北海道ツーリング2013








西岡公園にて(画像提供:アンビシャス)



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終章



 昨夜は、かなりヨッパになった。朝は二日酔い状況で目覚めた。これではいかんとガンガン洗顔をして、朝食をモリモリと食べた。

 本日が、この夏の北海道ツーリングの最終日である。布団を綺麗に畳み、シーツと枕カバーを所定の場所へ返した。そして愛機へのパッキングを開始する。

 昨年もアンビに長く滞在させていただいた。その影響で、あまりにも愛機を放置したので帰りがけにエンジンが不機嫌になった。まあ、本年はそうならぬよう、ツアーから帰り、夕食の間までの僅かな時間に愛機をひと走りさせ調整していた。

「ゴロウさん、苫小牧までの天気、なんとか大丈夫そうだよ」
 村長がネットで天気を調べてくれていた。

 とにかく、ランチは札幌のラ・フランス亭でとる。その前にみんなで、どこかを散策するらしい。

「ゴロウさん、いってらっしゃい!」
 ユミさんに見送られて出発した。

『ユミさん、お世話になりました。行ってきます!』

 村長の車の後ろについて走った。

 天気は不安定といいながらもなんとなく乾いている感じがする。空気が秋に入れ替わったのだろうか。バイクに乗っていて丁度よい、心地いい陽気だった。

 R30にて中山峠を越え、定山渓の温泉街も過ぎたあたりのパーキングでWC休憩となった。交通の要衝らしく、それなりに停車している車の数が多いし、トイレも混み合っている。そして出発。果たして、これからの散策エリアはどこなのだろう。

 愛機に着いているナビによると、既にランチの目的地”ラ・フランス亭”は過ぎていた。なんとなく住宅地の中を走っているうちに本日午前中の目的地に到着した。

 その名は”西岡公園”という。住所は札幌市豊平区西岡。その面積は41haという広大な湿原だ。もちろん筆者は、存じませんでした。

 西岡公園は、水源地を中心に月寒川及びその上流域の湿原と森林からなる自然豊かな公園である。水と緑に恵まれた環境に多様な動植物が生息している。トンボや野鳥の種類も多く道内でも屈指の生息地となっている。2008年には、この貴重な自然を将来にわたり保全していくために特殊公園(風致)に種別変更される。

 水源地は1910年、陸軍が水道として利用するために月寒川をせき止めて造った。水源地にある取水塔も、その時に建造される(パンフより) 
 1945年からは、豊平町上水道として、1961年からは札幌市上水道として長く市民のために役立っていたが、1971年にその役目を終える。その後、水源地とその周りの森は公園として整備され、1980年からは西岡公園として広く市民から親しまれている(ほとんどパンフより) 
 というわけでパーキングから村長の案内で歩き始めた。やはり気温は高めだった。

 なんとなく札幌市内のちょっとした公園なのかなと少しナメていました。

 でも普通の公園の遊歩道っぽいのは最初だけで次第に人影もなくなり、自然豊かな風景になっていく。
   水源地へ到着。ぞんがい大きな人口の堤だ。水は少し濁って見えるが、天然の匂いを感じる。

 この地点は、展望テラスと呼ばれている。テラスとは”盛り土”の意味があり、地面よりは高いということだ。2階以上だとベランダとかバルコニーと呼ぶそうだ。全然知らなかった。
 セイダカアワダチソウという黄色い花があたり一面に咲いている。その他、ハッカの花とかいろいろ咲いていたが、筆者はまったくわからない。全部、植物に博識な村長からレクチャーしていただく。本当に実によくご存じだと、内心いつも舌を巻いていたりする筆者だった。

画像提供:アンビシャス
 水面には鴨がいて、のんびりと泳いでいた。これを見ると、つっ、ついやっちまうんですよ。

 おいでカモ〜ん♪

 しかし、この状況を理解できたのは、カワベッティさんだけで、ギャル2名にはまったく意味が伝わらなかった(TT)
 公園内には、無数の小川が流れていた。気温が高いので水浴びしたい気分になる。

 ようく川の流れを見るとたくさんの小魚が泳いでいた。どうやらエゾウグイらしい。もともと鯉とか鮒は北海道に生息してなかったのだが、ウグイはどうなんだろう?エゾがつくから存在していたのだろう。とりあえず褒めてつかわそう!

 エーゾ、ウグイ! 

画像提供:アンビシャス

 画像提供:アンビシャス
 散策も佳境に達してくると忽然とヨーロッパの光景が広がってくる。カワベさんの背景の木は”なかよしの木”と呼ばれているそうだ。

 なかよしの木の本当の名前は”ヨーロッパトウヒ”というらしい。確信はありませんが?
 このあたりにはヤマブドウやコクワがたわわに実っていた。

 これを焼酎に漬けてブドウ酒にしたら最高だろうなあなんて、筆者は少しも考えておりませんでした。

 本当にまったく想像だにできなかった。自然の物は自然にしておくのが一番でしょう。
 
画像提供:アンビシャス
 
画像提供:アンビシャス
 ここの小川は”ヘイケボタル”の生息地だ。もうホタルの時期は過ぎているが、初夏の候には綺麗なファイア・フライが楽しめるのだろう。

 もう、そろそろゴールだ。「後ろから写真を撮るから、そこをまっすぐ歩いて」といわれたのだが、これが村長の謀略で迷走する。しかし、実の娘まで欺くとは(笑)
 2時間ほど歩いて、存分に腹を空かして向かったのは1年ぶりの”ラ・フランス亭”だ。ここで本日からニセコ入りするくっしーと再会する。なんでもゴロウさんが来てるなら日程を早めてもラ・フランス亭で合流しようと思ったそうだ。なんかすいませんねえ。

 まずは前菜。詳しくは失念しったけどフォワグラ入りだった。そして最初から絶品の美味さだった。 

 冷たいコーンスープ。とにかく甘くてコクが凄い。確かニセコ産のコーンを使用していたと思います。間違ったらお赦しを。あっという間に飲み干してしまった。
 メインディッシュは、ルスツ産ポークのホンドボーである。最高級のお肉の旨みを存分に引き出す魔法のように美味しいソース。もう、理屈抜きで上品かつゴージャスなフレンチだ。道内屈指のシェフの凄腕が冴えまくった逸品だ。
   昨年も感心したのだが、カワベッティさんのお皿はピカピカである。パンなどを上手く使って綺麗に料理を召しあがっているのだ。

 マダム・マミコさんからは「今回はワインは飲まないんですか?」と訊かれる。そういえば昨年はグラスワインを6,7杯飲んで(料理代以上)しまった記憶があった。これからバイクを運転して福島に帰るものでと答えた。運転さえなければ絶対にワインを飲みました。 
 デザートは、桃とハスカップのタルトだ。フルーツとクリームの甘みたっぷりで、頬っぺが落ちるほど美味しい。

 本格的なフランス料理を食べるのは、近年では札幌のラ・フランス亭でしかございませんが、過去の記憶を紐解いてもこちらで食べるフレンチの味を凌駕するお店はございません。お世辞抜きに感動的なフレンチレストランである。実に美味かったあ〜
 
   食後の飲み物を楽しみながら歓談する。筆者はアイスコーヒーをすすりながら会話を楽しんだ。

 左から、カワベッティさん(画像がぶれてしまい失礼)、くっしー、村長。

 今年は無理かと思ってた”ラ・フランス亭”での会食ができて、本当に満足であった。
『ご馳走様でした』

 駐車場に移動し、いよいよ皆さんとお別れだ。

 シェフとマミコさんも見送りに出てきてくれた。

 筆者は元のツーリングライダーに変身しないといけないんで、いろいろと準備に手間取った。まさか登山靴のままでレストランへ入るわけにもいかないので、村長から靴を借りておりました。

 なんだか凄い大変な作業。そのうち、茨城の実家に帰省するハルミちゃんが「お世話になりました」と言いながら新千歳空港へと向かっていく。

 筆者の愛機のエンジンも暖めないといかんし、なにやってんだ俺!

 見兼ねたカワベッティーさんから、靴を出し換えてもらったり、いろいろと便宜をはかっていただく。彼女はなにからなにまで実に気の効く九州のレディなのです。

 くっしーも昨夏から正月まで大変懇意にしていただきありがとうございました。なんだか、ずいぶん無理をさせちゃったみたいで。

 ようやく出発の準備が整う。

 おふたりとがっちりと握手を交わした。

 旅の終わりの寂しいシーンを若い頃からぼくは随分と苦手にしてきた。今も本質的にはまったく変わらないと思う。

 えーいと愛機のアクセルをあげると、思い切りエンストをする。まだ、暖気が完了してなかったようだ。

「ゴロウさん、バイクはまだ北海道から帰りたくないみたいだよ・・・」
 村長のタイムリーな発言に一同大爆笑となる。

 なんて多少のハプニングもあったけど、苫小牧へ向けて、今度こそはスロットルをあげた。では村長、次の正月は無理だと思いますが、また来年の夏に!

『皆さん、お世話になりました』

 尚、ラ・フランス亭のマダム・マミコさんは、後日、当サイトの熱心な読者になっていただいたとのこと。本当に恐縮至極な限りでございます。
 ここから(札幌市清田区)から苫小牧へ出るなど、楽勝のルートなのだが、やっぱりナビにたよってしまう。ただ、ナビだとどうしても高速道へ誘導されるので、要所要所でルートを修正した。するとウトナイ湖へ。苫小牧市東部の淡水湖だ。アイヌ語で、「ウッ・ナイ・トー」(あばら骨の骨の川の沼の意)。マガンや白鳥の渡り鳥の中継地である。この日は、どんよりと曇っていて寂寥感が漂う光景であった。  
   苫小牧港FT到着。思ったより時間がかかった。

 今宵の船は”きたかみ”か。ツーリングライダーのマシンもちらほらと集まってきた。

 乗船手続きを済ませ、待合室で休んでいるとウトウトと寝込んでしまった。やはり疲労が蓄積されていたのか。歳には勝てん。
 6時ぐらいにアナウンスがあり、”きたかみ”へ乗船した。

 あ〜あ、この夏の北海道ツーリングも終わっちまったか。いつものように出港の銅鑼の音を聴きながら、改めて実感した。

 ビールをガンガン飲みながら、セイコマで買い込んでいた海苔巻きやチーカマなどをかじって旅を振り返っていた。

 ずいぶんと北の大地の気候が変動した思う。灼熱の夏ばかりだ。10年ぐらい前までは必ず定期的に冷夏がやって来た。キャンプが凍えるほど寒くてツーリングライダーを苦しめていたものだ。

 今回は、暑さはもちろんだが、”かつて経験したことのない豪雨”にさいなまれた。こちらの方もかなり深刻な問題と思う。野営時の雨天対策はさらに万全を期すべきだろう。特にグランドシートは必携だと痛感した。

 B寝台で、赤ワインをちびちび飲みながら、そんなことを考えているうちに爆睡してしまった。
 翌朝、いつものように朝一でお風呂を浴びて朝食バイキングをしこたま食べた。

 本日は、仙台港へ接岸予定時刻が都合により1時間ほど早まったというアナウンスが入った。時折発生するアクシデントである。ぼくは慌てて準備し、デッキに下りた。ずいぶん下船してライダーの数も減っていたが、マイペースでパッキングを済ませて仙台へ上陸した。 
 
   仙台市内の牛タン専門店で、昼食を摂ろうとうっすらと考えていた。でも予定よりも早い時刻なので、腹は空いていなし、店もまだ開いてないだろう。

 しょうがない。まっすぐ帰福するか。いつものように仙台東部道路〜南部道路〜東北道を粛々と南下する。うだるような暑さが、ぼくと愛機に襲いかかる。たまらず、国見SAでジュースを飲みながら涼をとった。




男は背中で語れ!



 もう少しだ。もう少しで拙宅に帰れる。

 ヨシムラ・サイクロンの軽快なサイクル・サウンドが東北道にこだまし、その音色が旅の終わりを否応なしに告げていた。

 あと何度、同じような旅ができるのだろうか?

 まったくわからない?

 以前には、あり得なかったことも・・・

 年によっては、仕事上のイレギュラーなアクシデントに見舞われたり、多忙すぎて休みが連続してとれなかったりして北海道ツーリングを断念せざるを得ない状況になったこともある。以前の8月は、実務的にも暇で、仕事にまったく影響のない時期だったのに。

 先の読めない時代になったのだ。

 北のヘッポコザムライの体もずいぶんぶっ壊れてきた。特に左膝へ蓄積されてきたダメージが酷い。

 それでもしぶとく、北の旅を続けていこうとする努力は積み重ねていくつもりだ。

 諸行無常・・・ 

 たとえ世の中や気象が、どう変わろうとも!

 そろそろ、つらつらと綴ってきた筆をいったん置きたいと思う。とてもとても長い夏の旅の物語であった。また、この最終章のみ、UPされるまで途方もない日々を費やしたが、これでようやく年が越せる・・・

 というより、もう年を越して正月になっているではないか。ぼくはいつからこんなに遅筆になったのだろう。まあ、それでも胸のつかえがひとつ落ちたことには違いございません。

 最後まで、北のサムライの拙い読み物の世界におつき合いくださいました皆様には深く御礼申し上げる次第でございます。これに懲りず、またご覧いただければ嬉しい限りです。

 それでは・・・

 明けましておめでとうございます!

 いつかどこかの旅の空にて!



西岡湿原フラワートレッキングとラ・フランス亭グルメツアー
制作:ニセコアンビシャス



FIN



記事 北野一機



2014年1月吉日連載完了



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