2004.12.22 〜 2005.1.3



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「朝ごはん出来たよ〜」
 ソットーさんの声で目覚めた。

 すっかり羽毛布団の心地よさに俺もラッシャーも爆睡してしまった。

 やっと起き出し窓の外を見ると相変わらず凄い雪だ。
「暖冬といわれるが少なくても上富良野周辺は間違えている」
 昨夜、ソットーさんが言っていた。

 階段からぷ〜んと梅の香りが漂ってきた。朝食はダッチオーブンの「梅雑炊」だ。酒を飲み過ぎた朝には胃に優しいこれが一番。
「いただきます」
 サラサラと雑炊を腹に流し込んだ。昨夜はがんがん肉類を食べたので朝食の雑炊がとてもあっさりしていてバランスよく感じた。

 ラッシャーは霧立峠に出てから羽幌へ向かうとのこと。しかし、こんな雪の日に霧立峠越えをするのかい。大変だなあ。

 霧立峠か。俺の描いたショート・ストーリー「島風」の舞台としても登場するので、なぜか因縁めいたものを感じてしまった。ラッシャーがストーリーの主人公の「キタノ」のように霧立峠でクラッシュしないことを祈る。

 ラッシャーが、ガレージからカブ90を出してきた。
 ちょっと借りて乗ってみた。うん十年ぶりに乗るロータリー式のギアと軽いボディ、ちょっと乗りなれてないせいか安定感がイマイチないような気がした。

 しかし、これでよく冬の北海道を旅してるなあ。いや逆に実用一点張りのカブだからこそ冬のツーリングが可能に成り得るのかもしれない。そして相変わらず随所に工夫やこだわりが感じられる。相当周到な冬の北海道キャンプツーリングの情報収集や事前の準備を重ねてきたのだろう。
 ラッシャーは「島風」後半に登場するアルピニスト・マスモトヨウスケのライダー版といえる存在だ(姿かたちの設定は違うけど)。どんな過酷な条件でも果敢にチャレンジしていく、その姿は、まさに「北のサムライ」だった・・・

 やがて、莫大な荷物をパッキングし終えたラッシャーは大きく一礼をして、ヨロヨロと発進していた。ソットーさんと俺は彼の姿が見えなくなるまで手を振った。大丈夫かなあ〜

 今朝も上富良野も圧倒的な勢いで雪が舞っていた。
 いや〜寒い。中に入り冷えた体をヒーターで解凍しているとソットーさんが
「吹上温泉行く」
 有名な天然露天風呂へ誘ってくれた。
『マジっすか。冬の吹上は是非行ってみたいです』
 なんかお手数かけて申しわけない。

 ソットーさんが館内の清掃を終了させた後、出撃。雪はやや収まりつつあったが凄い積雪の道道966をソットーさんのレガシーは突き進んでゆく。
 白金温泉街は結構本州ナンバー車が停まっていて、盛況のようだ。ソットーさんの話だとボード目的の客が多いらしいとのこと。

 およそ30分ほどで「吹上露天の湯」に到着。駐車場から露天風呂まで雪で足場が悪いので注意しながらゆっくりと降りた。しばらくすると、おう見えたぞ。吹上露天の湯だ。何年ぶりだろう。以前、来たときは真夏だったので激混みだったが、今回は誰も居ないようだ。
 ソットーさんが素早く毛布を雪の上に敷いた。なるほどこれを足場に着替えをすれば足を冷やさない。さすが地元人の知恵だ。

 着替えていると長髪・ジーパン姿。明らかに70年代の旅人ルックの風貌の男が現れた。昔の武田鉄矢(黄色いハンカチ当時の)っぽい。俺よりは年上だろう。怪しいオーラを感じた。男は、あっという間に裸族となり露天風呂へドボ〜ン。そして、アチィ〜と絶叫していた。
 ソットーさんと俺も恐る恐る温泉に足を入れると・・・
「あちぃ〜」
 半端じゃない熱さだ。吹上ってこんな熱かったっけ?長髪の男は俺らの方を見てにやにやしている。なんか不快だ。ソットーさんによると今日は格別に熱いそうだ。まあただで源泉に浸かってんだから、よしとしよう。

 なんとか比較的ぬるい部分にかろうじて入っているのだが、めまいがしてきた。俺は岩の上に腰かけ足だけ湯に浸した。すると足が熱いじゃなく痛いと思うぐらい高温でヒリヒリしてきた。でも真冬に宮沢りえちゃんが「北の国から」でここに入っていたんだ。我慢しよう。がっ・・・やっぱだめだ。足を引っ込めて岩の上に胡坐をかいて天然冷却に切り替える。恐るべし吹上露天の高温よ。
 ほとんど釜茹地獄なので長湯を諦め着替えを済ませると駐車場の方向から露天風呂へ歩いて来るライダーがいた。この時期にライダーって。

 ラッシャー?

 まさか。あいつは霧立峠から羽幌方面へ向かったはずだ。でも酷似している。よく見るとメットと髪型が違うか。この時期にバイクでツーリングしているライダーって、意外にいるもんだな。ソットーさんも驚いていた。  
 彼は関西方面から来たようだ?(どこから来たか具体的な地名は失念)。エイプにスパイクタイヤを履かせ冬の北海道キャンプツーリングをしているそうだ。

 目的地は元旦宗谷岬。大晦日には宗谷岬でキャンプするそうだ。
「大晦日、宗谷岬にラッシャーっていうカブ乗りが居るはずだ。会ったらよろしくな」
 彼はニッコリと頷いてくれた。
 帰りがけにソットーさんは上富良野の街中に存在する「ラーメン問屋」というラーメン専門店へ寄ってくれた。
「味のほうはどうかなあ」
 彼はあまり自信がないようだ。

 俺は「ピリ辛味噌チャーシュー」をオーダーしたが旭川麺でなかなか美味しかった。ガツガツ食べていると「アイスクリーム」が食べたいと隣のテーブルの男の子が出がけに絶叫しながら号泣している。とんでもない大声だが元気があってよろしい。
 道楽館に戻った。

 今夜も予約があるらしい。ソットーさんはダッチ料理の準備をしている。俺は暫くビールを飲みながらまったりとしていた。すると車の音だ。
「どうも、スキースクールに行ってたら遅くなっちゃって」
 彼は士別に在住するtettさんという気さくで明るい方だ。さっそくキッチンからグラスを取り出して自分でサーバーからビールを注いでいた。どうやらここの常連さんのようだ。
 彼は「今日の道北」というブログから道北情報を発信している。
 やや遅れて愛知から来道し、レンタカーで旅をされているという「とし」さん登場。彼はトリックアート美術館横を右折して道楽館へ入るポイントを見失って迷っていたようだ。としさんも「がらくたBOX」というサイトを運営していて、うちのHPをはご存知とか。

 さらにお隣の宿「ひつじの詩」のオーナー「なお」さんも登場。彼女とは今回、何度か顔を合わせてはいるが一緒にお酒を飲むのは初めてである。なおさんも永久ライダーサイトの存在は知ってたみたい?差し入れとかご馳走さまでした。美味しかったです。
 ソットーさん、tettさん、としさん、なおさん、俺の5人のHP管理者が集う飲み会は大いに盛り上がる。特にtettさんととしさんは、昔のTVドラマ、懐メロなど妙に話が合うぞ。もちろんふたりはライダーでもある。話が合う?それもそのはず3人は偶然ながら同じ世代、いやまったく同学年だった。

 としさんは、昨日まで糠平でクロカンを楽しみ、それ以前は釧路湿原で丹頂鶴の撮影を堪能していたようだ。やはりレンタカーでも足があるといい。なお、少しだけ丹頂鶴の画像を拝見したが、彼の撮影テクニックはプロ並だった。

 酒が入り、北海道の話となれば地元道内の方をして「北海道病の発生源」とまで云わしめた北野のトークも止まらなくなる。馬鹿話で皆さん大爆笑。ついに黒板五郎まで登場し、最高潮に達した頃、ソットーさん撃沈。

 しかし、宴はまだまだ続くのであった。
 ところで、tettさんが持参したホルモンの美味さはいったいなんなんだ。

 「馬場ホルモン」、知る人ぞ知る旭川のホルモンの名店らしい。俺は未だかつてこれほど美味い塩ホルモンを食べたことがない。脂がほどよくのっていてコリコリとした歯ざわりが最高。

 ネット通販がないので、後日自宅へtettさんに無理を言って取り寄せたぐらい忘れられない味だった。
 ここでこうやって出会えたのもなにかの縁だ。みんなのサイトのリンク集で掲載し合おうという約束もした。共に痛飲して相互リンクするなんて乙なもんだと思うなり。

 今宵の道楽館も遅くまで笑い声が絶えなかった。

 外は怒涛の如く雪が降っている。



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