ライダー定食
2009年9月某日、ふらりと丸森町まで出かけた記録
宮城県丸森町のお寿司屋さん、”金八”のライダー定食がずっと気になっていた。TMの東北版では、”ライダー寿司”と書かれているが、実際はライダー定食という言い方をされているようだ。 東直己の短編小説”ライダー定食”の驚愕のエンディングには仰天してしまった記憶がある。まさか同じオチということはあり得ないだろう。ということでお天気もよいのでツーリングがてら丸森町へ出かけて見ることにした。 福島〜伊達〜丸森〜相馬〜真野ダム(鹿島)〜福島というルートに決定した。 |
久しぶりにカドヤの革ジャンを羽織り、10時ぐらいに自宅を出発。革ジャンでは暑いぐらいの陽気だったが、宮城県に入ると気温が20度程度となり心地よく阿武隈川沿いのルートを快走する。阿武隈急行”丸森線”もいい感じで、並走していた。 |
いつの日か、あの電車に揺られてのんびり乗ってみたいと思いつつ、川面を眺めるも愛機ゼファーは小気味よく風をきる。 正午丁度に金八寿司へ到着。駐車場で愛機から降りようとした刹那、 「今日は、いいお天気になってよかったわね。きのうは雨でとても寒かったの」 とても愛想のいいオバサンが出迎えてくれた。 このお店のオーナーはバイク好きなんだろう。BM、エストレヤ、四輪バギーなどが並んでいた。店に入ると息子さんが包丁をふるいながら、仕込みをしている。 「いらっしゃい。どちらからですか」 『福島市内からです。これから相馬を経由して帰宅しようと思って』 「そうでしたか。日帰りツーリングには丁度よいルートでしょうね」 若い息子さんも人あたりのよい板さんだった。もちろんライダーである。 「オーダーは、ライダー定食でよろしいですね」 『そうして、もらおうか』 待っている時間にオバサンが訪れたライダーの写真集を持ってきた。 「福島から来たんなら、知っているライダーさんが写っているかもしれないよ」 『いや、俺は一匹狼なんであんまりというより、地元のライダーとの交流ってほとんどないのですよ』 「それわかる。まわりに気を遣うのが面倒になってくるのでしょう。お客さん、もしかして、ひとりで北海道ツーリングとかされてませんか」 息子さんから指摘を受けた。 鋭い! 『俺は、ほとんど北海道ツーリングのために生きてきました。この夏は断腸の思いで断念したけど』 「やっぱり。実はオヤジも俺も北海道ツーリングが大好きなんですよ。オヤジは、もう何十年も通ってます」 「そうね、骨は北の大地に埋めてくれとか言っているのよ」 オバサンは噴き出していた。 『実は俺も女房に骨はオホーツクに撒いてくれといってあるんです』 「お客さんもしょうがない北海道病だね」 笑い声が店内に響いた。なんて居心地のよいお店なのだろう。 |
やがて、ライダー定食が運ばれてきた。 ”ばら寿司”だ。ふんだんに海の幸が入っていて、凄いボリューム。味噌汁も蟹のダシがよく効いて美味しい。サラダも食後のコーヒーもついて1050円。本当に良心的なお値段だった。 |
精算を済ませると、オバサンから写真を1枚撮らせてもらいたいといわれた。俺もあのアルバムに掲載されるらしい。なんだか、北海道に居るみたいと錯覚してしまった。 ついでにオバサンに俺のデジカメでブログ用にと撮っていただく。それが冒頭の画像だ。 『オバサンの画像も撮らせてください』 と、依頼したのだが・・・ 「いっ、いや。撮らないで。歳もとったし、スッピンだし、オバサンはいいの」 顔を覆ってしまう。少女のような愛らしさだった。お若い頃は、大変な別嬪さんだったという面影あり。 |
ご主人であるオーナーさんは、この日もゴルフにいかれたそうな。 「こっちの身にもなってもらいたいですよ」 息子さんは苦笑しておられた。 随分、長居してしまった。なんだか常連になりそうな予感がする金八寿司を後にした。 |
その後、相馬市松川浦でツボダイ(小)を軒先で食べ、生蛸を購入しスロットルをあげた。 真野ダム付近の峠道を悠然とローリングしていく。鋭いヘアピンもあり、相変わらずなかなか手ごわい。阿武隈山系の小さな町の妻の実家へ立ち寄る。 そして、蛸刺しが好きなおばあちゃんへ手渡した。 「たまには、ゆるりと遊びにくるんだよ」 女房の祖母から、お茶を一杯馳走になり再びアクセルを握る。 16時頃、無事、拙宅へ辿り着いた。いとおかしな1日であった。 |
毎朝、思うのだが、あと10分寝ていたらどれほどラッキーだろうかと、思いつつ妻に叩き起こされる日々が続いている。 ↑画像は、日曜に訪れた丸森町の金八寿司店内のものだ。レトロなポスターや看板が飾られていた。駐車場にもオロナミンやキンチョウ蚊取の懐かしい看板が並んでいた。 目をとめたのは”百聞一見”の文字。 HPやブログを散々やりながらなんだが、現実の旅の方がいいに決まっている。 百聞は一見にしかず。 いくら、うちのHPやブログの文章や画像を見たって、ご自分の目でご覧になる方が一番感動できるだろう。 ネットは、そのきっかけにすぎない。 とはいえ、昨今、短いツーリングや野営でも疲れがとれない現実。 いやあ〜、今日の仕事もしんどかった。 家に持ち帰った書類をリビングへ全部忘れている事実に通勤途中に気づいた。 10時ごろ、職場に、 「キタノの妻です」 という人が密かに届けてくれたそうな。 キタノの妻? どこの妻?あちこちにいるから特定できないね(嘘) |