北海道ツーリング2007







美流渡オフ




画像提供:イトウ氏







 陽炎の中、岩見沢の山中を縫うように走り、美流渡の集落に入る。美流渡温泉入口近くにSPARがあるので、ここで今宵のアルコール・肉・炭等の物資を調達した。ここのSPARは生鮮食料品や炭まで取り扱うなど、品揃えがかなり充実している。なぜかセイコマカードの提示まで求められた。
 本当に超過積載状態になり、美流渡温泉錦苑到着。さっそく、おばさんに挨拶を済ませた。
『こんにちは。キタノです。お世話になります』
「はいはい、キタノさんお久しぶりね。場所は1番ホール、条件は昨年同様でいいね」
『ええ、よろしくお願いします』
 というわけで、交渉も成立し、いつものパークゴルフの一角へとマシンを移動させた。しかし、美流渡もじりじりと暑い。
 おばさんが、昨夜から1番ホールで既に幕営しているご夫婦がおり、多分、キタノさんの関係の人だろうねえと言っていた。まぁさんとクミさんだと思う。なるほど1番ホールにはテントがひと張り立っているし、ついにライダーデビューされたクミさんの愛車らしいバイクが停まっていた。すると本日は、まぁさんのマシンでタンデム行動かな?

 灼熱の酷暑の中、大汗をかきながらトレイルトリッパーを設営していると、四輪が一台、1番ホールへやってきた。そして恰幅のいい青年が現れ、
「こんにちは。キタノさんですか?”まさ”です。よろしくお願いします」
 永久ライダーの熱心な読者である札幌のまささんか。
『初めまして、キタノです。こちらこそよろしくお願いします。まずはテントを立ててから、一杯やろうね』
 キャンプ初心者という彼は、スノピのアメニティドームSという玄人好みのテントをたどたどしい手つきながらも一生懸命組み立て始めた。
「まだ、ぜんぜん慣れなくて」
『大丈夫、テントの設営は回数を重ねれば自然に身につくから。ただ、フレームは最初に接続するんだよ』
 俺はあえて手を貸さなかったが、彼は自力できちんとテントを立てた。

 炎天下、まささんとよく冷えたビールを飲んでいると、東京のまぁさん夫妻ご帰還。おふたりには福島のEOCへよく参戦いただき、お世話になっている。今回、クミさんも念願の二輪免許を取得され、初ツーリングが北海道ツーリングだそうだ。ウエアも決まってるし。

「カタチから入りました」
 彼女は謙遜していたが、すっかり板についた女性ライダーぶりだと思った。

 やがて、見たことがあるBMがやってきた。かなり以前から、うちのサイトを読んでいただき、さらに昨年、まったくの偶然ながら中頓別でお会いした、北九州の”くら”さんだ。今回のオフは常連の皆さんや福島でのEOC関連の方々の欠席が相次ぎ、開催が危ぶまれたが、くらさんの「是非、美流渡でオフをやりましょう」の鶴の一声で決行となった経緯もある。というわけで、よろしくお願いします。

 名古屋のバハさん到着。昨年、美深キャンプ場で声をかけていただき痛飲した。その後、うちのサイトをよく読んでいただいているライダーさんだ。去年は、盛り上がり過ぎて、おじいちゃんライダーから注意されたが、ここなら大丈夫です。じっくり飲みましょう。

 神奈川のイトウさん着。和琴で偶然再会し、その後、多和平でも一緒にキャンプした福島でのEOCの常連さんだ。この旅二度目の邂逅というわけなんだが、二度あることは三度あることになるとは、この時は知るよしもない。寡黙ながら、男気溢れる好青年だ。奥様思いだし。

 さらに千葉の”ロスト”さんも昨年に引き続き登場。最年長ながら、キャンプツーリングに関しては、この方の右に出る人など存在しないと思われる。神出鬼没。疲れという文字などあり得ないぐらい行動範囲は広い。その飄々とした人柄はEOCの誰からも一目置かれる存在だ。

 ついにミヤタさんがやってきた。混浴ライダー@大阪で勇名を馳せる高名な人物だ。本人からは、そのことに触れてくれるなと何年も苦情を言われ続けていたりする。なにせ、永久ライダーとのつき合いも実に長い刎頚の友だ。もう7年も前に和琴キャンプ場で偶然出会った男である。一応、混浴の件はたまたまというか、本人の遮蔽物がない露天風呂のロケーションが好みという嗜好があるらしい。

 今宵は俺もピラミッドグリルをだそう。イトウさんも投入。さらにまぁさんも購入されたそうで、ロゴスピラミッドグリルM3機揃い踏みだ。そこへまささんのスノピの焚き火台も加わり、炭の煙と皆さんが持ち寄った肉や魚介類の芳醇な香が周囲へ立ち込める。

 おお、山賊集団、”EOC”の真の光景だ!

 なんだか想定していた人数を遥かに上まわり、大いに活況を呈してきた頃・・・ 
 札幌のMSRさん登場。なんと彼は苫小牧港で素潜りをして、天然の帆立貝を捕らえてきたそうだ。港の中なら、漁業権の問題もないらしい。

 しかし、オフ会の差し入れに自ら捕獲した帆立貝を持参するなど、なんて素敵な男気溢れた手土産なんだろう。

 やはり北の大地の人物のすることは、本州の人間のスケールを遥かに凌駕していた。
 その帆立をあっという間に刺身に調理してしまう”くら”さんの包丁捌きの腕前も素晴らしい。流石、九州男児。今宵、北海道と九州という北と南の絶妙なコラボレーションを拝見してしまった。

 まさに全国規模。損得抜きの心のこもった逸品、技を結集させる会。今回、あえてEOCの名を削ったが、中身はEOCそのままだ。
 こういう交流こそ、主宰者の最も意図するところである。

 焚き火台がガンガン燃えあがる。肉や帆立が炭の上でどんどん焼きあがる頃、小樽のyasupaさんがオオトリということで参上!

 昨年、ダッチオーブンの宿で知遇を得て以来、彼は実に熱心な永久ライダー読者となる。人物温厚にして義に厚い男。今夜も仕事を終えてから、かなり無理をして駆けつけてくれた。

 これで、美流渡オフの参戦者は全部で11名となった。プチオフじゃなく、誰もが旅先の中、あるいは忙しい日程の中、結集した堂々たる北のオフ・ミーティングとなる。 

画像提供:まさ氏

画像提供:まさ氏
 とにかくベロンベロンに酔い始めた。さて、どんな会話をしていたのだろうか?憶えているのは、初対面の皆さんが多かったので、丁寧に一人ひとり自己紹介をしたことかな。

 誰もが好人物ばかりだ。そして、本当に心地よく酩酊してしまった。そんな中、MSRさんが明日、仕事のため帰還(もちろん酒は飲んでない)されるとのこと。彼は”バイクの旅で焚き火台が、なぜ、こんなにあるんだ”と驚いていた。また利尻島出身で、島についても熱く語っておられた。俺は昨年、利尻山踏破という積年の目標を達成してしまったので、向後はなかなか上陸する機会も少なくなりそうだ。

 けど沓形港近くのご実家(食堂をされている)にいつの日かお邪魔しましょう。今宵は、自ら捕らえた帆立、ご馳走さまでした。とても美味しく頂戴しました。

 ただ、yasupaさんと、最後に手を繋いだ画像が、印象に残った(謎)

 MSRさん、本当にありがとうございました。次回は浴びるほど一緒に酒を飲みましょう。再会できる日を心より楽しみにしております。

 炭奉行に任命したイトウさんが、絶対に余りそうな膨大なお肉を丁寧に炭火で煽ってくれている。それがまた旨いし。

 上半身ハダカのまぁさんもご自分のことを赤裸々に語っていた。個人情報をネットで語るわけにはいかんので詳細は自粛するが、本当に苦労人である。

 くらさんは、どうやら俺と同業者のようだ。釣りをこよなく愛する真面目な人柄で周囲に実によく気を配っている様子が随所に窺える温厚な紳士だ。懐かしのBGMは、ナイスでした。

 バハさんは、EOCの真実を知り、やや驚いている様子かな。でも誰もが気さくな好人物ばかりなので、どうかお気遣いなく。

 まささんも、明日は仕事なのだが、よくつき合ってくれている。キャンプ経験が少ないのに、いきなりEOCでは面食らうかな。でも、皆さんと打ち解けながら会を楽しんでいる様子。

 混浴ライダーにいたっては、混浴の真相について必死に弁明していたが、話せば話すほどど壷にはまっていくような気がしないでもない。でも彼も実に愉快そうな表情だった。

 尽きることなく話は続いていくのだが、ここで、

 雨・・・

「大丈夫、すぐに止むから」
 俺はなんの根拠もなく言ったのだが、本当に止んでしまった。

「キタノさんは凄い。神通力で本当に雨を止ますのだから。流石は北のサムライよ。まさに旅人の権化よ」
 一部で賞賛と賛美の声もあがっていた。

 とういうわけで宴が再開。

 しかしまた・・・

 雨・・・

 今度こそは本格的に降りだした。

 これはいけないということで、皆さん、それぞれのテントに撤収。宴会が強制終了となってしまう。雨さえ降らなければ朝まで延々と宴が続いたことだろう。

 そして翌日、俺は重大な失敗に気づく。根室で5千円も投資して新調したばかりのラジオを外に放置。雨に晒されたラジオは、この夜をもって短い生涯を閉じた(TT)
 早朝に起きだすと天気は曇天。どうやら下り坂のようだ。テントの入口には、まささんから”仕事のため早出します。お世話になりました”という旨のメモが置かれていた。お仕事のところを無理に参戦いただき、こちらこそありがとうございました。

 俺は焚き火台に燃やせるものは、どんどんぶち込み、トーチの強力な火力で処理していった。ビールを飲みながら(おい!)、ということは連泊決定だな。

 この頃になると皆さん、次々にテントから出てきて、それぞれ朝食を作ったりゴミの処分をしていただいたりと活況を呈し始める。

画像:yasupaさん提供

画像:yasupaさん提供
「キタノさんは連泊ですね」
 まぁさんが笑いながらビールの空き缶へ目をやっていた。
『どうせ天気もよくないようなんで、美流渡温泉に浸かりながら、そうするつもりです』
 ロストさんから、頂戴したサンドイッチを頬張っていると、
「どうもお世話になりました」
 皆さん、次々と出発されていく。

 ゆっくりと腰かけて会話を楽しんでいたバハさんとくらさんも昼近くにはパッキングを終え、旅立っていった。

 yasupaさんと俺のふたりになる。
 小樽在住のyasupaさんは、転職されたそうで現在の仕事がとても気に入っているとのこと。なによりです。

 旅のこと、北の大地のこと、その他諸々の話題を熱く語り合った。孤独で寂しい時間となるところを長時間おつき合いいだき本当に助かりました。

 最後に美流渡温泉にじっくりと浸かりお開きとなった。

 さて、ついに俺は美流渡の山中で、たったひとりきりになっちまったぜ。頼みのラジオも壊れてしまったし。もの凄い静寂だ。時折、パラパラとテントにあたる雨音が響いてくる。シチュエーション的にかなり怖いんですけど。

 本を読みながらグランブルーをぐいぐいと飲む。早く酔って寝ちまおう。すると怪しい動物の声が近くで聞こえ、逆に目が冴えてしまったり。ひとりのキャンプでラジオなしって、やっぱりシンドイ。

 でも、いつの間にかシュラフにくるまって爆睡していた。

 翌日・・・

 雨、しかもかなり激しいし。前室で梅粥を温めて食べる。そして昼近くまでテントで停滞する。雨があがったのを見計らい急いでテント撤収を済ませた。濡れたテントのまま袋に詰めるのって、本当に気が進まなかったが。

「キタノさん、夜中の3時ぐらいにもの凄い土砂降りになったろう。大丈夫だったかい」
 おばさんに挨拶にいくと、とても心配そうな顔をしていた。
『ぐっすり寝てたんで、まったく気づきませんでした』
 おばさんは吹き出してしまった。

 お世話になった礼を言い、スロットルをあげ美流渡の地を去る。

 さて、今日はどこへ行こう。なにも決めてない。

 なんとなく札幌方面には雨雲がかかってないようにも見えた。

 南下するか?

 ゼファーは疾風の如くR12を駆け抜けていく。 




美流渡温泉錦苑前にて



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