北海道ツーリング2006








知駒峠にて






 ざっと2時間・・・

 フェリーの2等客室で爆睡。TVでは高校野球の中継もやっていたが、睡魔に負けて昏々と眠り続けていた。

「間もなく稚内へ入港します。おクルマ及びオートバイのお客様はご移動をお願いします」
 船内放送で目覚めた。

 ふらふらしながら階段を降り、マシンへタンクバックを装着した。やがて稚内上陸。やはりうだるような暑さだった。

 すぐさま稚内駅に向かい立ち食い蕎麦をすするキタノの姿あり。

 ここはとにかく定番のオロロンラインだな。

 抜海の標識の方向へ機首を向けた。

 熱風の市街地を抜け、オロロンラインへ入ると空気がヒンヤリとしてきて心地よい。だが、ここから利尻山の威容は、雲にかくれていて拝めず。

 残念・・・・・

 しかし、いつ訪れても見事だ。サロベツ原野の緑が実によく映えていた。

 まさに世界最高の道だ。
 さすがにライダーの数が増えてピースサインのアラシ。ピースサインは否定しないが、もう少しこの絶景を楽しんだらどうだ?

 やむなく俺はマシンを停車させ、景色をゆっくりと堪能した。

 南の方角には大きな積乱雲が見える。この先は雨だ。俺の野生の勘がまた警戒信号を慣らし始めた。
 ふたたびマシンに跨り、サロベツ原野を突き抜けた。

 稚咲内付近で、羽幌方面の大きな雨雲がどうにも気になった。このままオロロンラインを南下すれば、間違いなく雨にやられるだろう。

 思案の末、豊富温泉方面へ左折し、道北内陸部へ進路をとった。

 豊富町へ入ると雨上がり。豊富温泉前は小雨。でもカッパを着るほどではない。またも奇跡的に俺の進行方向は雨を避けている。

 まだまだ森羅万象は我が掌中にあり?

 このあたりは離農した農家の廃屋が多く、とても寂しい気分になった。

 やがて道道785、この項、冒頭の画像「知駒峠」へ突入。

 全面舗装で快適なワイディング、本当に穴場といえるコースだ。すれ違うクルマもない。PAで小休止し、煙草へ火をつけた。峠からの眺望も実にいい。快晴であれば遙か利尻山まで望めるらしい。

 それにしても、この暑さは絶対に異常だ・・・
 陽が傾いて来た頃、音威子府到着。

 駅で名物の「音威子府蕎麦」を賞味しようと思ったが、あいにく時間が遅過ぎて閉店していた。

 ガビーン・・・

 駅構内の旧上音威子府駅を再現した模型及び等身大の人形を撮影し、スロットルをあげた。
 夕暮れのR40を北上していると「一路」という食堂が見えてくる。実は昨年も利用したのだが、ここの音威子府蕎麦も美味しい。

 ボディビルダーで筋骨隆々の若いオーナーが運んで来た独特の黒い盛り蕎麦はコシがあって、なかなかの味わいである。

 450円というリーズナブルなお値段も嬉しい。わざわざ蕎麦だけを購入しに来る客も多い。 
 蕎麦を堪能し、R40を南下。そろそろ疲れが出始めた。今宵の野営地はと。

 TMによると「天塩川リバーサイド」がある。ここにしよう。国道から右折すると天塩川温泉が見えてくる。そして裏手にキャンプ場あり。

 乗り入れ不可。炊事棟が遠い。トイレはさらに遠い。また盆時期なんでテント林立。

 まあ、無料なんで贅沢はいえないが。
 重い荷物を抱え階段を登りサイトまで歩いた。

 そして、さっさとテントを設営し、徒歩で天塩川温泉まで向かう。

 「天塩川温泉」、泉質は硫黄泉。源泉の温度は18℃。

 大正時代後半から昭和初期にかけて、常盤鉱泉の名称で温泉が開かれた。当初は飲泉による治療を目的とした温泉だったらしい。

 さすがにいい湯だ。露天風呂からは天塩川も見渡せる。じっくりと露天風呂に浸かった。風呂からあがる時、ヘソの少し下を虻に噛まれた。コンコンチキめ。

 蒸し暑い熱帯夜の中、蚊に喰われながら酒を飲んでいると、あっという間に全身に酔いがまわってきた。相当、疲れがたまってきた連続キャンプ10日目の夜・・・

 ファミキャンの喧騒もまったく気にならず早い時間に爆睡・・・

天塩川温泉
 翌朝、早寝したから早起きできるかと思ったがダメ。何度も目覚めるが、また寝てしまうの繰り返しだった。

 いくらでも寝れる。俺は完全に堕落した旅人になっていた。今日もやる気が出ないぐらい暑いし。

 でも、エイ・ヤーと我慢して起きると10時を余裕でまわっているじゃないか。
 こんなに寝たら目が潰れちまうぜ。

 容赦なく照りつける日差しの中、またも天塩川温泉まで歩いた。北の大地なのにこの陽気、やっぱりなにかが狂っているとしか思えない。

 ぶつぶつとモンクを垂れていたが、クーラーの効いた施設に入ると蘇えった。

 そして、温泉でまったり。まあ、疲れが溜まっている時はお風呂で癒すのが一番いい。

 と言いつつ・・・

 ふにゃふにゃになって、ますますダルい気分になった俺は、高校野球中継を見ながら休憩室でダウン。本当にとろけちまうようによく寝てしまった。

 気がつくと、もう午後の遅い時間じゃないか。

 どうも、このキャンプ場で連泊する気にはなれなかったので、だらだらと撤収。そしてパッキングを済ませ遅い出発。

 ムンムンムラムラと暑いR40をさらに南下した。

 やがて美深町へ。 
 ふと「井上食堂」の看板が目に入った。もう、料理を作るのも面倒なんでここで夕食にしよう。

 店に入ると凄い混雑。暑いので名物ソフトクリームを買いに来たお客さんばかりだった。

 食堂の利用者は少ない。なにを食べよう?ラーメンでいいか。しかし、スープの種類から、麺の種類まで多過ぎてなにを選んでいいのか分からない?
 スープは、鶏ガラ、豚ガラ、トンコツ、白濁・・・

 麺は、西山麺、札幌麺・・・

 セレクトが非常に面倒だ。

 とりあえず、スープは鶏ガラ、麺はおまかせ。トッピングは90円でチャーシュー。もちろん大盛でオーダー。

 すると途方に暮れるぐらいの量のラーメンが運ばれてきた。味は、鳥ガラベースだとあっさりし過ぎかな?豚ガラの方が俺は好みだ。

 トッピング90円のチャーシューは、なんでこんなにというぐらい恐るべき量だ。

 腹から、チャップチャプと音を出しながら、井上食堂を後にする。
 あたりが薄暗くなってきた。今夜のネグラを探さないと。ここから近いキャンプ場はと。森林公園びふかアイランドにするか。

 しかし、昨夜の天塩川リバーサイドから10キロも離れていない気もするが、まあ暑いからいいか。

 やや逆戻りし、久々に美深キャンプ場入りを果たすと想像を絶するほどファミキャンで混みまくっているし。
 ここは、バイク乗り入れ可の全面芝のサイトでライダーからの人気も非常に高い。しかし、テントを張るスペースが見あたらないなあ。

 きちんと受付を済ませ、利用料を払ってからサイト内をマシンでうろうろする。

 途方に暮れていると、ライダーでもあるおじいさんが現れ、
「この奥だと、少しスペースがあるよ」
 と教えてくれた。
『ありがとうございます』
 礼を言い、お勧めのスペースを確保した。助かった。そしてテント設営。

 もう、あたりは真っ暗なのに、作業をしていると汗ばんでくる。今夜もまた熱帯夜のようだ。

 テントを立て一息つき、キャンプ椅子とテーブルを外へ出し、ヘッドライトを頼りに読書開始。

 どのぐらい経ったろう。流石に眠くなり、テントに入った。
すると、
「よろしければ一緒に飲みませんか?」
 向かいのテントのライダーからお誘いを受ける。

『ええ、では飲みますか』
 俺ももちろん同意して彼のテントの前に移動した。さらにお隣のテントのBM氏も加わり楽しく歓談した。

 BM氏も利尻に渡っておられたとか?
 誘ってくれたライダーは、名古屋のバハ氏。

 ふたりとも本当に気のいいライダーさんで、心地よく酔い、旅について大いに語り合った。

 がっ・・・

 あまりにも会話が楽し過ぎて、つい時を忘れてしまった。

 すると、さっきのおじいさんライダーから、
「遅いから、もう少しボリュームを下げてね」
 とお叱りを頂戴する。

『分かりました。もう休みます』
 良識派のお二人は、すぐにテントの中へ入った。

 俺は自分のテントの前で暫し煙草をふかしていた。

 世はまさにお盆の真っ最中。

 しかし、俺は夏バテの真っ最中だった。

 チラリと顔を出した美深上空の星々が、すぐに雲の間へと消えていった。

 この旅もついに「EOC美流渡2006」、驚愕の宴・・・

 いや、年に一度のキャンプライダーの集いの本番へ向け、静かに始動しつつある。

 今宵の美深も急激に夜のしじまが広がっていく。

 虻に刺されたヘソの下が、むず痒い。



HOME  旅人の系譜TOP  10