北海道ツーリング2005前編




仙台港フェリーターミナル







 出航の銅鑼が船内に鳴り響き、フェリーが轟音をあげながら動き出した。俺の北海道ツーリング2005夏がいよいよ始動だ。

 喫煙コーナーのソファーへ居座った。2等の大部屋で寝るつもりはない。寝相の悪い俺が幅数十センチの隙間で耐えられるわけがない。

 窓からふと海を見ると漆黒の闇の帳が下りていた。マグカップにウイスキーを注ぎながら知床岬付近への2万5千分の1の地図を見ていた。AOさんから何年か前、郵送で送ってもらったものだ。今回の旅の命題は「知床岬踏破」に尽きる。

 知床岬は俺なりに調べてはいたし、装備も揃えていた。ただ単独入林は危険過ぎるため禁じられている。今年も断念かと思っていたところ、なんと昨年、第一次隊参加のAOさんがつき合ってくれるとのこと。AOさんの情報と経験があればシリエトク到達も一気に現実味を帯びてきた。

 でも俺自身としての考えは、人跡未踏のシリエトクを甘く見てはいけない。絶対に見切り発進だけはすまいと思い、徹底的に情報収集とトレーニング山行を続けていた。知床岬踏破のためだけに5月から、毎週のように安達太良山付近をがむしゃらに歩きまわり体を造ってきた。

 まだ見ぬ人跡未踏のシリエトクの地へ熱い思いを馳せながら杯を重ねるうちに酩酊し、やがて意識が消える。

 翌朝、洋上の朝陽を顔に浴び目を覚ました。特に食欲もなくただボーっとしながらテレビを見ているうちにまた寝る。その繰り返しのなか下船のアナウンスが入り、デッキに降りた。

 係員がベルトを外しに来るのが、いつになるかも分からない。自分で勝手に外して、苫小牧港へ下船する。陽光が目に沁みる。実に素晴らしい好天だ。 

 北の大地、俺は帰って来たぞ!

 陽の光を一杯に浴びた俺とゼファーは、日高道へ向け快走する。今年も真夏の北海道を走り抜けてやるぜ!

 加速したゼファーの馬力がぐんとアクセルに伝わってきた。まるで俺の全身にも精気が横溢してくるようだ。

 がっ・・・

 有頂天によそ見をしながら加速していた刹那、信号待ちで停車しているトラックへ気づく。

 このスピードで間に合うのか。初日から事故なんて勘弁だぜ。とにかくフルブレーキング。マシンがスノーモービルのように斜めに滑って行く・・・

 ギリギリで停車した。ふう〜

 旅は22日も続くのだ。のんびり行こう。

 早来町の緑の牧草地帯を駆け抜けている頃、札幌ラーメンの看板発見。ここでブランチとした。札幌系にしては妙にあっさりめの醤油ラーメンを食べたが、なかなか美味い。帰りがけにトラックの運ちゃんから
「今日はどこまで行くんだい」
 と声をかけられる。坊主刈のよく日焼けした男だった。
『富良野方面だよ』
 くわえ煙草で応えると
「取締りが多いから気をつけてな」
 男は沁みるような眼差しを向けながらドアを閉めた。よく見るとさっき俺が突っ込みそうになったトラックだった。思わず吹き出してしまう。

 夕張へ入る。やや曇りだしてきたが、それがなんとも似合う昔の炭鉱の街だ。
 せっかく夕張に来たのだから久々に「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」に向かった。

 お客は老夫妻2組だけだ。どうやら、もう何回もいらしている様子だ。あの映画によほど思い入れがあるのだろう。言葉少なに展示物に目をやっていた。

 想像だが、結婚される前、お二人で観に行った映画が「幸福の黄色いハンカチ」とか?
 壁には観光客が黄色い紙へ書いたメッセージがびっちりと貼られている。

 今回は俺も書かせてもらった。

「永久ライダーもこの映画が好きだった。2005.7.28」

 入口の天井に貼った。興味のある方は探してみてください。なんの特典もありませんが(笑)




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