北海道ツーリング2007
麓郷”中畑工務店”前
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早朝、雨の音で目覚める。 くそう、今日も雨かと思いつつ、登山用のレトルト梅粥をバーナーのお湯で温め、口に運んでいるとどうやら雨があがってきた。 炊事棟で、洗い物や洗顔を済ませ、テント撤収を開始する。濡れたままのテントをたたむのは本意ではないが、テキパキと収納していく。 パッキングが完了し、管理棟へ挨拶へ向かった。どうやら、キャンプ場の管理人さんは、この時期は泊まりの常駐のようだ。 『おはようございます。これから出発します。お世話になりました』 「夕べは、よく眠れたかい?」 『ええ、お蔭様で』 蝉の声がかまびすしく響く中、おじさんはとてもよい笑顔で応えてくれた。 空は雲が多いが、少しだけ陽が照りつけている。そんな中、莫大な荷物をパッキングしたゼファーが、江別の山中をとぼとぼと走っていく。ねっとりと蒸し暑い不快指数の高い日よりが今日も続いている。 R12をひたすら北上。岩見沢に入ると、またもポツポツと雨があたり始めた。なんだかバイクを走らせる気力が薄れて来た頃、会員になっているネット喫茶を発見する。ここで休憩し、雨宿りを兼ねてクーラーで涼み鋭気を養うことにした。 いやあ、実に涼しくて極楽のようだ。テントのフックコードを紛失し、いちさんたちから助けられた経緯、荒天が続き辟易していることなど、ブログにも近況を綴った。まあ、ほとんど愚痴なんだけど。 本当にこれから、どこへ行けばよいのだろう? とりあえず富良野方面へ向かい、十勝岳や旭岳などの大雪山系の山行を目指すしかないかな。 三笠付近で右折し、桂沢湖から富良野に向かう。途中、バッタの大発生エリアに遭遇し、Tシャツ姿の俺は体当たりを何度もくらって痛い思いをする。やむなく愛機を停めてジャンパーを着こみ、暫く走ると富良野入りだ。 十勝岳の方角を見るとどんよりと雲がたれこめ、向後のお天気の見通しは暗い。とりあえず昼食をとろうと思い、久々に人気のカレーのレストラン”唯我独尊”で、いつもの行列に並ぶ。 ここは無理せずカミフの道楽館に宿泊できるか問い合わせてみる。すると当日の、しかも午後の予約ながら、宿主のソットーさんは、ぞんがい快く承諾してくれた。今宵は、お天気の情報を探りながら、宿で疲れをとろう。 |
激混みの唯我独尊も台湾からの団体さんたちが、一斉に店を出始める頃になると、スムーズに行列が動き始めた。 店員に案内されるままに席につくと若いカップルと同席になり、少し気を遣ったが、スパイスの調合から始めるという黒いカレーは、いつ食べても本当に美味しいと思った。 |
ヌルイ空気をいっぱいに浴びながら花人街道をひた走りカミフへと向かう。これは本当に本州の梅雨の時期そのままだ。バイクに乗っていても全身が蒸れる。 ようやくトリックアート美術館が見え、右折して道楽館へ辿り着いた。宿主のソットーさんへ挨拶をし、自らの手でジョッキにハートランドビールを注ぐ。プハー、夏はこれに限る。 お風呂も頂戴し、2階への階段を登りかけているときだった・・・ 「おい、オッサン、オッサン・・・」 と呼ぶ大きな声がした。 俺のことかい?しかし、確かにオッサンかも知れないが、そんなにはっきり言わずとも? 振り返って玄関付近を見ると・・・ 俺より、遥かにオッサンの姿があった。あっ、思い出したぞ。あなたは確か2002年に利尻島へのフェリー、それも往復で知遇を得、復路では、ここ道楽館を紹介した記憶もある。 そう、ロードスター乗りの、厚木の社長じゃないですか。実に5年ぶりの再会となるか。既に御歳○○歳となられたそうだが、矍鑠とした旅系ライダーぶりであり、その後も毎年”北海道ツーリング”をお孫さんの制止を振り切りながら元気に継続していたそうだ。 道楽館へ毎夏やってきて、”キタノさんはいつ来るの?”と再会をとても楽しみにしていたらしい。 社長は、連泊して昨日は旭岳、本日は悪天候の中、十勝岳を踏破されたそうだ。いやあ、本当にお元気そうでなによりでした。 また、過去のツーレポを丹念にご覧いただき、俺の旅した足跡を再現していおられるそうだ。 |
根室の花咲港でも花咲蟹を存分に堪能されたとのこと。ただ、BBSへの投稿のやり方がわからなくて連絡がとれなかったそうだ。お名前と文章を書いて送信ボタンを押すだけなんですと一応説明はしたが。 社長の近所には、キャンプ仲間の”とも”さんが住んでいるので、ソットーさんの携帯から、一度、社長のところへ遊びに行っては?などと連絡をとったりもした。 |
社長 |
その後も増毛の宿から来られたライダーさん、ソットーさん、ヘルパーさんたちと美味しいダッチオーブン料理(今宵のメインはスタッフドチキン始め、いろいろと)を頬張りながら、楽しい宴はエンドレスに続いていくのであった。 でも、外はやっぱり激しい雨だった。 |
翌朝、外に出ると隣の宿のお庭には、なおさんの姿が見える。羊の宿もお客さんが多く、とても忙しそうだが、わざわざ出てきてくれた。 「キタノさん、今年も来たのね。また後でね」 と踵をひるがえして仕事へと戻っていく。 空は薄暗い。本当にいつになったら北の大地に夏の空がやってくるのだろうか?やる気がなくなるような連日の気象条件に辟易する。 |
朝食の鳥粥を腹一杯いただき、今日はどうしようと思案する。天気はどうせよくない。ここは無理せず連泊!ということでお願いした。 社長は、お孫さんと後日訪れる旭山動物園を下見してから、札幌の宿に泊まり、翌日には復路のフェリーに乗船されるそうだ。 ロードスターで出撃される際に 「じゃあ、また!」 |
まさに満面の笑みを浮かべていたのが、とても印象的だった。 どうかお気をつけて。 また、お会いできる日を楽しみにしております。 カミフの空は雲が少し切れ、ようやく薄日が差してきた。 |
さて、今日はなにをしようかと思っていたところ、 「わたし、麓郷へ行ったことがないんですよ」 ヘルパーさんのイノッチが呟いた。 『俺、今日はやることないし、案内する?』 何気に俺がいうと、 「本当ですか。お願いします」 ということになり、日中はイノッチと麓郷を散策することになる。 画像は初期の五郎の家。 |
いや〜実は俺、”北の国から”のファンなので、もう2度も麓郷を訪れていたりする。イノッチもかなり熱心な視聴者だった。 まあ、こういう機会でもなければ、今さら足を運ぶこともないのだが、”拾って来た家”、”石の家”を久々に拝むとまたウルウルしそうになった。 |
昼食はレストランにて、彼女が案内してくれたお礼をしたいということで、美味しい”煮込みハンバーグセット”をご馳走になってしまった。女性から食事を奢ってもらうことなど俺の旅人しての矜持が赦さない。でも、”断って”と仰せなので甘んじて受けることにした・・・ ご馳走さまでした。 そして帰路、激しい雷雨をともなう夕立に襲われてしまう。 ふと女房の怒りのようなものを感じた気がしないでもない。 |