足が痛てえ〜
昨夜、左右タチゴケの勢いでバイクのエンジン部分で両膝にかなりのダメージの火傷を負う。最低だ。足が曲がんねえ。
ヨッシーには「大丈夫だ」と痩せ我慢したが、洒落にならない重症だ。これでマシンの操縦が出来んのかよ。あ〜情けねえぜ。痛みでかなりギクシャクしながらもテントを撤収させた。
今日まで、海岸線を中心に旅を続けていたが、これからのターゲットは内陸部の攻略だ。しかし、俺のバディは満身創痍だな。火傷がなくてもハチや蚊、ブヨ、アブなどから刺されまくり、間接の内側はこの暑さで汗疹だらけだ。これで後半戦を耐え切れるのか。かなり疑問に感じつつも支笏湖へ向けスロットルを捻った。
洞爺湖畔のスタンドで給油していると同世代の従業員が
「あんたらキャンプの旅かい」
と話しかけてくる。
『ああ、そうだ』
「しかし、この暑さと不景気は異常だよ。お蔭で温泉街ががらがらだべさ。キャンプ場はなぜか異様に混んでいるけどね」
言われてみれば温泉街に人影がない。
R453、R276と山間の国道をひた走る。山間部だけあって走行しているとやや涼しく感じる。ほんとに少しだけだが。途中、道の駅「フォーレスト276大滝」で小休止。
しかし、ここの道の駅ってトイレまで遠過ぎねえか。売店が並ぶ通路の一番奥から、さらに階段を降りないと辿り着かない。俺はロボットのように火傷で痛めた両膝を庇いながら歩いた。お蔭で漏れそうになった。また、トイレ前の自動演奏のピアノって必要か?バブル期の”ふるさと創生1億円”の交付に関連しているみたいだが、金の遣い方、絶対変だろ?まあ、きのこ汁が安くて美味かったからいいけど。
美笛峠を過ぎると美しい支笏湖が眼下に広がってくる。実は支笏湖ってかなりお気に入りポイントだったりする。周囲約42キロ、水質日本一の最も冷たい不凍湖である。
樽前山をのぞみながら湖畔沿いのルートを走る。のんびりとした青の湖面。非常に快適だ。ホテルや売店などが集中するおそらく一番賑やかなスポットへ愛機を停めた。しかし、なんだか人気がないな。まあ、ひとごみが嫌いな俺としちゃあ、その方が助かるが。
快晴の空と湖の透明度の高い蒼がとてもよく融和し、清らかな雰囲気を醸し出している。湖全体を眺めわたすと原生林に覆われていた。そっとしておきたい「深窓の美女」という感じがぴったり。静かに支笏湖を後にした。
酷暑のなか、千歳、追分を抜け夕張へ突入。街並みがとても懐かしい。俺が子供の頃に見た光景にそっくり。
「幸福の黄色いハンカチ」想い出広場へ入ると炭住がまだ残っていた。しかもまだ人が住んでるぜ。すげえなあ」
しかし、あの映画は本当に感動ものだった。なんと言っても健さんがかっこ良過ぎ。俺もああなりてえ・・・
無理だな。
映画で使われた住宅には健さんや倍賞千恵子のリアルな人形も配置されていた。また映画のなかで武田鉄也が乗っていたファミリアもそのままに残される。
思いをあの映画に馳せる。日本の多くの国民が純粋な心を持っていた時代だ。北海道は今もその頃の雰囲気が濃厚に存在すると思う。だから俺は魅かれるのか。
めろん城を見学する。この地の特産夕張メロンを原料とするワインやリキュール類などの製造過程を無料で見せてくれる。
試飲で少しだけ味見したメロン酒が本当に美味しかった。もちろんワインと併せて購入し自宅へ送った。ついでに・・・いや、感謝を込めて妻にメロンのアイスクリームも送る。
初めて北海道ツーリングをした1987年、フェリーで帯広の自衛官ウチダという男と知り合い意気投合したことがあった。酒を飲みながらウチダが盛んに夕張が好きだと言っていた記憶がある。なるほど彼は映画好きだったのか。いやメロン好きか?とにかく夕張は北の旅の穴場スポットであることは間違いない。
夕張を後にし、日高方面へとスロットルをあげた。
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