北海道ツーリング1999


    第1話 いざ出陣! 8月1日(日)天候 晴れ    

 日差しがかなり眩しい。1999年8月1日、19日間のロングツーリング出発の瞬間だ。妻子が出来て久しい男が、オートバイでは、実に12年ぶりに北の大地へと旅立つ。

 出がけに息子に大泣きをされた。まさに後ろ髪を引かれる思いだ。妻にも申しわけないと思う。おっと最初から所帯地味た話になり失礼。振り切るようにゼファーイレブンのエンジン、セル一発点火!ヨシムラサイクロンの鮮やかな排気音と共にひどく姿勢のよい馬上の人となるキタノであった。照準は北あるのみ。

 途中、奥さんと子供3人置いての家来・ヨッシ−と合流し、一路仙台港フェリーターミナルを目指した。前日、念のため愛車ゼファー・イレブンのオイル交換(それが後日大変なトラブルを巻き起こす)をしておいたためか快調な走り(今のところは)だ。

 仙台市内に入り、「めしの半田屋」で安くてボリュームのある夕食を腹に流し込む。またフェリーの中のレストランは高いというイメージがあったので、コンビニで明日の朝の食料+今夜のアルコールを調達する。それを無造作に荷物に張ってあるツーリングネットにはさみフェリーターミナルに向かった。

 走行中、ドスンというなにかが落ちたような音がした。嫌な予感が脳裏をよぎる。案の定、さっきコンビニで買ったアルコールと食料がアスファルトに散乱していた。瓶とカップラーメンの容器が割れ、カレーパンが袋から飛び出している。片付けようとしたらガラスの破片で指を切り流血の惨事!これからの旅を予見しているような気がしてならなかった。

 フェリーに乗船するのも12年ぶりだ。相変わらず敬語のできない某フェリー会社の職員の応対に呆れつつもどこか懐かしさが込み上げてくる。風呂に入り、二等の大部屋で横になった。フェリーターミナルの売店で買い直した酒を飲みながら、旅のガイドブックをゆっくり見ていると22時にピタリと消灯の時間になってしまった。脇にいるヨッシーは船酔いになって弱っているらしい。僕は、結構、アルコールの方に酔っていつの間にか寝ていた。



運がよければアザラシも
 襟裳岬にて  8月2日(月) 天候 晴れ                   


 10時頃、有珠山が見えた。久しぶりに船上から眺める北海道だ。「帰ってきたぞ!」。以前の愛機CB750Fを偲びながら心の中で叫んだ。今回も愛機ゼファーと共に縦横無尽に駆け回ってやるつもりだ。仕事やスキーなどでは何度も来てる北海道だが、キタノにとってオートバイの旅は格別なものなのである。天気は快晴でハンパじゃない暑さだ。真夏の北海道って、こんなに暑いものなのか?11:00苫小牧上陸。旅の前半は、海岸線を逆周りで一周するつもりだ。

 工場地帯から早くエスケープしたいが、ヨッシーがレッドバロン(バイク屋)に行きたいとのことなので、それにつき合う。途中、市街地にもかかわらずライダーとすれ違うたびに百発百中ピースサインが飛んでくる。地元のヤンキー風のにいちゃんまでも。みんな僕の上陸を歓迎してくれてるんだなあ(違うと思う)。たとえ見ず知らずでも結束の固いライダー同士の挨拶「ピースサイン」が北海道では脈々と生きていた。僕もピースサイン出したり、もらったり、返したりするの何年ぶりだろう。


 まずは襟裳岬に向かう。門別から浦河にかけての日高地方は、数多くのダービー馬を生み出した競走馬のふるさとである。僕は人生そのものがギャンブルと思っている?ので競馬などの賭事は一切やらない(というか弱いだけ)。でも馬好きな人にはたまらないだろうなあと思いつつ一気に駆け抜けた。

 16:00襟裳岬到着。駐車場から10分ほど歩いて展望台に着いた。相変わらず森進一の「襟裳岬」のエンドレスな歌声が待っていた。1987年には視界ゼロで唄通り何にも無かった。もとい、見えなかった。今回も予報では90%曇りとのことだったが岬はうまく晴れていて眺めがよい。その後レストハウスで有名な”ツブ丼”を食べたが、これはあまり美味しくなかった。

 襟裳岬で民宿の客引きのおばさんに声をかけられたが、あいにく近くの百人浜オートキャンプ場にテントを設営することになっていると言ってお断りし出発する。海岸線をしばらく走るとすぐにキャンプ場に着いた。このキャンプ場は管理こそ厳しいが低料金のわりに清潔で設備の整っているキャンプ場だ。さすがキャンプ王国北海道。

 早めに就寝したつもりだったが女房子供の顔が頭にチラついて、なかなか寝付けない。結婚してからは、ほとんど妻子と離れたことがなかった。つまり、恥ずかしながらホームシックだ。

 後年、「北のサムライ」と震撼される男?旅人キタノも、当時は、ごく平凡な家庭の夫であり、若き父親でしかなかった。さらに久々のロングツーリングに心身ともに馴染んでおらんようだ(弱っ)


 文章も下手だったし。