急いで、カヤライズ2をひろげた。
   手慣れたもので(というより張り易い構造)、あっという間にカヤライズを立て、フライをかけた。そして飯でも炊こうとキャンプ椅子に腰かけると大量の虻と小さな蜂?から集中攻撃を受ける。防戦一方でなんにもできん。これではたまらんと坂の下にある温泉施設”八森温泉ゆりんこ”へゼファーで退却していく筆者の雄姿?が見られたそうな。 
 利用料400円のゆりんこは露天風呂もあり、とてもいい湯だった。ただ、旅用カミソリをここで紛失してしまう。結構高いので、がっかりした。

 虻だらけのキャンプ場に戻って飯を炊くなんて、想像を絶することなどで併設のレストラン”鳥海”にて夕食をとることにした。オーダーしたのは、野菜炒め定食であるが、まあ可もなく不可もない自分でも作れる程度の味を楽しむのであった。

 暗くて誰もいないのに虻ばっかりのキャンプ場に戻りたくないけど、意を決して踵を返した。テントの前に辿りつく前に既に執拗な虻の攻撃は始っている。慌ててファスナーを開け、中に飛び込んだ。蚊取り線香程度ではまったくものの役には立たない。明日は防虫スプレーを忘れずに買わないと。

 そんなことを思いながら、バックからウイスを取り出し、ちびちびと飲む。ラジオからは野球中継ばかりが流れている。おっ、ハンカチ王子が投げてるみたいと思ったりしたり。明日の天気もよい。いや、本日以上に酷暑のようだ。

 そして、今宵の意識が消えていった。




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