２００４．１２．２２ 〜 ２００５．１．３
１４
２００４．１２．２２ 〜 ２００５．１．３
１４
 |
『うぃーす、ゲプ』 多分、俺の肝臓は今、フォアグラみたいに美味なんだろうなあ。完全に酔いが醒めてない状態、いや、まだ酔ってるぜ、きっと。 ふらふらと階段を降りて洗面を済ませた。キッチンからは梅の香が漂っていた。 というワケで寝ぼけながら朝食をいただいた。 |
| 東京からのご一行も「梅粥」に満足してしているようだ。二日酔いの朝は、これに限りますなあ。 腹もつくったし朝のひと仕事へ向かう。しかし、一晩でまた、よく積もってんじゃないの。ソットーさん、トシさん、東京からの彼、そして俺で懸命の雪かき作業開始。東京の彼は、群馬出身ということで、雪かきがとても新鮮に感じたそうだ。終始にこやかにスコップを動かしていた。彼女の方は窓から一度手を振ったきり消えてしまった。どうやら二度寝したようだ。 でもなあ、いくら上富とはいえ、連日、雪が降り過ぎだぞ。 極寒のなか、汗ばみながら食後の適度な運動をこなした。 |
| 東京組の皆さんは、旭川にご実家のある彼女の家で正月を迎えるとのこと。そして、ソットーさんへダッチオーブン料理に満足した旨のお礼を言いながら出発して行った。 としさんもそろそろ帰路に着くために千歳空港方面と旅立って行く。 としさんにも美瑛の丘などを案内していただくなど大変お世話になりました。この場を借りて深謝いたします。 |
 |
| 彼はニッコリと微笑んでアクセルをあげて行った。なんかみんな一辺に居なくなるようで、凄い寂寥感を感じていた。 そんな俺の心中を見透かしたかのように 「キタノさん、ファーム富田に行ってみない？」 ソットーさんが言い出した。 『いくらなんでも今日は大晦日ですよ。やってないでしょう。それにラベンダーも絶対に咲いてないし』 ラベンダーは初夏が見頃だ。 「ところがねえ、なんだか、やってるって噂があるんだよねえ」 ソットーさんは含みのあるスマイルを見せている。 『では是非、案内してくだせえ』 ということで、激しい雪のなか「ファーム富田」へと向かった。 |
 |
雪に埋まったファーム富田。 駐車場だけは相変わらずだだっ広いが誰も居ない。管理者の家なんだろうか？ご立派な邸宅の横を歩くと犬に吠えられた。 『ソットーさん、大丈夫なんですか？』 俺は不安になった。 「いいから、中を見て」 俺は大きなビニールハウスの内部を覗いた。 『ウッ・・・・・・これは』 |
| ビニールハウスの中は一面のラベンダー畑だ。いくら人工的に造ったとはいえ、この時期、これだけのラベンダーを拝めるとは思いもしなかった。 「すいませ〜ん」 受付のある建物の方向から誰かが我々の方へ走ってくる。不審人物に見られたか？あるいは不法侵入だと思われたか。 走って来たのは若い女性だった。息をハーハーあげながら。 |
 |
 |
「受付に声をかけてくださればハウスの鍵を開けましたのに」 彼女は苦しそうな呼吸でニコニコととても可愛らしい笑顔で話していた。 「鍵を開けなくてもいいんだよ。窓の外から見るだけで充分なんだし」 ソットーさんが応えると 「そうおっしゃらないで、どうぞ中へお入りください」 彼女はビニールハウスのドアを開いた。 |
| 「大晦日じゃ、お客さんも来ないんだろ？」 ソットーさんが訊くと 「いいえ、午前中に観光バスが３台入りました」 にこっとなんともいえない笑顔で答えた。 この時期、しかも大晦日に観光バスが３台ですと？なんと恐るべしっ！ファーム富田の人気！ 年中無休 ソットーさんも俺も驚愕してしまった。 「声をかけてやるとお花も喜ぶんですよ」 彼女はラベンダーと俺の背中へ話しかけてきた。 『あんたはここの娘かい？』 後姿のまま俺が訊くと 「いいえ」 ラベンダーの妖精の声が聴こえた。 「花ってとっても可愛いんですよ」 その瞬間・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ドキッとして俺は振り向いた。 またまたこぼれんばかりの満面の微笑みだった。 目と目が合った刹那の邂逅で、とてつもないドラマ性を秘めた不思議な衝撃を感じたのは事実だ。胸の鼓動が激しく高鳴っている。軽い目まいのようなものすら感じる強烈なオーラだった。 さまざまな予感が交錯し、既に俺の全身の節々へまで電流のようなものが伝わってきている。どう表現したらよいか。とても言葉ではいい尽くせない。 俺のなかのなにかが確実に動き始めていた。俺の意思とは関わりのない不思議な冬のストーリーが・・・・・ この冬、北の大地でなにかが始まろうとしている。 これを運命というのだろうか・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 嘘！ 点線の中は全部北野の妄想でした。いつの間にか「真夏の夢」のストーリー（北野一機著）へと入ってました。 でも貴重な体験だった。入場無料というのも嬉しい。北野好みの清楚なラベンダーの妖精へお礼を言い、ファーム富田を後にした。 |
| 公共宿泊施設「ハイランドふらの」の館内にある温泉でまったりする。露天風呂もついており、なかなかいい湯であった。 日帰り入浴大人３５０円と料金もリーズナブルだし、俺は結構気に入った。夏は鬱蒼とした森の中に広大なラベンダー園を楽しめるそうだ。 |
 |
| 丘とラベンダーの眺めならぬ森のなかのラベンダー園か？ 果たしてどんな展開になるのだろう？ ちょっと想像に難いものがあるが夏も面白いかも知れん。 温泉を満喫すると腹が空いてきたぞ。ソットーさんも同様らしく 「キタノさん、大晦日だし、蕎麦でも食べにいく？」 と訊いてきたので２つ返事で同意した。 そして富良野駅近くの蕎麦屋へ・・・ |
 |
蕎麦屋の店名は失念したが、ここの超ボリューム満点の天ザル蕎麦を満喫した。 もの凄い量。これだけ蕎麦を食べて歳を越せば思い残すことなどなにもない。 とにかく最後の蕎麦ひと玉を食べ切る頃にはマジで苦しかった。確かに美味い蕎麦だったが、当分蕎麦はいいや。 |
| そして道楽館へ戻り、ただひたすら酒・酒・酒・・・ 大晦日なんでダッチオーブン料理ではなくおせち料理で杯を傾ける。 ２００４年は、やはり紅白歌合戦で締めくくり・・・ のはずが・・・ |
 |
| あ〜あ〜ああああ、あ〜あ♪ なぜか、ソットーさんが「北の国から」のＤＶＤを流し始めた。 これを観ると北野は自然に目がウルウルしてくる・・・・・ やがてアルコールで記憶が飛び始めた。 「ひつじの詩」のなおさんが、ピザを焼いて差し入れてくれたような気もしないでもない？ とにかく僕の２００４年はこうして暮れていった（北の国からの純の語り方を連想してください） ２００４年最後の夜も窓の外は猛烈な吹雪だ。 でも優しい時間はゆっくりと流れていた。 |
