北海道ツーリング2006








道楽館前にて(画像ともさん提供)



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 美流渡のキャンプ場の夜は明けた。正確な時間は覚えていないが、払暁だったのは間違いない。早寝したので、気分も上々だ。天候はこの時点で曇り。

 高橋さんは、焚き火台でガンガンゴミを燃やしていた。ロストさんの姿は既にない。本日離道なので、やはり早出されたようだ。

 そして皆さんも次々にテントから出てきた。
 ユウコさんやスガヤさんの奥様が、昨夜の残りの材料を活かして美味しい味噌汁を作ってくださった。ありがとうございました。

 いや〜お酒を飲んだ次の朝には本当に優しい味だ。皆さんも大喜びで召し上がり、あっという間に売り切れとなる。

 この頃、赤蔭さんもニセコに向け出撃。睡眠時間がかなり不足していると思いますが、どうかお気をつけて。またお会いしましょう。
 残った皆さんで記念撮影を済まし、EOC美流渡2006、これにて解散!

 撤収作業開始!

 皆さん、本当にお世話になりました。次にお目にかかる機会を楽しみにしております。

 しかし、高橋さん夫妻、ローホーさんも道楽館へ宿泊されるとか。
 ということは、予約していたやまちゃん、ともさん、昨日予約の俺に加え、なんとEOC関係者15名中6名が、道楽館へ流れ込むことになる。まるで2次会状態。これまた凄い!

「お世話になりました」
『お気をつけて!』 
 皆さん、次々に美流渡温泉錦苑を出撃するのを俺とやまちゃんは見送った。

『やまちゃん、ワリィが今日は俺につき合ってくれ』
「分かりました」
 と彼は訝しげに頷いた。

 昨年同様、やまちゃんには最後まで美流渡へ残ってもらった。行先は同じ「かみふらの道楽館」なんだし。

 やがて、美流渡温泉のグリーンが俺とやまちゃんだけになる。

 なんか夏が終わったという感じで、急激に寂寥感が込み上げてきたと同時に強烈な太陽が照りつけてきて、一瞬で撤収作業をやる気がなくなってきた。

 だらだら、だらだら・・・

 ダメだ。暑過ぎる。煙草でも吸おう!

「キタノさん、なにやってんですか。もう手伝いますから」
 やまちゃんが、俺の怠惰な撤収作業に業を煮やし、キャンプ道具の収納を始めた。

 俺も作業を再開し始めるが、あまりの暑さにまた10分も過ぎると一服タイム。

「キタノさん、パッキングし易いようにバイクをまわして来ますね」
『おー、じゃあ、機首は出口に向くように停めてくれ』
 もうワガママ言い放題のキタノ。

 ようやくパッキングを終えると3時間もかかっていた。

 やまちゃんは、呆れ果てて絶句状態。

 だって暑過ぎるんだもん・・・

 やまちゃんと旅館の方へようやくマシンで移動し会計を済ます。

 そして、ひとっ風呂浴び上富に向け出撃。

 天気は、まあなんとか持っているという感じか。

 手際の悪いガソスタで給油し富良野市内へ。

 ここは久々に人気店「唯我独尊」でカレーかと思ったが行列。もの凄い長蛇の列だ。諦めてドラマ北の国からで有名になった某食堂へ入ってみた。 
 やまちゃんが、
「空いているこの席でいいですか」
 と訊くと、
「ダメです。言われたところに座ってください」
 とのこと。この態度にやまちゃんは、かなりムッとしていた。

 やむを得ず指定された席に座ると、椅子をもっと引けとか従業員のおばさんが、キイキイ喚いている。
 北の国からで放映されたもんで、相当いい気になっているようだ。不味くはないが、これは味以前の問題だな。

 実るほど頭を垂れる稲穂かな・・・

 なぜかやまちゃんは、
「味はまあまあよかったですよ」
 と言っていたが・・・

 少し、早めに道楽館着。ソットーさんは忙しそうだった。昨夜のEOCのメンバーからも急遽宿泊者が増えて大変そう。
「暑いから外のテーブルで、涼んでいてね」
 といいながら盛んに炭を熾していた。

 その後、やまちゃん、千葉のくっしーさん、高橋さんご夫妻、ともさん、さらにお名前を失念してしまったが、多くの旅人さん達と屋外でビールをガンガン飲んだ。

 少し涼しくなり、今夜の宿泊者名簿をやまちゃんと見ていると「えぼらぁ〜」さん?果て?聞き覚えがあるぞ。

 するとやまちゃんが、
「キタノさんの掲示板に投稿しているえぼらぁ〜さんですよ」
 と大喜び。
『ああ、思い出した。うちのサイトをご覧になって北海道病になられたという方』
 まさに奇遇。
 なんて話しているとえぼらぁ〜さん到着。本当にやまちゃんは嬉しくてたまらないようだ。
「えぼらぁ〜さん、会いたかったですよ。本当に会えてラッキーです」
 やまちゃんもほとんどベロベロに酔っていた?

 頃合を見計らって、
『こんにちは、キタノです。初めまして』
「えっ?キタノさん、初めまして。ここでお会いできて嬉しいです。キタノさんのお蔭で、すっかり北海道にハマりましたよ」
 静岡のEVO8乗りのえぼらぁ〜氏はとてもいい笑顔で応えてくれた。

 ちょっと見た目は怖そうなんだが、まさに気は優しくて力持ち。オヤジギャグも通じる好漢である。

 到着の遅れているローホーさんを皆さん心配していたが無事登場。さっそく外でのディナー開始となった。

 食事をしながら俺は
『いやあ〜、ヤド泊は楽でいいですねえ。たまには宿(やど)でEOC(永久ライダー・オフ・キャンプ)ならぬEOP(永久ライダー・オフ・パーティ)というのもいいかもしれませんね』
 もちろん冗談だが、高橋さん夫妻やともさんは、がっかりしていた。
「EOPってなんだかカッコ悪くないですか」
 ともさんが言う。
「もしかして立食パーティ形式なっちゃうの?」
 高橋さんも笑っていた。
『会場は上野の精養軒あたりがいいかもしれませんね』
 俺は吹き出しながら呟いた。

 今宵のメニューも充実していた。
 スープやサラダの前菜を美味しく頂戴した。さらに今夜のメインデッシュはイカメシだ。どうやら昔、森町のイカメシ屋でバイトしていた経験のあるらしいソットーさんがダッチオーブンを駆使して作る逸品は本格的だった。つうか道楽館の食事が来るたびにバージョンアップしている。

 宴はEOCグループ+くっしーさん+えぼらぁ〜さんと一般のお客さんとが二極化しているような気もしないでもないが、それでも楽しく盛り上がる。

画像提供:ともさん

画像提供:ともさん
 やがて雨・・・

 皆さん、屋内に撤収。

 また楽しく飲み会は続く。デザートのメロンもとても甘くて美味しかった。

 高橋さん、えぼらぁ〜さん、キタノのオヤジギャングが炸裂し、熱帯夜も涼しくなってくる勢いだった。
 ここでソットーさん撃沈。続いて昨夜の疲れから高橋さんも就寝。もともと飲めないえぼらぁ〜さんも部屋に戻った。

 なおさんが現れ、ソットーさんを管理人室へ連れて行く。

 まだ、そんなに遅い時間ではない。だが居間が結構閑散としてきた頃、事件は起きた。
 俺が小用を済ませ、席に戻ろうとしていた時、
「おい、永久ライダー!」
 最初は大人しかったのに途中からもの凄いピッチで酒を飲み出し、突然豹変して饒舌になった50がらみのオジサンだった。もうベロンベロンの状況だった。

『俺のことですか』
 あんた大丈夫か?目が相当据わっているぞ。
「キタノさん、ワタシは貴殿のホームページを見ている。今日は会えて嬉しかった」
『それはありがとうございます』

「まあ、ここに座って」
 とにかく俺は正座した。

「その全身の凄い日焼け、あんたは凄い」
 なんと言ったらよいのか?

『いや、俺はただのライダーなんです。ぜんぜん凄くないですよ』
「いや素晴らしい。数多くのヌシや暴漢との戦い、ワタシは感動した」
 傍から見た目には説教されているように映るかもしれない。

 皆、奥の方で楽しく飲んでいる。永久ライダーオタク出現か?誰か助けて。

 ともさんが吹き出しながら、
「実際に正座している永久ライダーを見てどう思います」
 とか他のライダーへインタビューしてるし。

 他のライダー曰く、
「なんか、永久ライダーにはがっかりしました」
 ともさんは爆笑していたようだ。

 俺はブログでも書いたが常日頃からピリピリとやかましい、ただの粗暴漢ではない。つうか、そういうキタノなら本当に嫌なヤツだし、逆の立場なら俺は絶対にキタノへ関わりたくないタイプだ。またEOCも主宰できないし、誰からも相手にされないだろう。

 普段はだらしがなく見えても、いざという時のみ、体を張れるかどうかで男の真価が問われると確信している(イイワケっぽいが、事実、いろいろな修羅場で体を張らずにこそこそと逃げ出す口ばっかりの輩を何度も見ている)

 見た目、口先、ネット、つまり主観だけで、よく知りもしない人間を批評する輩を俺はどうにも好きになれない。

 腰の刀は抜かずとも手入れは常に怠らず・・・

 つまり俺は理に反しない限り、社交的で穏やかな普通の旅系ライダーなんだが、ネットの嫌なところ、矛盾な点は、見えない俺を勝手に架空の人物に仕立て上げるところだ。

 まあ、永久ライダーのジレンマは、ただ黙っていると強烈な威圧感を漂わす非常に怖い男。明るくふるまうとHPの印象と違い過ぎると酷評される点かな?

 話を戻して・・・

 困ったけど、このオジサンに対してどうとは特に悪い感情は持たなかった。これほど酔わないと恐い?北のサムライに話しかけられなかったのだろう。逆にお気を遣わせましたね。

画像提供:ともさん
 その後、オジサンは居眠りを始め、頭でコップを割った。もう眠いはずのヘルパーのおタカさんが、掃除機でガラスの破片を回収。おタカさん、大変でした。

 オジサンは結局部屋へは戻れず、そのまま居間で酔い潰れてしまった。

 どうやら朝まで目覚めなかったらしい。永久ライダーに直面し、なにかが解き放たれてしまったのか?
 永久ライダーオタクのおっさんからようやく解放され、俺は、やっと落ち着いて皆さんと飲み始めた。

 ユウコさんも遅くまでつき合ってくれた。
「実はね。旦那があまりに熱心に『永久ライダー』を読むものだから、心配になり私も時々覗いてますよ」
 と笑いながら言っていた。

 すると、
「実はうちの妻もそうなんですよ。キタノさんが新興宗教とかやっていたら、絶対に洗脳されるから気をつけるようにと言われてます」
 ともさんも笑っていた。

 大丈夫です。キタノは無信心なただのヨッパライダーなもんで、厄払いすらしていない。強いてあげれば、俺の厄払いは昨年の知床岬踏破で全部済ませてある(笑)

 その後、1時ぐらいまで歓談は続いた。

 早朝、えぼらぁ〜さんが、青沼に向けドライブへ出かける頃、どうにも布団が寝苦しくてドア付近の板の間で爆睡していたキタノを発見し、驚愕したのは内緒だ(^^;

 永久ライダーオタクのオジサンは、目覚めと同時に急にエアマットの空気が萎んだようになり、ひどく無口で謙虚な?いや妙にオドオドした気の弱そうなオジサンになっていた。キタノに目を合わせないし(笑)

 どうやら昨夜やらかしたことの重大性?にシラフになった瞬間にビビリ、ヨワイ小動物のようになってしまったようだ。でも冒頭の集合写真にはしっかりと交じっていたのには笑ってしまう。

 朝食は梅粥。

 飲み過ぎの朝にはこれが一番。ガンガン食べた。

 しかし、今日は全道的に雨。正直、疲労がかなり蓄積していた。雨中に動きたくない。

 俺は、ソットーさんに予約満杯のところを無理にお願いして、居間泊ということで連泊確定。すいませんねえ。

 その後、明後日には帰りのフェリーに乗るやまちゃんは新冠のとほ宿「ふかふか亭」へ。

 同じく日程に余裕のないローホーさんは、襟裳岬を経由し、長駆、中標津開陽台で幕営し、明後日には苫小牧まで引き返すとか。大丈夫ですか?

 えぼらぁ〜さんは、函館からフェリーで大間へ上陸し、陸路静岡を目指す。

 高橋さんご夫妻も、日程の余裕がないところだが宗谷岬へ向かわれる。
 ともさんは、悪天候時にバイクへ乗るのを諦め、高橋さんのクルマで音威子府へ向かうそうだ。帰りはジェアラーとなり、上富へ戻り連泊するとか。

 皆さん、お気をつけて。本当にお世話になり、ありがとうございました。

 またEOP・・・もといEOCでお会いできる日を楽しみにしています。
 旅で出会い、そして別れがある・・・

 俺は、何年も何年もひたすらそれを繰り返してきた。

 そんな寂しさを払拭するがために、俺はまた旅へと出る。

 まさに一期一会・・・



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