第16話 キャンプ場がない 8月17日(火) 天候 晴れ後雨
いよいよこの旅で、北海道に宿泊できるのは今日が最後となる。最後の夜はやはりキャンプ場で閉めにしたい。ホテルの前で準備をしていると、ここに宿泊したらしいライダーが立ちゴケした。すぐに手を貸す。特に破損してはいないようだ。今日は、室蘭の地球岬を目指すことになっている。立ちゴケしたライダーの照れ笑いに見送られ出発。 今回すでに1度訪れた支笏湖方面から登別を抜け、室蘭に出るルートを考えた。特に支笏湖付近では「苔の洞門」を見落としている。苔の洞門は、火山岩が浸食されて作られた約4キロの峡谷である。谷の両側の岩壁にはびっしりと苔が付いて緑のジュウタンの中にいるような幻想的な雰囲気のところらしい。 めずらしくバイクで風を切っていても、それほどの暑さを感じない。心地よい空気の中、支笏湖の湖岸を走る。苔の洞門入口の駐車場に到着。観光バスなども多く非常に混雑していた。バイクとクルマの駐車場が分かれており、駐輪場の方は、かなり狭いしバイクもたくさん停まっている。 |
洞爺湖手前で道道2号線に入り、眺めがすばらしいと言われるオロフレ峠に向かう。ところが、標高930mのオロフレ峠は霧が出やすいことでも有名らしい。洞爺湖、昭和新山、羊蹄山、倶多楽湖、太平洋と眺め渡せるはずが、白いモヤが覆っている。どうやら道南全体の天気が降り坂のようだ。 |
登別からR36に入り、室蘭方面に向かう。空は曇りだ。途中、遅い昼食をとっているとついに雨がふりだした。カッパを着るほどでもないので我慢して走っていると雨は何とかやんできた。室蘭は工業地帯なんだな〜と景色を見ながら思っているうちに地球岬到着。薄日が差してきた。 |
地球岬 |
「チケウ」、アイヌ語で断崖絶壁という意味らしい。それを地球といったところが洒落っ気があって非常によろしい。いったいどんなところなのかと、ずっと気になっていた。室蘭市街の東南約10キロ。海面から120mの断崖の上に白亜の灯台が建つ。ここからの眺望は、はるかに続く太平洋の大海原。天気が良ければ対岸に下北半島が見えるそうだが今日は残念ながら曇り空だ。時計を見るとそろそろテントを立てたい時間だ。今夜、泊まるキャンプ場をここでセレクトする。 ここから少し登別方面に戻り、道道327を山間部に向かうと「渓流キャンプ場」とある。渓流釣りが好きな我々には、よい名前なので、そこに決めた。途中で、食料やアルコールを調達し、山間部に向かう。ところが探せども探せども見つからない。僅かにある民家で聞くと個人の所有地を通らないと川原にあるキャンプ場にはいけないらしい。入り口らしき所にある民家に通行の許可を得ようとしたが誰もいない。なんかずるいと思った。民家の私有地からしか入れないなんて、そこの家の個人キャンプ場と等しいのではないか。気を取り直して他の場所でのゲリラキャンプも考えたがマジでクマが出そうなので撤収する。 |
やる気のないキツネ |
登別を過ぎると倶多楽湖キャンプ場が地図に記してあるので行ってみる。あたりが薄暗くなってきている。倶多楽湖到着。ところが探してみるとキャンプ場は閉鎖。 雨がまた降り出してくる。最後の北海道の夜が台無しだな。結局、ぐるっと登別温泉側に戻ってしまった。道路脇にはあざ笑うかのごとくキタキツネがうじゃうじゃいる。地獄谷手前の大湯沼で、また野営地の検討。 |
大湯沼は、周囲1q、深さ22m、沼のそこから硫黄分を含んだ白緑色の熱湯が湧き出る湯沼だ。湯の温度は表面で40〜50度、深いところでは130度に達するそうな。入口には料金所(普段、金をとってんのか)があるが時間が遅いので誰もいない。トイレもご丁寧にシャッターが閉まっていた。人気のない屋根付のベンチで一休みしながら作戦を練った。時計は18:00を回っている。 | 奥の湯沼 |
まず考えたのは、このまま登別温泉に泊まる。まだ一度も温泉ホテルに泊まってないので最後ぐらいどうかなと考えた。しかし、せっかく泊まっても、この時間では料理に期待ができない。第2案として、この場所に野宿する。でも朝まで硫黄のにおいをかいでいたら具合が悪くなりそうなので却下。最後は、やはりビジホ。2日連続で贅沢だが、やむを得ないだろう。苫小牧に昔からライダーに親切と言われるホテル「於久仁」があるのを思い出す。さっそく携帯から連絡すると宿泊OK。どうやら野宿は免れたようだ。 1時間弱くらいで、於久仁到着。もう真っ暗だ。入口にいくとスポーツが盛んなことで有名な埼玉県のS高校の某運動部宿泊歓迎の看板が出ている。そこの若い監督らしき浴衣姿の男が、こっちに歩いてきた。酔っているらしい。一番右端に停まっているバイクを指さし「これハーレーか」と言っている。何だ僕に聞いてんのか。失礼な奴だな。初対面のしかも明らかに年長の僕をつかまえて、これハーレーかはないだろうムッときたので「誰だオマエ?俺が他人のバイク知るわけないじゃん」と不機嫌な声で答えてやったら、男は目をぱちぱちさせながら退散していった。 |