2004.12.22 〜 2005.1.3












 夜中に悪夢で何度も起きたが、思ったより早く目醒めた。よし、キャンプツーリングじゃなくても旅は早めの行動が大切だ。さっとシャワーを浴びて着替えも済ませ7時からの朝食バイキングへと向かった。

 基本的に俺は朝食バイキングが大好きだ。和洋お構いなく次々におかずをゲットして片っ端から平らげ部屋に戻った。しっ、しかし朝から無茶苦茶喰い過ぎたようだ。腹がパンパンで足腰が立たない。結局消化のためベッドで二度寝するはめに。しかも胃腸が弱っているらしく唇にできものができ、そこから下唇左側が荒れてヒリヒリする。こんなときにもう。

 出発したのはチェックアウトぎりぎりの時間帯だ。重いリュックをかつぎ外へ出るとパラパラと雪が降っている。中島公園駅近くでは縁日のしめ縄売り小屋みたいなものを造っていた。そうか、もう歳末だもんな。いや、まてよ。今日はクリスマス・イヴか。しかし、まあ俺も女房子供ほったらかしにしてなにやってんだか。なにか旅先から家族に贈って穴埋めしとこう。なんて考えているうちに札幌駅到着。

 今日はとにかく道東へ行こう。道東でなにをしようとも考えてもいないが道東だ。みどりの窓口にて道東周遊フリーチケット(有効期限5日間・19,800円)を購入。札幌までの往復一回のみは指定券がつく。その程度のことは鉄道を知らない俺でも事前に調べていたのだ。
『とりあえず釧路まで特急の指定でもらいたい』
「11時51分発のスーパーおおぞら5号でいいね」
 窓口でキーボードを打っていたおっさんが指定券を用意した。
『スーパーおおぞら5号ですと』
「なにか?興味があるとか?」
『いやない』
 ただおもしろい列車名だなと思っただけなのだが、おっさんはがっかりしていた。俺のことをてっちゃん(鉄道マニア)と勘違いしたようだ。
 そして重いリュックを背負って連絡通路をテクテクと歩いた。旅行者らしき人間は皆無だ。

 喫煙可の1号車だったな。車内に入ると意外に空いていた。やがて出発のベルがなり、ゆっくりゆっくりと加速していき都市部を離れていく。

 十勝平野に入ると広大な雪原が窓一杯に広がってくる。帯広も雪で覆われていた。これがこの夏来たときと同じ十勝平野かよ。まったく雰囲気が違うじゃねえか。
 実は十勝のキャンプ仲間akiyaさんに連絡しようとも思ったがやめた。夏にまた会えるだろう。というよりクリスマス・イブに新婚の彼へ連絡するほど俺は不粋な男じゃない。この同じ空の下で友はおそらく元気にしていることだろうなどと考えながら車内販売のおねえさんからビールを1つ購入。

 しかしなあ、最近の車内販売のおねえさんてなんかスチュアーデスみたいに格好いい制服着てんだな。えらく感心した(ほとんど鉄道に乗らない俺はまったく無知)

 ガタゴトと揺られているうちにほろ酔い気分となり、爆睡してしまった。そしていつの間にか釧路へ入っていた。列車は釧路駅へ定刻通り、15:42分に到着。もう外は薄暗くなっていた。しかし、寒いっす。半端じゃなく。

 さて、今日はどこへ泊まろうか。2002年の北海道ツーリングでは、駅前の東急インに泊まったことがある。今回は河口の方、つまりフィッシャーマンズワーフMOO近くのホテルパコ釧路にしてみよう。と思いすぐホテルに電話する。うまくシングルがとれました。

 そして、釧路の駅前の道をゆっくりと歩き出した。
 釧路は、人口20万人を超す道東で一番大きな街だ。そして全国でも屈指の水揚げ高を誇る水産都市でもある。

 この釧路のシンボルはなんといっても左画像の旧釧路川に架かる幣舞橋だろう。橋の欄干には4体のブロンズ像が凛と立ち、霧がかかった夜のライトアップされた姿はなんともいえない幻想的な雰囲気を醸し出すそうだ。

 ちなみにフィッシャーマンズMOOはすぐ横だ。
 道すがら歩道に氷のキャンドルライトが延々と炎を揺らし続けていた。おそらく今宵のクリスマス・イブにマッチさせた商店街の心憎い配慮だろう。

 駅から15分ぐらいかな?前述の幣舞橋に到着。この幣舞橋から見たホテルパコ釧路がこのページ冒頭の画像である。

 料金もそれほど高くなく、設備が充実したホテルだと思う。とにかく一休みしてホテルを出た。
 夕ご飯は、これもまた以前に「メンメ」の塩焼きでドギモを抜かれた「酒楽」で晩酌がてらとるつもりだ。駅前から歩いた道をまた引き返す。俺は歩くのがあまり苦にならないタイプなんでなんとも思わないがかなり冷えるのには閉口した。

 酒楽はやっていたが、マスターはもう俺のことなど覚えてはいまい。案の定、とくに声をかけられることなくおばさんからオーダーをとられた。

 とりあえず「つぶ刺し」を注文し、ひとり中ジョッキを傾けた。でも俺はこう見えて非常に読書家なんで、どんなに孤独なシチュエーションでも活字さえあればたいていは大丈夫なのだ。現に今も持参した手元の「オール読物」に目を向けているし。

 しかし、お通し、いくらなんでも多過ぎないかい?マカロニサラダとおでんの盛り合わせ。さらにオーダーしたつぶ刺し。とどめにサービスの鮭のあら汁。俺はメンメを楽しみに来たんだがもう腹一杯。ビールの後に二合徳利をふたつほど空けるとふらふらになってきた。

 行くか。精算を済ませていると、マスターが、
「おにいさん、前にここ来たことある?」
 お釣りを手渡しながら訊いてきた。
『ああ、2年ぐらい前の夏かな』
「やっぱり、どっかで見たことあると思ってたんだ」
『それならそうと、もっと早く声をかけてくれればよかったのに』
 お互いに大笑いした。

 店を出て、またまたしばれる街を歩いた。メインストリートを一歩出ると裏路地はほとんどスケートリンク状態。雪が少ない土地柄とは聞いていたが、改めて冬の釧路の異様な気温の低さを思い知った。
 裏道を歩き続けていると怪しげな男から声をかけられる。
「女はどうっすか?安くしますよ、旦那」
 釧路にまでポン引きがいるんかい?

『女?あいにく俺はモーホーなんでね』
 俺はニヤニヤしながら答えた。もちろん嘘だがポン引き野郎は、
「そっ、それは失礼しました」
 と得心顔で妙にあっさり消えて行った(爆)
『違うんだぞ。ほんとはね・・・あ、おっ、おい!』
 今日は、とにかく移動ばかりで一日が終わってしまった。列車の旅ってなかなか大変なもんだなと思いつつホテルのベッドで爆睡してしまう。

 ちなみに俺はモーホーではありません。北海道で女性と(軽い関係にはよくなるけど・・・もとい)、深い関係になったことも皆無だし、ススキノの風俗方面へも行ったこともございません。でもきちんと公序良俗をわきまえた善良な市民ならあたりまえじゃないスか。北のサムライはいつも心正しき旅人です。勘弁してくださいよ(汗)

 まさに清廉潔白でございますが、ほんとに女嫌いではございません。



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