2004.12.22 〜 2005.1.3
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札幌は、明治2年の開拓使設置以来130年北海道の中心都市として発展し続けている。人口実に184万人(2004現在)という堂々たる北の首府である(参考:札幌市役所HPより) 札幌の語源は、アイヌ語のサッ・ポロ(乾いた広いところ)という説やサリ・ポロ・ペッ(大きな湿地のあるところ)という説もあるらしい。そういえば高校時代部活の帰りによく通ったボリューム満点のサッポロラーメンの店の名が「サリホロ」だったなあ。 車窓から、時計台が見えてくると切ない気持ちでたまらなくなり、思わず込みあげてしまった。 もう6度目の札幌。しかし俺はキャンプ旅を続けているうちにいつの間にか札幌を避けるようになっていた。札幌入りするのは実に5年ぶりになるか。嫌いなわけじゃない。むしろ好きな街だ。あれ、なんだか昔の女に逢いに行くみたいな変な感慨が湧いてきたぞ。 |
札幌駅到着。顔へ横殴りに叩きつける雪を払いながら駅構内へ向かう。 今夜は札幌在住のキャンプ仲間、AOさんやIWAさんと駅前で一杯やることにしていた。 IWAさんは仕事の関係で遅れるとのこと。AOさんとは氏の勤務する会社のビル1階ロビーで待ち合わせをすることにした。 |
とりあえず地下鉄南北線中島公園駅へ向かおう。 地下街内部は汗ばむほど暑い。外気温とのギャップにどうにかなりそうだった。地下鉄に乗り、あっという間に中島公園駅へ到着。そして暫し歩くと今夜の宿だ。インターネット割引で格安に泊まれるので選んだのだが、意外に立派なシティホテルであった。 部屋の窓から札幌の街並みを見渡すとどんよりとした雪の色、なにもかもが真っ白に感じた。すべての世の中の汚い部分を覆い隠して浄化してくれている。ふとそんな気がした。 お茶を一杯のみ煙草を吸ってAOさんとの待ち合わせ場所へ向かうべくホテルを後にした。しかし足元が滑る。何度もコケそうになりながらも札幌駅前に到着。 さて約束のビルはと・・・ 暫し駅前を眺めわたすと比較的簡単に判った。しかし札幌駅前の凄いところに勤務してるんだAOさんて。キャンプのときの凝った道具持ちなイメージが強くてなんだか想像し難い(失礼)感じがした。 1階は某観光会社のロビーがあり、そこのソファーで新聞を読んでいる人発見! 『AOさん、どうも暫くでした。忙しいところすいませんねえ』 「いや、なんも今日は休日だから大丈夫だよ」 彼はニコニコしながら立ち上がった。 とりあえずIWAさんの仕事がひけるまで軽く飲もうということになり再び駅の地下街に入った。そして適当に入った焼き鳥屋でビールを飲んだ。なぜか札幌の地下街に入ると大汗をかいてしまう俺は、このビールが最高に美味く感じた。 AOさんはこの夏、コマンダーさん、ミヤタ、ラッシャーとの4人で知床岬までキャンプ2泊3日がかりで踏破した。道なき道。強烈な崖登り・降り。常にヒグマの恐怖。これらの困難を克服して成し遂げた快挙だと思う。残念ながら日程の関係で参戦できなかった俺は次の機会に交ぜてもらう(単独踏破は禁止されている)つもりでいたが・・・ 「もう、知床岬チャレンジはやりたくないね。あんなに辛いのは1回で充分だよ」 とのこと。 そんなこんなと岬の話などで盛り上がっているとIWAさんから携帯に連絡が入った。AOさんが現在飲んでいる店の大ざっぱな説明をすると暫くして店に現れた。 「どうもキタノさん。お久しぶり」 明るい屈託のない笑顔だった。 「これからアズの店に行きますか」 IWAさんの先導でそのアズの店へ。 アズの店?実はIWAさんの同級生でニックネーム・アズさんが副店長として勤めている居酒屋のことなのだ。キタノとも東北は牡鹿半島で一緒にキャンプしたこともある男だ。アズ氏にとっての初キャンプツーでは鬼軍曹キタノに(耳を噛まれるなど)随分と虐待・・・もっ、もとい、ビシビシと野営のノウハウを体で鍛えられていた。そして、ほとんど歯をくいしばって泣いてばかりいた塾生アズくんの記憶がある。キタノ酔っとスクールにて(一部脚色あり) 詳しくは、海流をご覧あれ! 駅の北口に位置する店へ入ると中はとても混み合っていた。なかなか繁盛してるじゃねえかと思っていると・・・・・ |
「きっ、キタノ隊長!」 ほとんど涙声でアズさんが走りよってきた(一部脚色あり) 『よっ、久しぶりだな、副店長。耳噛むぞ』 と言うと 「ホント、お久しぶりっす。今、席、案内しますから」 とテキパキ動いていた。俺はIWAさんと目を合わせキャンプの時とは随分違うなとお互いニヤリと笑う。 |
ちょっと怪我をしているIWAさんは酒を控えているらしくウーロン茶でつき合ってくれた。申しわけない。しかし、こうやって3人で飲んでいると、やっぱりキャンプツーリングの話題ばかりになってしまうからおもしろい。 AOさんと俺は、数日後にバイクで元旦宗谷岬を目指し来道する鎌倉の学生ラッシャー推奨の焼酎”GRAND BLEU”をオーダーした。なんと羅臼の海洋深層水を使用しているらしい。 |
酒を運んできたアズ副店長は 「俺も椅子に座って交じりたい」 とこぼしていたが、 『おめえ、耳噛むぞ』 鬼軍曹にどやされたら、すごすごと逃げ出した。 それにしてもさすが違うねえ、札幌だと。生き生きしてるわ、副店長! 「ところで明日からどうすんの?」 とAOさんに訊かれ、 『さて、どうしましょうねえ』 俺の言葉に2人はがっかりしていた。 「だいたいねえ、この時期の北海道って微妙だよ。流氷も来てないし、雪祭りもまだだし」 『まっ、まあ、とりあえず道東でよいでしょうか?』 すると2人は呆れ過ぎて吹き出してしまった。 楽しい時間もやがて閉店のお時間と同時にお開きとなった。店を出ると副店長が見送りに出てくれた。 「隊長、また会いましょうね」 アズ副店長はほとんど涙声で手を振っている。 『おう、次はキャンプでな、副店長。楽しみにしてるぜ。フフフ』 なぜかアズ氏の笑顔がみるみるとひきつっていく。大丈夫、もうイジメ・・・もとい鍛えないからマジで夏のオフキャンプ(EOC)にも参加してくれ。待ってるよ。 地下鉄に乗り、途中の乗換えでAOさんやIWAさんとも別れた。本当に突然現れたのに歓待してもらった北の仲間には感謝に耐えない。改めて御礼申しあげます。 ホテルに入る前にラーメンでも食べようと思い暖簾をくぐったら飲み屋だった。しかも店の従業員も客も全員老女・・・もといお歳を召した女性ばかり。さらにみんなかなり酔っているしぃ。ママと客が料金のことでケンカしてるしぃ。最低・・・ 「おにいさん、どっから来たの?」 『・・・・・』 ノーコメント。 酔ったおばさんに色目つかわれた。ゲー。ラーメンが思わず胃の中から込みあげてきた。イヤだ。終いにゃ、俺へカラオケ唄えとか言い始まるし。だいたい俺がカラオケ唄ったらみんな吐くぞ。 て、撤収〜 と思いきや・・・ 「おにいさん、あらあ〜帰るのお〜」 後ろからおぞましきババアに抱きつかれた。反射的に背負い投げを炸裂しそうになるも、どうにか振りきり店を出た。なんなんだこの店は。ラーメンも不味いし、気色ワル〜 俺、もう絶対に札幌来ねえぞ!(と、一瞬だけ思いました) でも最近、こんなことばかっかしなんだよなあ〜 |
気を取り直しながら街を歩いた。 すると中島公園から綺麗な灯の光が見えた。雪のなかに光る一筋の光明。 さっきの怪しい店の出来事は野良犬に噛まれたと思って忘れよう。ふと、そんな気分にもなれた。 しかし、ベッドのなかではゾンビに追っかけられるフォラー映画のような怖い夢にひどくうなされていた。 |
2004年暮れの札幌のホテルにて・・・ そんな北野の寝顔あり。 |