北海道ツーリング2006







EOC美流渡2006




やっぱり・・・(画像AO氏提供)



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 は〜あああ。

 今朝も安らかに寝坊。テントの中の蒸し風呂状態に耐えかねて這い出した。

 テントの前のキャンプ椅子に腰掛け、くわえ煙草で呆然としていた。その姿は、まるで寝起きの池中玄太そのものだ。

 ファミキャンの朝の喧騒は、とっくに始まっていたらしい。

 昨夜のバハさんは、完璧にパッキングを済ませ、
「お世話になりました」
 と丁寧に挨拶をして旅立っていく。BM氏は早朝に撤収したらしい。
『どうかいい旅を』
 俺は大きく頷きながら手を振った。

 俺はまだ完全に目覚めておらず、フラフラとトイレに歩いた。しかし、トイレには人だかりができるほど大渋滞だった。もう、混み合うキャンプ場は懲り懲りだ。人気のないところで、幕営したい。しかし、お盆の真っ只中では、どこもいっぱいだろうな。

 猛暑の中、不承不承、撤収作業を開始する。本当にやる気のなくなる暑さに辟易する。

 とりあえず明日は、EOC(永久ライダー・オフ・キャンプ)だ。できる限り南下し、美流渡温泉錦苑のパークゴルフエリアに近づいておかないと。

 高温の中、ダラダラとスロットルをまわした。

 蜃気楼のように路面がゆらゆらと揺れている中、R40を旭川へ向けマシンを走らせた。

 途中、名寄バイパスなる自動車専用道路に入る。無料だし、それなりの巡航速度で走れるので、かなり心地いい。ついアクセルが上がりがちになるが自粛する。やがてバイパスが尽き一般道へ降りた。

 ふたたび熱風吹き荒れる中、負けじとスロットルを握り、風連、士別の街を突破した。途中、コンビニで凍ったレモンウォーターをゲットし、登山用のボトルケースに入れ肩から吊るした。そしてチビリチビリと信号待ちのたんびに飲み込んだ。そうしないとマジで熱中症になりそうな陽気だった。

 もう、やってられない。いくらなんでも暑過ぎっス!なんなんだ?この熱波は?

 やがて旭川へ・・・

 市街地で昼食にしよう。ここは贅沢だが、スタミナ確保のためにステーキハウスにするか。やはり盆時期で混み合う店内へ入り、サーロインステーキをオーダー。本当は極度に不足している生野菜を補うためにサラダバーを利用するのが目的だった。

 もりもりとハッパ、いや野菜を食べた。しかし、サラダだけで腹一杯になり、ステーキが重くて残しそうになった。

 満腹でレストランを出たが、今宵はどこで野営しようか。もう激混みキャンプ場は勘弁だ。

 そうか、1日早いが前乗りして美流渡で幕営するという手もある。いや、美流渡なら間違いなく盆時期でも空いているだろう。会場のパークゴルフ場にテントを張れるのだから。

 目的地決定。美流渡前乗り!

 ちょっと元気が出てきた。

 がっ・・・

 深川あたりで、お盆の大渋滞にハマり、またパワーが空気の抜けたエアマットのように萎んでいく。この暑さ、この渋滞、本当にもうイヤン!

 岩見沢から道道38に入ると山間の閑散とした光景になる。心地よくワィディングを楽しみながら美流渡温泉錦苑へ到着。 
『こんにちは。今年もお世話になります。福島のキタノです』
 玄関から声をかけるとおじさんやおばさんが現れ、
「おう、キタノさんか。お久しぶり。夕張のカネコさんからは、明日と聴いていたが」
 首を傾げていた。
『1日早めに着いてしまったので今夜からお世話になりたいのですが』
「なるほど、それは構わないけど、もう1人ライダーが受付をしたが、キタノさんの関係者かね」
『さあ?どうなのでしょうねえ?』

 なんて話をした後、会費の交渉などを済ませる。会費は1人1300円。これは昨年同様だが、特筆すべきは温泉の利用1回も会費に含めてもらえるということだ。ありがたい。

 北海道のキャンプ場で決行されるEOCも年々規模が大きくなる一方だった。とてもとても一般のキャンプ場での開催は難しくなり、一時は開催を断念しようと考えたぐらいだった。でも、なんとかパークゴルフ場の一角、グリーンのワンホールの貸切開催が実現し、存続の危機を免れたという経緯があった。

 そして、パークゴルフ場の一角である予定会場へ向かった。途中、一般の?キャンプサイトの方に赤のGPZが停まっていた。既にテントも張られている。でも人気はない?果て?見覚えのないバイクだが、EOC関係者なのだろうか?

 昨年同様の場所へキャンプ道具を運んだ。汗がしたたり落ちる。テントを張り終えた後、体がベトベトするので、さっそく美流渡温泉へ。

 美流渡温泉は、本当に昔ながらのひなびた湯治場という雰囲気が漂っており、俺は気に入っている。

 おばさんへ入浴料5百円を支払うと
「2回目は400円。3回目は300円と百円ずつオマケしていくね。もっとも明日の夕方は会費にお風呂代が含まれるからタダになるけど」
 と笑っていた。

 じっくりと湯に浸かり汗を流した。すっきりした気分で玄関までくると、
「キタノさん、預かりモノがあるよ。この包みなんだけどね、土曜日に本人から直接預かったの」
 袋の中の箱を開けてみると「さむらい」と書かれたお酒だった。一通のメモが添えられている。
「EOCのご盛会をお祈りします」
 札幌のまささんからだ。わざわざ美流渡まで陣中見舞いを届けていただくとは恐縮です。本当にありがとうございました。

 さらにおばさんが、
「あとね。なにやらキャンプ道具みたいな荷物も届いているよ」
 怪訝そうに言った。

 送り状を見ると千葉県、そして、やまちゃんの本名が記されていた。本当にキャンプ道具を美流渡へ宅配したのか。やまちゃんは、宿派だし、バイクにもあまり荷物が積めない。今回の北海道ツーリングでもキャンプは美流渡だけという事実を鑑みてスキー宅急便ならぬキャンプ宅急便にしたらしい(唖然)

 グリーンに戻り、缶ビールの封を切り、ゴクゴク飲んでキャンプ椅子に座ってボーっとしていた。誰も居ないけど虫はいっぱい居た。

 やがて誰かが、ここ(グリーン)へ向かって歩いてくる。

「キタノさんですか。わたしは大阪の赤影と申します。よろしくお願いします」
 穏やかな紳士という感じの方だ。
『ああ、うちの掲示板へ参戦表明いただいた方ですね。キタノです。こちらこそ、よろしくお願いします』
 赤蔭さんはわざわざグリーンまでテントを移動してくださった。すいませんねえ。
 赤蔭さんと酒を飲みながら夕食の準備をした。赤蔭さんは実に手馴れた様子で、飯を炊き、シェラカップでカレーを作っていた。

 俺は面倒だし、食欲もないので「塩ホルモン」のみを炙った。これだけでいいや。

 俺は、とにかく先日の利尻山踏破のダメージと猛暑による強烈な夏バテで、ふらふらになっていた。
 そんな俺の尋常でない様子を赤影氏は看破したらしく、カレーライスを勧めてくれた。本当に美味しかったです。俺の塩ホルモンも些少ながら食べていただいた。

 食後も氏と旅のこと、日常のことなどをじっくりと語り合った。

 個人情報なので詳しくは書けないが、俺よりもいくつか年長の赤影氏は、いろいろな苦労や紆余曲折を経て、現在はツーリングライフを謳歌されておられるとのこと。人生いろいろというか、まさに人に歴史あり。

 そんな真面目な話しをしつつ、やがてキタノはヨッパライダーに変貌してくる。旅先の怖い話へと突入。なにせ正規のキャンプサイトではなく山間のパークゴルフ場というシチュエーション。灯りなどまったくない。テントから離れると漆黒の闇。

「おれは怖い話に弱いんですよ」
 赤影氏は辟易した様子だ。そういわれるとヨッパライダートークはエンドレスになってくる。

 単純なキタノは、自分で話しているのに自ら怯えてきて、23時頃お開きとなる。その夜、キタノのテント内は朝までヘッドライトが点灯していたとか?
 翌朝、何時に起きたのだろう。記憶が定かではないが、ほどほどの時間に目覚めた。

 赤蔭さんは、時折降る小雨の中、既にてきぱきと行動されていた。

 マジ?今日は雨かよ?夕方のEOCまでに回復すればいいのだが。まあ、通り雨っぽいんでなんとかなるか。などとテント内でゴロゴロしながら考えていた。
 今日もヌルイ空気が漂っている。起き上がりたくないが、だらだらとテントの外へ出た。

 赤影さんは、きちんとした料理で朝食をとられたようだ。俺は面倒なんで、とにかく手元にあるものを炒めて食べた。食べないからバテるんだろうなあ。

 そして美流渡温泉へ。
 さっそく赤蔭さんと温泉に浸かった。お風呂は意外に混んでいる。どうやら定期券のようなものがあるらしく地元の方々も多く利用されているとか?

 おっ!

 今日は露天風呂も開いているじゃないか。去年は入れなかったので嬉しい気分だ。露天風呂にもじっくりと浸かり、汗を流した。

 ふう、さっぱりした。

 テントへ戻ると赤影さんがいない?あれ?どこへ行ったのだろう?

 とにかく夕張へ今夜の買出しと○○にも顔を出しておきたい。ゼファー出撃の用意をしていると赤影さんが現れた。どうやらお風呂の隣の大広間で横になったら寝込んでしまったらしい。すいませんねえと詫びておられたが、なんもなんも。

 雨は一時的にあがり小康状態の中、夕張へ向かう。カッパは着用しない。まあ、大丈夫だろう。というか今回は利尻山登山の時以外は奇跡的にカッパを装着していない。北海道ツーリングで雨具なしって多分初めてのことだ。

 ところが、丁未風致公園大草原キャンプ場あたりで大粒の雨。ボツボツと体にあたった。ええい、面倒くせぇ、○○まですぐだ・・・

 なんて思っているとシャツが結構ビショビショに。後ろには赤蔭さんも走行していたのに申し訳ないことをしてしまった。

 雨の○○前へ到着。

 すると見覚えのあるマシンが、店内には吉野(ロスト)さんが先着していた。
『これはどうも先日はお世話になりました。』
 ロストさんは4月と7月の福島でのEOCに参戦いただいている千葉のライダーさんである。本日の本番(EOC美流渡)ももちろん参戦。

 まったく偶然ながら赤影さんとも以前から面識があり、一昨日も一緒にキャンプされていたとのこと。世の中は狭い。ロストさんは、では後ほどと言いながら一足先に店を出た。

 ○○氏は、本日多忙のため、顔は出せるが泊りは無理とのこと。それは残念。あと預かり物があるとか。それは今回、滞在期間が短くてEOC参戦を果たせなかった千両役者・大阪のコマンダーさんからの陣中見舞いだった。増毛町の、いや北海道が全国に誇る銘酒「國稀」だった。

 コマンダーさん、高価なお酒を頂戴してありがとうございました。深く御礼申しあげます。

 ○○丼を賞味し、芯がタンクへ落ちてしまった灯油ランタンを修理してもらっている頃、XJRが入ってくる。あのマシンは大阪の混浴ライダー(ミヤさん)だ。今年も役者が集結してきたぞ。
「どうもお久しぶり」
 赤蔭さんへ
『彼も大阪なんで、よしなに』
 と紹介する。

 ミヤさんは南部鉄釜を購入していた。
『俺、鶏肉をこれから買っていくから、さっそく今夜から使おうぜ』
 というと、
「勘弁してください。大阪に帰ってから、ゆっくり使います」
 と却下される(笑)

 ○○を出て、近くのセイコマで買い物を済ませる。そして、この旅初のバイク走行中のカッパ姿で悠々と?美流渡へと引き返す。

 雨は刻々と激しさを増してくる。

 まさに風雲急を告げるEOC!

 詳細は次項ということで?

 って、ヨッパライダーに記憶など本当にあるのかい?

 天の声が聴こえた・・・



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