2004.12.22 〜 2005.1.3








旭川平和通買物公園



 川湯温泉駅前でバスを降りた。

 人気がない。おばさんが運転する軽乗用車が1台入ってきたのみだ。おそらく誰かを迎えに来たんだろう。

 駅の中に入り、ストーブで暖をとりながら初めて北海道を旅した頃を思い浮かべていた。ここで、「かぶおんちゃん」という旅人と知り合い和琴キャンプ場へ連れてってもらったんだっけ。
 思えばずいぶん遠い時間まで旅してしまった。あれからいろいろあった。大学を卒業し社会に出て結婚もした。そして、紆余曲折の末、北海道ツーリングを執念で復活させ、毎年、北の大地を旅している。気がつけば髪に白いものが混じる歳となった。もう、あの時のかぶおんちゃんの年齢をかなりオーバーしちまった。今頃、どうされていることか。

 例の如く一両のみの電車が入ってきた。バスのように回数券を乗口でとり下車するときに料金を支払うシステムだ。どうやら北海道の各駅停車の電車は、この形式らしい。世田谷線に似てるかも?まあ、俺はフリーチケットなんで関わりがないことだが。

 清里町、中斜里・・・と俺のツーリング記にもよく登場するポイントを通過する。やはり、夏とはまったく違う厳しい光景だ。蒼、青、緑、黄色というイメージは、すべて払拭され、白、灰色というモノクロの世界に覆われていた。
 しかし、知床斜里に入ると様相は一変する。雪が劇的に少なくなることもなんだが・・・・

 オッ、オホーツクだ。

 冬のオホーツクだ。すげえ。ついにここまで来たか。意外に波が穏やかだったが、寂しい雰囲気が漂っている。それがまたたまらないペーソスを醸し出すのだ。
 網走駅到着。

 電車から降りると凛とした冷気が俺の全身を覆った。改札を出るとおっさんが近づいてきて
「あの外国の方ですか」
 なんだって、俺が外国人に見えたのか。確かに台湾の方がたくさん北海道を旅されているが、どう見たって俺は典型的な日本人だと思うが。
『日本人だ』
 と少し間をおいて応えた。
 
「ちょっとお願いしたいことがあるんですが」
 昼間からポン引きか。少し呆れた。
「あのアンケートに答えていただきたいんですよ」
 ますます怪しい。
「観光情報調査ですよ」
『俺は急いでるんで』(腹が空いてるんで)
「今じゃなくて結構です。旅が終わってからご自宅で記入され投函いただければ』
 まあいっか。とりあえず封筒を受け取り、駅の階段を降りた。
 多くの旅人から愛され続けてきた喫茶レストラン「麗門亭」はシャッターが下り貸店舗の貼り紙が貼られていた。寂しい限りだが、オーナー夫妻はニセコでペンションを始められたそうだ。

 「あんじろ」、網走で麗門亭と双璧をなすといわれた旅人ご用達の店に入ってみた。山小屋風の造りで、とても洗練された雰囲気が漂っていた。こちらも歴史あり。
 さて、オーダーしたのは看板メニューのサフランライスのオムライス「マドンナ」だ。

 運ばれてきたマドンナを見てびっくり。ソースが白い。シーフードのクリームソースがかかっていた。さっそくいただくとシーフードソースの濃厚なコクがオムライスに絡んでたいへん美味い。他にもおすすめメニューがあるようなので、あんじろのHPをご覧になるとよい。
 特急オホーツク6号に乗り込んだ。しかし、いくら指定とはいえ、この車両に乗客は俺ひとりかい。大丈夫か?JR北海道。

 やがてゆっくりと列車が走りだした。市街地を過ぎると網走湖が見えてくる。氷上には無数のテントが張られていた。ワカサギ釣りだろう。

 美幌あたりから、ようやく乗客が増えてきたが俺の意識はこのあたりで消えていく。
 ふと気がつくと窓の外は真っ暗だ。もう旭川にかなり近づいているようだ。

 今夜の泊りは旭川にしよう。一時は札幌で仕切りなおしをするつもりだったが、上富良野を目指す今後の行程を考えるとそれが一番いい。

 駅構内から一歩外へ出ると旭川市街はふぶいていた。
 ぶるぶる震えながら旭川の街を歩いた。まずは宿だ。適当に選んだのが「グリーンホテル旭川」。しかし、税込み素泊まりで約4500円程度とは安い。部屋もそれなりにビジホとしての機能を果たしており、まあまあ綺麗だし。

 コーヒーを飲み一息ついた。さて繰り出すか。5年ぶりに夜の旭川へ。
 外はちょっと半端じゃない吹雪となっていた。フェイスマスクでかなり暖かいが、これをすると怪しい人みたいなる。

 旭川平和通買物公園、つまり歩行者天国をとぼとぼと歩いた。そういえば5年前、この通りで「噴水転落事件」を巻き起こしたんだった。思わず笑いが込みあげてくる。調子に乗って泥酔し、噴水に落ちて居合わせた見知らぬ観光客から写真をバシバシ撮られたなあ。今となって古き良き思い出よ。まだ若かったしね。

 今夜も適当に地元の人間が利用するような居酒屋に入った。さすがに暮れも押し迫ってきたのかとても込み合っていた。そんななか、冷酒をスイスイ飲んでへろへろに酔っていく北野さんだった。

 翌日、画像を確認すると旭川で1、2を争う伝統のラーメン店「梅光軒」の看板が写っていた。でも全然、ラーメンを食べた記憶がないんだが。つうか俺、いつホテルに戻ったんだ?

 まあ、噴水に落ちた様子がないからいっか(落ちたら死ぬって)



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